【映画】「サウルの息子」を観た。 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 


サウルの息子
鑑賞日: 2016年2月1日
映画館: ヒューマントラストシネマ有楽町

 

 




好き度: ★★★★☆ 4.0/5.0点



絶望的な世界に対する、せめてもの抵抗



アウシュビッツもので、ここまでガッツリと「自分がアウシュビッツにいる感じ」を感じたのは初めてくらいで、衝撃的な光景の数々でした。虐殺工場としてのアウシュビッツの描きこみはすごいものがありましたね。「ガス室」はもちろんですが「穴」の描写は凄まじいものがありました。

劇中、ずっとサウルを画面の中心に置き、手持ちカメラでサウルにのみピントを合わせてるため、周りの映像はピントが合っておらずぼやけてる。スクリーンはほぼ1:1。この手法とアウシュビッツという題材の組み合わせがとても新鮮でビックリしましたし、この手法ならではの怖さがとてもありました。どこにピントが合うのか、どこにピントが合ってないのか、というカメラが映す情報自体がサウルの心情とリンクしている感じもおもしろかったです。言い換えれば、なにを見たくなくて、なにを見たいのか、、ということかな。

 

 

 



主人公のゾンダーコマンドのサウルが「自分の息子だ」と言って疑わない少年の遺体をユダヤ式の埋葬をするために動き回るという本作だけど、ポイントはその少年の遺体はほんとにサウルの息子なのかはわからないというところだと思う。自分の息子だと信じたい!信じなきゃやってられない!という感じがとてつもなく切なかったです。

 

 



この子を埋葬しなければならないというサウルの取り憑かれたような思いは、救いようのない絶望の中で唯一現れた、信じたい、信じなきゃならない「正しいこと」だったんだと思う。非人間的なことをやらされるゾンダーコマンドのサウルにとってそこを信じること、やり遂げることが彼にとって唯一の「正しい使命」であり救いだったんじゃないかなぁ。あまりに一直線なのでちょっとイライラするところも最初はあるけど、最後の方はあまりに強すぎる彼の思いにグッこざるを得ない感じに。少年を埋めるというミッションは彼にとって絶望的な世界に対するせめてもの抵抗だったんじゃないでしょうか。

 

 



「炎628」級!みたいな評をよく読むけど、それは言い過ぎかなぁ……と思いつつも、必見の傑作だったと思う!町山さんの解説(http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20160126)も必読!いや~すごかったですね…。