「ニシノユキヒコの恋と冒険」を観た。 | そーす太郎の映画感想文

そーす太郎の映画感想文

しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。








この映画を前情報なしで観ようと楽しみにしてる人はあんま読まないほうがいいっす!


観ようと思ってる人は、前情報なるだけ入れないほうがおすすめです!
































ニシノユキヒコの恋と冒険
2月10日(月) 20:20~ TOHOシネマズ六本木


好き度: ★★★★☆ /5点


おしゃれな恋愛映画かと思いきや、
まさかの心霊映画であり、
超能力映画であり、
残酷で哀しい映画



ニシノユキヒコの恋と冒険、映画秘宝で田野辺さんが推していたということで行ってきました。ヤリチン竹野内豊がいろんな女を取っ替え引っ替えする様子をゆったりとしたタッチで描いているような映画なのかな~と思っていましたが、田野辺さんが秘宝で『幽霊描写に注目』と書いていたのでちょっと一体どんな映画なのかなぁと思いつつ劇場に入りましたが、観てみるとほんとうにそのとおりで、幽霊映画であり、心霊映画であり、超能力映画でした。

竹野内豊演じるニシノユキヒコは、「女の心(性欲)がわかってしまう」という超能力をもっています。女が欲しているということを無意識に察知して、そして無意識的にその欲に応えてしまう。しかもそれが竹野内豊で、女の心の隙間にスッと入るような声と絶妙な女の子に対するコミュニケーション。普通なら嫌味なキャラクターに見えなくもないですが、これが憎めないキャラクターで、男からすれば喉から手が出るほど羨ましい能力ですが、この超能力はとても哀しく、とても残酷な能力だとわかってきます。


さっき書いたようにニシノは幽霊です。映画がはじまって数分でニシノは車にひかれて死亡。幽霊となって映画冒頭に会っていた麻生久美子を探しに下界に降りてきます。ここの幽霊として出てくる瞬間の幽霊描写はものすごくうまかったですね~。すりガラスを使ったうまい演出でした。麻生久美子の娘である中村ゆかり演じるみなみに初めに出会うのですが、この映画の幽霊の設定も、自分のなりたい時期の姿で現れることができる、見える人にだけ見える、ぱっと姿を消したかと思えばまたすぐにぱっと現れたりとおもしろい。


女性の性欲を無意識に察知し無意識にそれに応えてしまうという超能力をもつニシノ、しかも顔が竹野内豊なので無茶苦茶モテる。元カノ(本田翼)や会社の上司(尾野真千子)、ついにはレズのカップルまで(成海璃子・木村文乃)までそれぞれの欲望を察知し無意識的にそれに応えていきます。完璧に自分の欲望に応えてくれるニシノは、たしかに完璧なのですが、完璧すぎるため、刺激のない存在なのです。恋からワンステップ上がって愛まで行かないのです。突き放した言い方をしちゃうと最終的には欲望を満たすだけのマシーンのようになっちゃうんですよね。ルビースパークスにもちょっと似ていて、理想を完璧に体現した存在との関係性に『成長』というものがあるのか?と最終的に女性は思ってしまい、次第にニシノから離れていきます。これは余りにも哀しい。


ニシノが自分のマンションでセックスしたあと尾野真千子に結婚を申し込む場面があってそれを軽く断られるという場面があります。そのときに言うニシノの「寂しいよ。。」という言葉がすごく重く感じるんですよね。マンションを出た尾野真千子が「ニシノ君が幸せになりますように」と呟く場面が続く。ここはほんとうに残酷で哀しい場面でした。また、はじめのシーンで「普通に結婚して子供が欲しい。女の子の。普通がいい。」とニシノがいうセリフがあってそのセリフも次第に意味が濃くなってきます。また、最後に再会する(正確には再会してないけど)麻生久美子が言うセリフで「恋と愛はちがう。ニシノくんは恋だった。」という、あやふやだけどこんな感じのニュアンスのセリフがあって、そこがまたとても残酷。超能力者ニシノユキヒコが人間になろうともがく話にも見えてきます。とても哀しい。


