キャロル
鑑賞日:2016年2月23日
映画館:TOHOシネマズ新宿
好き度: ★★★★☆ 4.5./5.0点
なんで人って、すれちがっちゃうんだろうね…。
「キャロル」には喰らったという感想がまず出てくるくらい、素晴らしかったです。女同士の恋愛映画だけど、恋愛映画というよりは、人と人とがどう思いやるか、わかりあうか、についての映画でものすごく普遍的な映画だと思いました。
出会いのシーン。そりゃほっとかないわ…ってくらいルーニー・マーラが可愛いのです…
あらすじをざざっと書くと、、舞台は52年、冬。ジャーナリストを夢見てマンハッタンにやって来たテレーズは、クリスマスシーズンのデパートで玩具販売員のアルバイトをしているのです。彼女にはリチャードという恋人がいるんですけど、なんだかうまくなっていないご様子…。ある日テレーズは、デパートに娘へのプレゼントを探しに来たエレガントでミステリアスな女性キャロルにひと目で心を奪われてしまう。そしてキャロルのほうもイケイケでナンパ。それ以来、2人は会うようになり、テレーズはキャロルが夫と離婚訴訟中で、家庭はほぼ崩壊状態。そんな中、テレーズはキャロルから車での小旅行に誘われ、ともに旅立つが……。という感じですね。
中盤からロードムービーへと変わっていきます。
画面の構図、小道具の使い方などが、その時の心情を見事に表現してるし、逆説的なセリフが多いので、この時この人は本当はなにを思ってるんだろう…と思考が止まないタイプの映画でした。ありふれたお話だけど、心の移り変わりを見ているとものすごくサスペンスフルで、ある種サスペンスとしてこの映画を観てました。
撮影の構図も良かったなぁ~。
ロマンティックすぎるくらいロマンティックだったロードムービー的中盤の展開から、セックスシーン、事件が起きて、訣別、からの再開と二人のパワーバランスがころころ変わっていくんですが、それが一気に押し寄せるのが終盤で、再会シーンはほんと名場面だと思います。いっちばんはじめのシーンを視点を変えてもう一度繰り返すんですよね。そのあと、車の中からの視点の反転。そしてパワーバランスの反転というかマウンティングの反転っていうんですかね。いつも上から常にマウントとってたキャロル、最後はテレーズが完全にマウントをとってるんですよね。あの再会時のテレーズ、「もう無理ですから!遅いですから!」みたいなあの顔!!!!個人的にも非常に見覚えのあるあの怖い顔。ほんと怖かったなぁ。なんて思ってたら、やっぱりもう一度思い直したテレーズがキャロルのもとに戻ると、「ほーらキタキタ。」っていうあのキャロルの顔ですよね~。これをどうとるかですが、やっぱり僕はキャロルのほうがバッドなエンドだったと思うんですよね。テレーズはこの旅を通して、最高の写真を撮ることができて、仕事も決まって、テレーズにとってはこの旅はイニシエーションだったんじゃないかなぁと思うんですけど、キャロルはいろいろなものを失った旅だったなぁと。だから最後のドヤ顔もどこかものすごく哀しいドヤ顔に見えたんですよね~。
アビー問題
あとこの映画で印象的だったのは、キャロルの元カノ(?)なアビーという女性でした。結局、キャロルにとってテレーズはアビーを越えることは無かったんですよね。キャロルも超ピンチのときはテレーズを頼っちゃう。テレーズにとっては超屈辱的で虚しさ満点のキャロル退場&アビー合流シーンはほんとツラかった。このアビーとキャロルの関係性もいろいろすごいなぁというか、好きとか嫌いとかを越えたところにある関係性だなぁという感じがして。これ女だからあれですが、ノーマルな男と女にしたら、もっと理解不能な関係性だなぁと…。ともかく、ここでアビーをキャロルが呼び寄せた時点で、このテレーズとの恋は終わった、決定的なシーンでしたね。
てなわけで、「キャロル」。僕は本当に好きな作品になりました。他人を理解する、分かりあうってほんと難しいよなぁと。難しいからこそ、ちょっとわかったり、理解できたり、その瞬間をちょっとでも感じられることが恋愛ってやつなのかなぁ~なんて思ったりね。生意気に恋愛を語ったところでおーわり。とってもいい映画でした!!