司法書士の独立開業 | 新潟の司法書士ブログ

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司法書士法人トラスト代表社員、土地家屋調査士、行政書士

本日は、司法書士の独立開業について

 

私の感想としては、以前と比較してかなり厳しくなったという印象です。

 

 

この記事を読んでいる方は、

 

・司法書士有資格者の方で現在司法書士事務所に勤務し、近い将来独立開業を考

えている

・司法書士試験に合格又は合格見込みの方で、年齢的な問題その他の事情で勤務

ではなく、即独を考えている方

 

ではないでしょうか。

 

そもそも司法書士という資格は「食える」のでしょうか。

 

・独身の方

・家族を養わなければならない方

・都会の方

・田舎の方

・堅実な生活で満足な方

・豪華な暮らしをしたい方

 

と様々な方がいると思うのですが、「食える」の定義も人それぞれ

司法書士事務所のイラスト

 

サラリーマンとして一般企業に勤務している方々は、300万円~の収入があると思うのですが、通常、サラリーマンは「食える」状況にあるわけですから

そのくらいのレベルで話をしていきます。

 

司法書士として独立開業すると当然「経費」がかかるので300万円~となるには、売上として500~600万円は必要ということになります。

月で考えると約50万円。

毎日2~3万円又は2日に1回5~6万円の仕事が必要になります。

果たして、あなたは独立開業して、食えるレベルの仕事量を確保できるでしょうか。

 

私が独立開業した16年前は、司法書士という職業は独立開業するのが当たり前で、修行先に長く勤務しているとしたら「サラリーマンが嫌になって死ぬほど大変な勉強をして司法書士に受かったのに、何で人に雇われてるの?」と言われる時代でした。

当然、私の同期はほとんどが独立開業しています。

 

しかし12~13年前くらいから状況が変わり、独立開業せず、勤務する方も増えてきているように感じます。特にここ10年以内の合格者は独立開業のハードルが高いのではないでしょうか。

 

ここ最近の合格者が独立開業を躊躇する理由としては、やはり独立開業しても「食えない」ということになると思います。

以前と比較して何が変わったのでしょうか。

 

①   登記件数の減少 

バブル時代の半分以下にまで減少しています。

要因としては、

・少子化により、住宅の需要が減少。今後もそれがさらに悪化する。

・建築資材の高騰による新築着工戸数の減少

・企業向け不動産担保融資の大幅減少

②   司法書士事務所の寡占化

 以前は、どんなに人気のある司法書士でも高齢で動きが悪くなってきたり、引退することによって、若手の司法書士へ自然にユーザーが流れていきましたが、今多くの案件を抱えている事務所は法人化しているため他の事務所に仕事が流れにくい状況です。

③   ネット銀行の指定司法書士制度

 ネット銀行は、メガバンクや地銀等が太刀打ちできない低金利でシェアを伸ばしておりますが、一般の司法書士はその登記に関わることができず、一部の司法書士事務所に業務が集中している状況です。

④   大手不動産業者、住宅会社の指定司法書士制度、登録制度

 ③と同様に一部の司法書士事務所に業務が集中している状況です。

⑤   葬儀会社提携行政書士事務所

 近年は、葬儀会社との提携行政書士事務所(司法書士事務所ではありません)が大量の紹介を受け、相続案件が集中しているようです。

 司法書士にとっては、大きな損失となっていると思われます。

 

⑥   地方金融機関の抵当権抹消指定司法書士制度

 私の地元でも、抵当権の抹消に関し、事務集中による経費削減により、支店では対応せず本部一括という金融機関がいくつかあり、今後も増加していく可能性が高いです。

 以前は、この「抹消」で支店担当者との人間関係をつくり、他の仕事につなげるという司法書士も多かったのではないかと思いますが、残念ながらそれもできなくなりました。

 

 

これから司法書士で独立開業をお考えの方にとっては、夢のない厳しい話になってしまいましたが、これが現実です。以前のように司法書士合格者の大部分が独立開業し、成功するということはもうないでしょう。

 

しかし、成年後見や家族信託、事業承継、商業登記等上記のように寡占化の影響を受けない分野もありますし、不動産登記につきましても少ないですがチャンスは残っているでしょう。

独立して「食えるようになる」「成功する」ためには、十分な準備、実務の勉強、営業活動を他の司法書士以上に頑張るしかないということになります。

 

厳しい環境ですが、他の司法書士と差別化できること、できることはたくさんあります。

 

士業バッジをつけた人のイラスト(男性・眼鏡ありなし)

 

 

 

この記事を読んだ方の中で、一人でも多くの方が、現状を理解し、独立開業し成功することを願っております。