ベイビー・ドライバー
俺たちに明日はある!
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監督: エドガー・ライトさん
脚本: エドガー・ライトさん
出演: アンセル・エルゴートさん、リリー・ジェームズさん、ケビン・スペイシーさん、ジェイミー・フォックスさん、他
原題: Baby Driver
上映時間: 113分
お話: ベイビーがガールフレンドと逃避行をはかります
好き度: ★★★★★ 5.0/5.0点
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エドガー・ライトの新作「ベイビー・ドライバー」を観てきました。
もうすべてでした。すべてがありました。ちょっと想像以上にグッときたというか、自分でもびっくりするくらいこの映画が大好きになってしまったのです。好き度は文句なしの今年初★5つ。今年ベスト!ほんとに愛おしい、大好きな、そして大切な映画になりました(´;ω;`)
主人公はベイビー。演じるのはきっと星のせいじゃないのイケメン、アンセル・エルゴートくんです。このイケメンがなんとどんな犯罪現場からも華麗に逃げ切る凄腕ドライバー。裏社会のボスであるケヴィン・スペイシーのお抱えドライバー。昔の交通事故が原因で耳鳴りがやまず、それをかき消すためにいつも(運転中も)iPodで音楽を聴いてるという設定。iPodから流れる音楽をBGMにさっそうと犯罪現場から逃げ切って見せるでした。どうやら子供のときに盗んだ車で走り出した結果、それがケヴィン・スペイシーの組織の車でヤクが積んであったみたいで、、そのツケを払うためにケヴィン・スペイシーのもとで働いてたみたいで。まぁなんだかんだで最後のヤマを終えたベイビーは足を洗ってダイナーで働くガールフレンド(実写シンデレラのリリー・ジェームズ 超絶カワイイ!!)と大好きな音楽と新しい仕事(ピザの配達)で新しい生活をはじめてたのですが…ケヴィン・スペイシーから復帰のオファー!!a.k.a.恐喝により渋々裏社会の仕事をもう一度始めることに…。次なるヤマは郵便局襲撃!のはずがあれやこれやのトラブル多発!足を洗いたいベイビーは彼女と逃避行を同時に計画!さて、郵便局襲撃はどうなる?ベイビーと彼女の逃避行は無事に成功するのか…!!というお話。
まずこの主人公が相当魅力的ですよね。iPodを聴きながら超絶テクでドライブというカッコ良すぎる設定に加えて、耳の聞こえない里親を思う優しさもあり、ガールフレンドを思う男らしさもあり、そして事故でなくなった親、特に母親への思いですよね。ときどきのぞかせる子供っぽさ。などなど。とにかく、まぁこの主人公に限らないんですけど、もうみんな生きてますよね。これでもかと生きたキャラクターになってる。だからこそとてつもなく感情移入するし、感動するし。エドガー・ライトの映画史上でもここまでキャラクターがしっかり描けて物語がしっかり描けてる映画という意味では今回は明らかにネクストレベル。最高傑作だと思います。
編集の気持ちよさ、テンポの良さで持っていく手腕はもはやお手の物。さすがでしたね。そして今回はなんといっても映画全体が主人公が聴いてるiPodの音楽に合わせてミュージカルのように振り付けされたアクションですね。これはほんと新鮮でした。アクションだけじゃなく、すべてのシーンが音楽に合わせて演出・編集されてるというほんとにどれほど計算されつくされた映画なんだ…!!
この映画が良いのは、この主人公両親を失って組織に利用されてとてつもなくツラい状況なんだと思うんだけど、だからこそツラい現実と戦う武器としての音楽という側面が際立ってるのもとても良かったです。これは現実と戦う武器であると同時に現実からの逃避ともとれるんだけど。この映画における音楽というものがどう変化していくかというのを追っていくとまたおもしろさが増していきました。そもそもこの主人公のすべての始まりである両親の死亡事故の場面でも両親のケンカからの逃避として音楽をイヤホンで聴いていましたよね。つまりこれ「心霊映画」でもあると思うんですよ。あの事故の瞬間でこの主人公は時間が止まっちゃってるというか。だからほんとに愉快な音楽を聴いてる描写もどこか切なさがありますよね。彼は今までこの音楽たちにどれだけ救われてきたんだろうとかさ、どれほど孤独な気持ちだっただろうとか…いろいろ考えだすとウルウル来ます…。彼女も若いころの母親を思わせるようなかんじでね。しかもそのリリー・ジェームズがまたかわいいんだ。そんな過去のトラウマを乗り越え、彼がどう成長していくかという彼の成長物語を、誰かを守りたいという切実な恋愛映画を軸にビシッと描き切った物語にほんと感動しました。
この映画の良かったところは、本気で人生捨てたもんじゃないと思えたんですよね。人生横道にそれることなんていっぱいあるし、失敗したなとか、挫折とかさ、ツラいことだらけじゃないですか。人として大切なものをちゃんと持ちつづけてれば、何度でもまた立ち上がれるんだというかさ。そういう、この映画にぶっとく流れる「優しさ」に物凄く感動しました。とにかくこれでもかと優しいんですよ。彼の優しさが物語を動かす後半はほんと感動しましたね。気持ちのいいほど人間の善の部分を信じてる!というエドガー・ライトの人のよさが垣間見れるようでした。
物語後半に「ボニー&クライドかよ!」みたいなセリフが出てくるように、この映画の最後の方は「俺たちに明日はない!」のオマージュがあるんですが、この現代のボニー&クライドならぬ、ベイビー&デボラは最後あそこで警察に突っ込んでハチの巣になったりしません。ニューシネマのひっくり返しのようにも見えましたが。ちゃんと反省して、ツケを払う。そして彼と彼女の人生はまた始まっていきます。モノクロからカラーになるあの演出がほんとに泣かせるんだけど。まだまだ、彼らの生活はこれからどんどん色づいていくことでしょう!俺たちに明日はある!そんな希望と優しさに満ちたこの映画、嫌いになれるわけがないでしょう。今後何度でも観なおすであろうホントに大切な1本になりました。