劇場版 501
鑑賞日: 2016年1月2日
映画館: 渋谷ユーロスペース
好き度: ★★★★☆ 4.0/5.0点
「負けてもいいのよ。ただ、負け方って大事じゃない?」
大傑作「劇場版 テレクラキャノンボール2013」でもお馴染みAV監督のビーバップみのる監督作。テレキャノ以降、みのるさんのtwitterでアップされ続けてきた制作過程がめちゃくちゃおもしろかったのでこれは観に行かなければならない!ということで初日に行ってきた。満席で立ち見も出ておりました。
ともかく、まずはこの動画を観てほしい。
くれぐれもだけど、テレクラキャノンボール同様一応AVなので万人にはオススメできないけど、まぁグッとくる場面がとても多い映画でした。気持ちがいいほど混沌とした映画で、ビーバップみのるの脳内をそのまま覗いたような映画でとてもおもしろかったのです。
語り白があまりにも多いので難しいんだけど(人の脳内を見てるから当然だが)、僕はエヴァのアニメ版の後半とかが1番近いんじゃないかと思うくらい。作り手が何を作りたいのかわかんなくなっちゃってる様子をそのまま、ありのままを映像化した結果、形容しがたい『何か』が写っちゃったような映画。な、気がした。大げさだけどやってることはフェリーニの「8 1/2」とかにも通じる何かだと思うんです。という、気がした。
みのるさんいわくこういう映画だそう。ほんとにこういう映画でした。
「有名になりたい」というあるAV女優さんをみのるさんが撮影期間の3日間で伝説に残るAVを取るべく奔走するんですけど、女優と監督の熱量が違いすぎ2日目で女優が出演辞退。そこからこの作品をどう完成させるか、そもそも作品にするか、ひたすらビーバップみのる監督が悩み、その悩みをそのまま映像化し、企画は様々な方向に枝分かれしていき事態は混沌と化していく、その様子を観客は見守る、という作品。
明らかに破綻してる映画ではあるんだけど、でも魅力的に映るのはなによりもビーバップみのるという人物の圧倒的な魅力だと思う。とにかくこれは見届けなければならない!というある種のアイドル性があってとてつもない求心力がある人物ですな。
前半に描かれるあるAV女優さんとみのるさんのグイグイすれちがっていく様子はとてつもないおもしろさと緊張感で最高。去年見た「私たちのハァハァ」である女の子がブチ切れるシーンのあの熱量の違いによるすれ違い感を思い出しました。ロッキーを見せて説得するけど、まったく響かず。企画が破綻し東京に戻りみのるさんがロッキーの話をしながら号泣するシーンは大爆笑しながらも切実に泣けるというミラクルなシーンだと思います。ロッキーファンとしてもグッときたところ(笑)
ちなみに、その女優さんがこんなツイートをしてまして…。観た後だといろいろ感慨深いものがあります。。
そのあと様々な展開がグイグイと押し寄せてきて、作品はまさにカオス化していくんだけど、要所要所に挟まれるAV女優さんたちやAV面接にくる女性たちの口から、なにか確信めいた名セリフが出てきて、その言葉たちによりカオスのなかからなにかを掴みかけるみのるさんという図になんか感動しちゃうところもありました。その言葉を咀嚼しかけながらとりあえずセックスしてなにか結論めいたものを掴もうとしてる…のか?というシーンもなんかグッときちゃったな。
そして最後のおばあちゃん。いろいろ凄いし、あのおばあちゃんが口にする人生の重みを感じざるを得ない言葉は、なんかわかんないけど「人生ってなんなんだろう?」というところまで連れて行ってくれたような気がしました。あくまで「気がした。」っていうのがこの映画にぴったりな気がする。
全てを咀嚼できた気にはまったくならないけど、希望めいたなにかを持ち帰れたような気がした。もちろん、観てよかったです。映画館で蓮実クレアさんで爆笑できるというすごい映画でもあります。。