「悪の法則」を観た。 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。




今年ベスト級の1本!映画に求める全ての要素が入ってる


悪の法則、こんな豪華キャストで、大丈夫なのかなぁなんて思いつつも、リドリースコットだしマッカーシーだし面白いはずだ!と、買ってた前売りで観てきました。

ひとことで言うと、今年ベスト級の1本になりました!パシリムに立ち向かえるのはこの最低最悪の残酷ショーしかない!と思わせてくれるくらい、ものすごーく好きな映画です!

まずこの映画、僕もそうですが予告編を観た時点では、豪華キャストを揃えたなんかおしゃれな騙し合いくらいに思ってたんですが、この映画さすがコーマック・マッカーシーと言うべきかぜんぜんそんな甘っちょろい話じゃない!ほとんど大衆的な娯楽性はないというか、想像以上にガッツリ超えぐい話。エロ、グロ、バイオレンス、全く救いのないラスト、生き地獄感、僕にとってはこれ以上ないくらい好きな要素しかなかったのですが、やはりキャスティング目当てできたであろうお客さんは「まったくおもしろくなかった~」とか上映後聞こえてきましたのでやっぱそうなるであろうと思います。作品の8割以上は哲学的な会話劇で前半なんかは特にガッツリ会話会話なので寝ちゃってるお客さんがけっこういました。この前半の会話を楽しめるか楽しめないかでこの映画の評価がガッツリ別れるのかなぁと思います。でもこの前半のファスベンダーが悪に片足を踏み入れたてぐらいの会話が後半にいろいろとガッツリ絡んでくるので、この前半の会話こそむしろ能動的に観るくらいのほうがおもしろいと思いますよね~。でもふつうに前半の会話は楽しかったですよ。会話の端々から見え隠れする得体の知れない巨大な何かの存在やそれぞれの人物がもう一枚皮をかぶってそうなかんじの雰囲気を醸し出していたり、すげぇブラックなユーモアが効いていたり。

一歩、「そっち」に足を踏み入れるともう世界は僕たちの知ってる世界ではなく、僕らの原理とはまったく違う次元の信じがたい「悪」に満ちているのだ。という嘘のような、でも実際に存在する「事実」を叩きつけてくるのがこの映画のテーマだと思います。しかもそこに超ブラックなユーモアを加え、まったく救いのない話として描ききったことに僕はものすごい恐怖を感じたとともに、同時にものすごく好感をもちました。

今回のその巨大な「悪」、カルテルがほんとうにとんでもない悪で、そこには人の感情とかそういう甘っちょろいものはなくて、人の死というものの扱いがそもそもビジネスでしかない、というかジョークのネタにするくらい、それくらいのものでしかないのです。その身も蓋もない悪をしっかりと描きこれでもかとブラックなユーモアを入れそして突き放すというとても正しい描き方をしていると思うし、そこに「救いなんかねーんだよ!」という最低最悪なラストは映画としてものすごく正しく、ものすごくまっとうだと思います。しかもその「悪」を決してすべて見せず、本編が終わってもなお、巨大な空白として残しておくというのがやはりものすごく怖い。話の内容は全く違いますが造りは「桐島部活辞めるってよ」っぽいなぁと思ったり。

この映画説明不足すぎる、と言われていますが僕はそうは思いません。それは「悪」を巨大な得体の知れない空白と描いているからだと思います。桐島部活辞めるってよで桐島の説明がほとんどないのと同じで。後半の展開も前半のなにげない会話が説明してくれていると思いましたよ。

なぜ悪に足を踏み入れたかではなく、悪にちょっとでも足を踏み入れたらどうなるかが主題だと思うので、ファスベンダーがどうして金を必要としているかとかは別にどうでもいいことなのです。だからそこの説明がないのも僕はぜんぜんOKだと思いました。

今年、身も蓋もない悪を描いたものとして「ペーパーボーイ 真夏の引力」や「凶悪」なんかがありましたね。どちらもとても素晴らしかったですが、今回はもう一段階「悪」の次元の違いをまざまざと見せられました。今回はたぶん「悪」の世界最高峰ですよね。ファスベンダーに届くDVDの件とか、前半のセリフではブラックユーモアくらいに思ってたのに気づいたら俺が当事者になってしまってるというしかも最愛の人が。。というあのラストとかほんとに最悪でした。残念だった点は、そこで泣き叫ぶファスベンダーの後に、ペネロペが捨てられる描写はちょっと蛇足だったなぁと思いました。あのDVDと前半の会話で全部わかるし、そのあと何もない方が怖いと思う。やるならやるで、もっと最低最悪な形でやらないと。服着てる時点でダメだし、首はないくらいでも良かったんじゃないか。


キャメロン・ディアスによるカーセックス最高でした。


カーセックスの概念を根底から覆されました!なまず!
それを見るハビエル・バルデムの顔に爆笑!そのときのファスベンダーとの会話もおもしろかったし、バルデムかわいかったです。バルデム萌えです。

とにかく、きのう見たばっかりだし、シナリオ本今読んでる途中ですが、現時点ではとてもとても好きな映画です。すげぇ賛否両論ですが僕は支持します!こういう身も蓋もない悪を描くことができるのが映画だと思うので。血と暴力とエロと糞尿に満ちたこの映画、嫌いになれるわけがない!


今読んでおりますシナリオ本↓読んでからもう一回行こうと思っております。

悪の法則/早川書房
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おわり。