日々の事:久々の小児科 外来
久々の投稿です。ケー君が私たちの元から巣立って、3ヶ月が過ぎました。2年半の闘病生活が、もう遠い昔のことのように感じるくらい、今は少しずつ、穏やかな日常を過ごしています。もちろん悲しみがなくなったわけではありません。ふとした瞬間に、「あ~もうケー君はいないんや」と思い知らされることもあります。それでも、毎日は過ぎていきます。仕事に行って、家に帰って、 ご飯を食べて、片付けをして、少しずつ普通の日常に戻ってきました。そんな中、今日はケー君の主治医の先生に呼ばれ、久しぶりに夫婦で小児科 外来を訪れました。理由は、ケー君の最期を、しっかり教えてもらうためです。実は、ケー君が息を引き取った直後、主治医の先生から【病理解剖】についてのお話がありました。病理解剖というのは、 亡くなったあとに身体の中を詳しく調べることです。もちろん先生からは、積極的に勧められたわけではありません。私たち家族の気持ちを察し、とても丁寧に気遣いながら、静かに、慎重に、お話ししてくださいました。苦しい闘病生活を乗り越えて、何度も治療や手術に向き合ってきた身体に、さらにメスを入れることになります。正直、親として迷いがなかったと言えば嘘になります。「もう十分頑張ったのに」「これ以上、身体に何かをするのはかわいそうなんじゃないか」そんな思いもありました。きっと病理解剖を望まないご家族もたくさんおられると思います。それは本当に当然のことだと思います。だから、何が正解という話ではありません。ただ、ケー君はもともと、 人のために何かをしたいと思う子でした。小さい子の面倒を見るのも好きで、困っている人を見ると放っておけないところがありました。病棟でも、年下の子にちょっかいを出したり、ちょっとお兄ちゃんぶったりしていました。だから家族でも話し合いました。「同じ病気で苦しむ次の子たちのためになるなら」「ケー君なら、納得してくれるんじゃないか」そう考えて、病理解剖をお願いすることにしました。そして今日、 ケー君から取り出した一部の検体を、3ヶ月にわたって詳しく調べていただいた結果を、先生から聞かせていただきました。先生から伺ったところでは、ケー君の身体を蝕んでいたのは、当初の診断通り、卵黄嚢腫瘍を主成分とする胚細胞腫瘍だったそうです。ただ治療経過の中で、悪性度はかなり高くなっていたようで、脳の中のあちこちに腫瘍が広がり、播種した細胞から出血も伴っていたとのことでした。最期は、中枢神経に入り込んだ腫瘍からの出血による、臓器不全だったと説明を受けました。文字にすると、とても淡々とした説明に見えます。でも実際に先生の口から聞くと、 やっぱり胸にくるものがありました。「あぁ、ケー君の身体の中では、こんなことが起こっていたんやな」そう思うと、 あの時のしんどそうな顔も・・・意識を失ってしまった最期の1ヶ月間も・・・全部納得することが出来ました。ケー君の腫瘍は、アジア圏に集中していて、世界的に症例数が少ない、いわゆる希少癌です。そのため治療の経過や薬の効果を、実際に詳しく調べられる機会は、 あまり多くないそうです。しかも、治療効果を直接診ることができる、病理解剖まで行われるケースとなると、さらに限られるとのことでした。正直、私には難しいことは全部わかりません。ただケー君が治療の中で、使っていた薬(分子標的薬)が・・・ 腫瘍にどんな影響を与えていたのか? 効いていた部分があったのか? 逆に、効きにくかった部分があったのか?といった情報を検体から確認できたことは、確実に次の治療につながる、とても貴重な情報になると言われました。そう聞いたとき、「あぁ、ケー君が最後まで頑張った時間には、ちゃんと意味があったんやな」と、少しだけ救われた気がしました。ケー君の頑張りが、いつか同じ病気で苦しむ子どもたちの助けになるかもしれない。そう思えることは、 親として、ほんの少しだけ前を向ける理由になりました。病理解剖をお願いしたことが、 もしかすると親のエゴだったのかもしれない。そう思う瞬間もあります。でも小さい子の世話が好きだったケー君にとって、同じ病気で苦しむ子どもたちの一助になることは、きっと誇らしいことなのではないかと思っています。ケー君が大好きだった主治医の先生も、「ケー君の思いや、これまでの治療の努力は、絶対に無駄にしません。 必ず次の治療につなげます」強く約束してくれました。17歳で医療に貢献するとは・・・すごい子です。その夜、ケー君の友達が・・・「手を合わせに来た」と突然家に来てくれました。そして、そのまま我が家で晩ご飯を食べることになりました。久々の男子高校生とテーブルを囲む、4人の晩御飯・・・高校生男子の食欲って、本当にすごい!見ていて気持ちいいくらい食べます。そんな姿をケー君と重ね合わせて、「お前、人んちで食いすぎやろ!(笑)」とか言いながら、久々の4人での食卓を楽しみました。ケー君は17歳で巣立ちました。私たちと一緒にいた時間は短かったかもしれません。でも医療にも周りの友達の人生にも、しっかりと何かを残していったんだと思います。それは親として、 とても誇らしいことです。いつかケー君と再会した時には、いつも通りの感じで、「お前、意外とすごいヤツやったんやなぁ」と、抱きしめながら褒めてやりたいです。たぶんケー君のことだから・・・「いや今さら!?そんな前から知ってたし(笑)」みたいな顔して、嬉しそうに笑ってくれるんでしょうね。