「夢」別名「呪い」
ばしゃ馬さんとビッグマウス、スルーのつもりでしたがタマフルで課題映画になったのでシネクイントへ行ってきました。シネクイントってなんか緊張するよね。パルコの中だし。お客さんはほとんどジャニーズファンと思われる女の子グループで肩身が狭い中観てきましたよ。
この映画予告の時点では凸凹コンビのラブコメくらいに思ってましたけど、観てみるとまったくちがって、すっげぇ痛く、苦い、ヘビーな映画でした。
ばしゃ馬さんこと麻生久美子は、10年以上脚本を書き続けているけどコンクールの1次審査にも通ったことがない30半ば。ビッグマウスこと関ジャニの安田くんは1度も脚本を書いたことがないのに、超上から目線で他人の脚本を批評する男。この2人の描き方が、とにかくすげぇ意地悪なんですよね。特に麻生久美子さんの描き方は、普通の映画なら夢を追い続けるキャラクターとしてポジティブに描きそうなところをこの映画では言っちゃえば愚かに描くんですよね。はっきり言ってくっそめんどくさい女なんですよ。
そんな2人のやりとりとか、とにかくすげぇイライラするんですよね。前半は。でも話が進むにつれだんだん気づいてくるんですよね「これ他人事じゃねぇな」と。 はじめは2人のやりとりも「うわぁ~イタイわ~」とか「ばっかじゃね~の」とか「こういうやついるわ~」とかおもって笑いながらイライラしながら観てたのですが、だんだん笑えなくなり、しまいにはものすごく胸が苦しくなっていくのです(´<_` )モウヤメテアゲテ~
「抱いた夢って、どうやって終わりにしていいのかわかんない。」と麻生久美子が泣きながら言うセリフがあります。とっても不器用だけど、それでも10年努力をして抱き続けた夢をとうとう「自分には才能がない」ということに気づき、自分を責める麻生久美子。もう、ほんとに見てられない。夢ってほんと残酷だよなぁと。この映画の麻生久美子を冷たく突き放すことだっていくらでもできると思います。努力の方向おかしいだろとか、いろいろ言えると思いますよ。でも僕は、どうしてもこのキャラクターを突き放せません。人ごとじゃないよ!笑ってる場合じゃねえよ!最後の方はお前らこれ笑ってられんのかよと監督から言われているみたいな気持ちになりました。これを最後にすると決めたその最後のチャンスにおいても、最後の最後まで主人公に一切の甘えを許さない。ものすごく残酷でヘビーな、でもけっっっして人ごととはとてもじゃないけど言えないから、だからこそすごく苦しいのです。。
ライムスターのONCE AGAINの最初の宇多さんのリリックがずーっと頭の中に流れてました。
誰のせいにも出来ねぇし、したくねぇ 「夢」別名「呪い」で胸が痛くて
目ぇ覚ませって正論 耳が痛くて いい歳こいて先行きは未確定
これからONCE AGAINするのか、諦めて新たな人生を進めるのか。桐島風に言うなら、ドラフトを待ち続けるのか。俺、このあとどうなるんだろう。とすげぇ自分の今後のことを考えちゃいました。夢と折り合いをつけることってすごい残酷ですよね。
でもその事実をヒロイックに扱わず、すごくドライに突き放し滑稽に描く。だからこそ共感出来るんだと思います。
介護施設でのボランティアの場面、シナリオスクールの場面、元彼の家の場面、ふとした一言でその場の空気が変わる瞬間をとらえるのは吉田監督の傑作「さんかく」同様すばらしかったです。介護施設シーンの麻生さんがなんとなく言った「こんなこと。」という一言で場が一気に張り詰めた空気になる場面とか。あと元彼の家で飲みながら、セックスか~と思いきや麻生さんのひとことで~という長回しシーンとか、個人的に名場面がいくつもありました。
まぁでも惜しいところがすげぇある映画で、まず思ったのは主人公の部屋の美術。映画のシナリオライターなのに家に1本も映画のDVDがなかったり、映画のシナリオのはなしなのに映画についての話がまったく出てこないのは気になりました。僕はまったくそっちの人じゃないのでわからないのですが、シナリオライターって映画見ないのかなぁ。でもまさに映画の脚本を書いている吉田さんがまさに自分の経験や見てきたことそのものの題材なだけに、意外にそんなものなのかなぁ(・ε・)ワカンナイ
あと、吉田監督特有というべきなのか、笑いを取りに来てるであろうカットがちょいちょい入ってきて正直ノイズになるところが多かったり。「そのカットいる?」っていうところがけっこうありました。
俺も夢と折り合いを付けなければいけない時が来るのか。そのとき俺はどうするんだろう。真面目に自分の将来が不安になりました。笑
おわり。
この機会にひさびさに観たけどやっぱ超おもしろかったです。見てない方はぜひ!
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