【映画感想】「彼女がその名を知らない鳥たち」 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 
 
 
彼女がその名を知らない鳥たち
 
君の子供に生まれたい
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監督: 白石和彌さん
脚本: 浅野妙子さん
出演: 蒼井優さん、阿部サダヲさん、松坂桃李さん、竹野内豊さん
上映時間: 123分
お話: 小汚い阿部サダヲとぐーたら蒼井優が一緒に暮らします
好き度: ★★★☆☆ 3.5/5.0点
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「凶悪」の白石監督の新作観てきました。あまり事前情報入れず予告も観てなかったので、そんな話なんだ!と驚きました。おもしろかったです。
 
映画.comからあらすじを引用すると、、下品で貧相、金も地位もない15歳上の男・陣治と暮らす十和子は、8年前に別れた黒崎のことを忘れられずにいた。陣治に激しい嫌悪の念を抱きながらも、陣治の稼ぎのみで働きもせずに毎日を送っていた十和子は、黒崎に似た面影を持つ妻子ある水島と関係を持つ。ある日、十和子は家に訪ねてきた刑事から、黒崎が行方不明であることを告げられる。「十和子が幸せならそれでいい」と、日に何度も十和子に電話をかけ、さらには彼女を尾行するなど、異様なまでの執着を見せる陣治。黒崎の失踪に陣治が関係しているのではないかとの疑いを持った十和子は、その危険が水島にまでおよぶのではとないかと戦慄する。―――という感じ。
 
 
日常描写がとても良かったですね。なんともグータラで嫌な女という素晴らしい演技をした蒼井優と阿部サダヲの小汚いおっさんの日常、とても良かったです。フード描写もいろいろ良かったんだけど、2人のセックスシーンがなにより印象深い。いつも蒼井優は阿部サダヲを性的に拒絶してるんだけど、松坂桃李に発情した蒼井優が急にかまってモードに突入して、おそらく頭の中では松坂桃李を思い浮かべながら阿部サダヲの指でイクというシーン。阿部サダヲが性的に不全という設定があるにはあるんだけど、全国の男たちよ彼女がセックスを誘ってきたとき、それは頭の中では違う男を思い浮かべてるかもよ!というある意味での恐怖描写。最高でした。
 
 
終盤のどんでん返しも細かいこれまでの描写の積み重ねが効いてて嫌いじゃないタイプのどんでん返しでした。
ただ、クライマックス手前、丘の上での会話シーンがまぁしょうがないにしてもちょっとウェットすぎ&説明台詞の応酬でちょっとここがだるく感じたというか長いな!と思ってしまいました。
 
でもクライマックス後半、セリフではなく映像で「いかにしてこの2人が出会い、今に至るのか」という日常シーンの羅列、映画前半の反復がとっても効いてて、個人的に前半の日常描写の反復で感動させる映画に弱いということもあるのか、かなり涙腺にくるクライマックスでした。
 
最終的に鳥になる阿部サダヲですが、「お前の子供に生まれるから」と言って鳥になるんですよね。あなたの子供に生まれたいと言っちゃう気持ち悪いほど強い愛になんだか説得力のあるすがすがしいほどの最後の彼の顔に最近の阿部サダヲの中ではベストアクトの映画だったなぁと思いました。人を愛するって突き詰めてさらに振り切れると、こういうことなのかな。私も誰かのために鳥になれるほど人を愛する時が来るのかしら。