【映画感想】「マンチェスター・バイ・ザ・シー」 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 

 

 

 

マンチェスター・バイ・ザ・シー

 

人間、乗り越えられないものもあるよ

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監督: ケネス・ロナーガン

脚本: ケネス・ロナーガン

出演: ケイシー・アフレックさん、ミシェル・ウィリアムズさん、ルーカス・ヘッジズさん、他

原題: Manchester by the sea

上映時間: 137分

お話: 過去に何かを抱えた男が甥っ子を引き取ります

好き度: ★★★★☆ 4.0/5.0点

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ネタバレあります。


上半期に見逃した「マンチェスター・バイ・ザ・シー」をやっとこさDVDで観ました。ズシンときました(;ω;)


マンションの便利屋として生計を立てるリーが主人公でなんだかとっても鬱々としてて孤独。なんだか人間関係を完全に拒否してるような雰囲気の男。そんなリーですが、兄ジョーの訃報を受けて故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ることに。遺言でジョーの16歳の息子パトリックの後見人を任されたリーだったが、故郷の町に留まることはリーにとって忘れられない過去の悲劇と向き合うことでもあったのです。さて過去になにがあったんだろうか…時折挟み込まれる過去と思われる楽しげなシーンの数々の真相やいかに…というお話。


 

 

ここでネタバレすると、なんと自分の火の不始末という不注意で家が全焼→3人の自分の子供が死亡、というハードすぎる過去を持っていた男がリーだったのでした。家が全焼する回想シーンのハードさは凄まじいものがあり、さらに警察で「ただの不注意だからあなたは無罪です。帰っていいよ」と言われさらにやりきれなさがアップ。隣の警官の銃をとって自殺しようとするシーンなんかもうツラくて…


元奥さんのミシェル・ウィリアムズとの再会シーンもすごく良かった。やっぱりミシェル・ウィリアムズはすごい。出演時間はわずかなもんですが、「この2人、事件の後いろいろあったんだろうなぁ」と思わせる余白のある演技で、引き込まれました。


 

 

ものすごく辛い経験をしたとき、それを乗り越えるとか、なにかわかりやすい救いがあるとか、そんなのは綺麗事というか絵空事で、実際にこんな経験したら、そりゃあ乗り越えられないよ。


主人公が最後に言う「ツライんだ…乗り越えられないんだ…」っていうセリフがあるんだけど、これをクライマックスに持ってくる作り手側の優しさをとても感じました。みんながみんな辛い経験を乗り越えられるわけじゃない。でもまた明日は来るし、リーにも明日が来るという、乗り越えられない人間側にそっと寄り添う映画で、思い出すたびにしみじみといい映画だったなぁと思います。


この映画でなんどもなんども主人公に救いの手をさりげなく差し伸べる人々がくるんだけど、それを全部拒否し続けるんですよねリーは。でも最後に甥っ子に「乗り越えられないんだ」と伝えられた。一見悲しいマイナスな発言かもしれないけど、ここではじめて自分の気持ちをちゃんと伝えたという意味でも、彼にとってはここから、ゆっくりかもしれないけど、また新しい人生がはじまっていくのかもな、と、過去とやっと向き合った、いいクライマックスだったと思います。いい映画でした。