かぐや姫の物語はモーニング娘。の『I WISH』
かぐや姫の物語、だいぶ前に観たのですが、なかなか感想を書けず。タマフルの課題映画にもなったし今更ながらメモ程度に。
かぐや姫の物語、要は竹取物語。中学の時ムリヤリ国語の時間に覚えさせられたあれですよ。「いまはむかし~たけとりのおきなというものありけり~・・・」っていうあれですよ。今でもまあまあ覚えてるということはあのときの国語の時間も無駄じゃなかったってことだな(。-∀-) それはさておき、竹取物語って神視点といいますか第三者視点で描かれているので、描かれていないかぐや姫の心情とか、原作自体にある空白の部分というか抜け落ちた部分を補完しつつ、それでもけっこう原作に忠実に映画化したのが本作。
正直、「今」、竹取物語を改めてジブリが製作するということで、どんなことになるのか。初めて予告観たときなんかは、この水彩タッチの余白の多い手書き感のすごくある独特の絵にけっこう「おおぉぉ!」となりましたし、「姫の犯した罪と罰」というフレーズもなにか意味ありげでけっこう楽しみにしておりました。
で、観たわけですが、正直、今このかぐや姫の物語を映画化するということ自体の意味というか理由がよくわかんなかったですし、いろいろと良いところや新しい解釈みたいなものを提示はしようとしてるんだろうなぁなんて思いもしてましたが、この企画自体に現代性を感じませんでした。この企画ってもうちょい前にやっとくべき企画だったんじゃないかなぁなんて思います。今やるなら竹取物語の殻をぶち破るくらいのなにか斬新なものがほしかったです。あくまで竹取物語の枠からはみ出さない作りで、忠実に映画化したいという製作の意図もわかるのですが。なにか物足りなかったです。あと、やっぱり120分強の尺は長すぎると思いました。
しかーし、良かったところや好きなところ泣いたところもたくさんあるので嫌いにはなれないのです。
まずですね、前半の田舎編が超好き!ヽ(´▽`)/
地球外生命体ことかぐや姫は初めは手のひらサイズでしたがグイグイ一気に成長!(さすが地球外生命体!) そして一般的な赤ちゃんサイズに!ミルクを飲ませなきゃいけないんだけど、ないから、物々交換で近所のお家に貰いに行こうと思ったら、不思議な力が働いておばあちゃんの体がビクンビクンしだしたかと思えば、ぽろんとおっぱいを出して授乳させるというこのシーン。「授乳」というごく一般的なことなのですが、そのふつうのことが奇跡的に描かれるとこうも感動するのかと。(ふつうに子供生まれて授乳するのも奇跡的だよね) 生命力を象徴する初めてのフード描写であり、生命力に満ちた行為なわけじゃないですか。そしてこのおじいちゃんとおばあちゃんにとってこの子は初めての子供なわけで(ここの解釈は省略しますが) 普通泣かないといころなのかな?僕ここの授乳シーンなんか泣いちゃいましたよ。
あと、あれね、かぐや姫が初めて立つところと歩くところ。ここも泣いてしまいましたよ。地井武男さんの名演だと思いますが、「ひーめ!ひーめ!ひーめ!」と絶叫する場面、あれ反則じゃね?w 泣くわそりゃ!
あと、この映像で見せられる野山、超キレイだし、空白を残している画面なのにも関わらず、空白が空白に見えなくなるんですよね。そしてそれを駆け回るかぐや姫という絵ヅラだけでとても感動的でした。(個人的に子供が元気よく野山を駆け回るシーンを見るだけで泣いちゃうという傾向はあるんですが。。)
とにかくこの前半の田舎編はとっても大好きです。画面がとてもきもちよかったです。
んで後半、宮中編。ここが正直だるく感じる部分もありました。絵に慣れてきたってのもあるのかしら。もうちょいタイトにできたのでは。
初潮がきてから物語が動き出すのですが「性」の匂いがかなり印象的に使われているなぁというのも印象的だったり、風立ちぬにもあった、夢(妄想)のシークエンスがけっこうあったのが印象的でした。
んで、いろいろすっとばして、ラストですが、月に帰りたいと願ったかぐや姫を迎えにやって来る月からの使者 a.k.a. 地球外生命体軍団のビジュアルですよね。ここ、けっこう賛否両論っぽいですが、僕はどうかしてる感じがすげぇ好きでしたね。なんじゃこりゃ感。まさに未知との遭遇ですよね。
使者「衣を被ればこの世の汚れはすべて消え去ります。」
姫 「この世は汚れてなんかいないわ。みんな彩りに満ちてる…」
というやりとりがあります。月は極楽浄土の不老不死で機械的な無機質なところ?(推測ですが)そこにちがうと気づいてしまった姫の悲劇性を描いた映画と言えるかもしれません。
まさかかぐや姫を観てこの映画を連想するとは思いませんでした。リベリオン。
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しかし、生と死、喜びと悲しみ、そんな様々な循環によって成り立っている地球の方が彩っているし、健全なのではないか。と、気づく姫。
「晴れの日があるからそのうち雨も降る~♪」だからこそ「人生って素晴らしい!」 まさに、モーニング娘。の『I WISH』!!
あと宇多丸さんのまどマギ評の言葉を少し連想しました。「神だけがいる世界ではなくて悪魔もいる世界になったことによって、世界が健全な不完全さを取り戻した」と宇多丸さんがほむらの悪魔化について言及していましたね。 神(円環の理)だけの世界がかぐや姫の物語でいう月だとするならば、悪魔もいる世界(悪魔化したほむら)が地球と言えるなぁと。つまり地球のほうが世界として健全であって、それを最後の最後で気づいたかぐや姫がものすごく切なかったです。
全ての記憶が消えたであろう姫ですが、最後に流れる「いのちの記憶」の歌詞でギリ希望を残すラストになっていましたね。この曲、反則じゃね?w 泣くわ!
というわけで、初めは微妙かな~なんて思ってましが、文章で書いていくうちに「あ、悪くなかったかも。むしろ好きなところけっこうあったなぁ」なんて思ってきたり。いろいろな解釈ができそうなので、Twitterとかレビューとかもおもしろいですね。竹取物語つくった大昔の人、こんな遥か未来で映画化されてみんなが見てるなんておもってないんだろうなぁ~(そもそも映画をしらねぇか)なんか不思議ですね。
おわり。