麻生久美子の残酷なセリフのあるラストシーンなんですが、麻生久美子の娘役である中村ゆかり演じるみなみが涙を流すシーンがあってその涙にいろんな意味が詰まっているようにも見えて少しばかりの救いがあるようにも見えます。ここの涙のシーン、ある種とてもドキュメンタリックで中村ゆかりさんとてもすばらしかったです。ここの涙にはほんといろんな意味が詰まってるよなぁ。。でもやっぱりニシノユキヒコにとってこの人生はとても残酷で哀しいものだったと思う。愛を知らないまま死んでいったんですからね。死んでからやっとみなみの涙ですこーしは救われた…のかもという、ここの涙のカタルシスはすごかったと思います。


役者陣もとてもすばらしかったです!やりとりがほんとうにめちゃくちゃ自然でこれはアドリブでいちゃいちゃしているのか?だとしたら竹野内豊やっぱすげぇな!というくらい自然ですばらしかったです。女優さんもみんな色っぽく魅力的に撮られてました。

麻生久美子の娘役みなみを演じた中村ゆかりさん、ファンになりました素晴らしかったです。とにかくラストの涙のドキュメンタリック感は中村ゆかりのアイドル映画としてとても刺激的でした。


阿川佐和子さんと竹野内豊のこの喫茶店のシーンはたぶんアドリブだよねこれ、映画「カサブランカ」の話をするシーンとかすっげぇ自然だし、かんじゃってるのも活かしにして残してるのとかがものすごくリアルで自然でした。


『セックス魔神』(劇中セリフ引用)こと本田翼、最高!今まで魅力が正直わかんなかったけど、すっげぇよかったしエロかったしナマナマしかったです。「ね~セックスしようよ~」って自然に言うとか反則だし、とにかく自然に小悪魔演技をするからたぶんこんな人なんだろうなって思っちゃうくらい(笑) 衣装の関係上、胸元がすげぇ緩くてすばらしかったです(ノ∀`)


ニシノの上司、尾野真千子もすっばらしかった。ニシノと一線を超えてからそれまでと態度が変わってすげぇ女っぽくなる感じがとてつもなくエロかったです。会社でいちゃいちゃしやがって!欲ってる演技が最高でした。

おとなりさんのレズカップルのひとり、成海璃子。本田翼の戦略的な色気とは逆で天然で自然に欲ってくる感じがすげぇよかった。「ね~一緒にお風呂入ろ~」という言葉にニシノは「お風呂は一人で入りたいから嫌だ」。よく我慢できるなお前。。

おとなりさんのレズカップルもうひとりは木村文乃。成海璃子が大好きなんだけど、ニシノのスーパーフェロモンにひかれセックスしちゃうという場面、ここのセックス飼い猫を映すことで表現するシーンがすげぇおもしろかったです。その後成海璃子と木村文乃の関係が壊れちゃって、ニシノが凹む場面も残酷でした。


とにかく、僕はこの映画かなり好きな映画です。今年観た映画で一番残酷でした!


欲を言えばもうちょいタイトにできたかなあというか、無駄な風景シーンはもうちょい落としてもよかったのでは、、なんて思いましたが、まあそれもふくめてこの映画のリズムになってる気もするし。。。


とにかく、僕はこの映画とても楽しみました。今年観た邦画ではトップレベルでよかったです。とっても緩やかだし、このテンポと、竹野内豊を受け入れられるかで賛否が確実に分かれそうですが、このバランスの映画はなかなかない唯一無二感がすごくあったので、おすすめですよ!



◆◇そーす太郎的注目ポイント◇◆


・幽霊描写
・欲っちゃってる本田翼の演技
・ラストシーン、中村ゆかりの涙



おわり


井口監督の前作。

人のセックスを笑うな [DVD]/Happinet(SB)(D)
¥4,935
Amazon.co.jp


原作は未読。読んでみようかしら。

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)/新潮社
¥515
Amazon.co.jp


ちょろっと連想したルビースパークス

ルビー・スパークス [DVD]/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
¥1,490
Amazon.co.jp





-----------------------------------------


スタッフ

監督
    井口奈己
原作
    川上弘美
脚本
    井口奈己
音楽
    ゲイリー芦屋
主題歌
    七尾旅人

キャスト

    竹野内豊 ニシノユキヒコ
    尾野真千子 マナミ
    成海璃子 昴
    木村文乃 タマ
    本田翼カ ノコ
    麻生久美子 夏美
    阿川佐和子 ササキサユリ
    中村ゆりか みなみ
    藤田陽子
    並樹史朗
    田中要次


作品データ
製作年     2014年
製作国     日本
配給     東宝映像事業部
上映時間     122分
映倫区分     G