海よりもまだ深く
鑑賞日: 2016年5月21日
映画館: T・ジョイ出雲
好き度: ★★★★★ 5.0/5.0点
「こんなはずじゃなかった。」
個人的なお話ですが、久々に愛聴しているラジオ番組「タマフル」で映画批評コーナー「ムービーウォッチメン」のリスナー枠メールでメールが読まれました(^^)その時のメールがこちら。
ラジオネーム :そーす太郎
宇多丸師匠こんばんは。来週師匠にウォッチしてほしいのは、是枝監督の「海よりもまだ深く」です。「歩いても歩いても」が是枝作品では1番好きなのですが、それに並ぶくらいの傑作でした。そしてなにより、タマフル的には「ババア、ノックしろよ」要素、そしてなにより「電動ハンディマッサージャー」通称「電マ」要素が入っていてビックリ!是枝さんは以前ツイッターで宇多丸師匠の「海街diary」評をほめてらっしゃいましたし、間違いなくタマフルリスナーなのでは?と思わざるをえないという意味でもオススメです!!
というわけで、「海よりもまだ深く」僕は超大好き映画になりました。今年初めての五つ星をつけたほど、今年1位候補の素晴らしい映画でした。
個人的に是枝ベストは「歩いても歩いても」だったが、堂々と「歩いても歩いても」に並んだ感があります。「こんなはずじゃなかった」日常、でもこの日常を送るしかない現状にグッときまくり。思えば是枝作品は「こんなはずじゃなかった日常」を描き続けてるなぁと振り返って思うんですよね。「歩いても 歩いても」「奇跡」「そして父になる」「海街diary」、みんな登場人物は「こんなはずじゃなかった」、と思ってるんですよね。でも結局どの作品の人物もその日常を歩かざるを得ない。それって俺ら自身だし、そんな日常を卑近に描きつつも遠回しにかもしれないけどやわらかく肯定してくれるから是枝作品が好きなのかもなぁと振り返って思ったりもしました。
日常描写はさすがなものばかり。料理の描写、会話、監督特有の死生観みたいなものも過去作と共通していましたね。蝶々の話は「歩いても歩いても」を思わせるし、卑近に見えるところも特有のユーモアでクスッとくるようになっているバランス感覚もさすがのもの。是枝作品ベストタイ作品であり、もちろん本年度ベスト候補の一本になってしまったなぁという感じです(^_-)
あと書いておきたいのは、樹木希林の凄みについて。もうこの映画の樹木希林はみなさんが言われてるようにすごいものがあります。夫にロックスターを持つ大女優には見えない、そこにいるのは一人暮らしが寂しいなぁと思ってるおばあちゃんなんですよ(笑)
実在感、生活感、ズルさ、優しさ、寂しさ、これらを完璧に演じきってるんですよね。これってすごくね?と改めて横綱相撲を見せられたような気がします。僕の大好きなラジオ番組、「タマフル」の人気コーナーに「ババア、ノックしろよ!」というコーナーがありますが、あのコーナーを思い出すんですよね。母親というものの偉大さと無神経さとズルさとそして優しさ。誰もがたまには実家に帰らなきゃなぁと思いつつ、心配させらんないなぁとため息をつきつつ、また戦わなきゃな現実と…と優しく背中を押される、そんな映画でした。
とつぜん放り込まれる電マは確信犯ですね。是枝さん、意地悪だなぁ(笑)
おわり