若冲と蕪村 | そんな感じ。 since March 28, 2005

そんな感じ。 since March 28, 2005

日常生活の中で、ふと感じたこと。

関心したこと。

その時の感性のおもむくままに気ままに書き留めています。

2015年03月26日(木) 晴れ


先週の金曜日(3月20日)、なんとか定時ちょい過ぎにオフィスを出てサントリー美術館へ行ってきました。

表参道で千代田線に乗り換えて、乃木坂で下車。

3番出口から出て、3分くらいで東京ミッドタウンに到着。


20150320_1957若冲と蕪村


サントリー美術館は、ミッドタウンのガレリア3階。

「東海問題」以降、ずっとサントリー製品は不買していて、サントリー美術館もスルーしていたのですが、今回の特別展は見逃せなかった。


20150320_1925若冲と蕪村


『若冲と蕪村』 ~生誕三百年 同い年の天才絵師


先日、トーハクで蕪村の屏風図 を見て、蕪村について調べていたら、たまたまぶち当たったのが、この特別展。


「え~、蕪村と若冲って同じ年なの!?」と興奮して、速攻でコンビニで前売券買っちゃいました。(1,100円)。


若冲も蕪村も正徳6年(1716年)生まれ。

若冲(享年85歳、1800年没)は京都の青物問屋「枡屋」の長男として生まれ、23歳の時、家業を継ぎ、40歳で隠居して本格的に画業に専念する。

青物問屋とは各地の野菜など生鮮食品を集めて小売(八百屋)に卸して販売させる一種の流通業で、隠居後は豊かな財源をバックに高価な絵の具をふんだんに使い極彩色の作品を描きつつ、水墨画や版画作品も制作。


蕪村(享年67歳、1783年没)は大阪の農家に生まれ、20歳で江戸へ出て俳諧を学ぶ。

27歳から10年間、北関東や東北地方を遊学。

40歳頃から京都へ移り、俳諧と絵画のふたつの分野で活躍。

中国の文人画の技法による山水画や俳画を得意とする。


今回の特別展、いろいろ興味深かったけど、二人は同じ年に生まれたというだけでなく、本格的に画業に勤しみだしたのも同じ40歳頃。

18世紀後半には、二人とも京都四条界隈に住み、ご近所さんには円山応挙、池大雅、長沢蘆雪と、京都画壇のビックネームが同じ時代の京都の地に交差していたという事実がまたスゴイ!


あ~、あの島原の「角屋」に蕪村、応挙、池大雅の障壁画が残っていたというのも、そ~いうことだったのね…と、私の頭の中でまたまた点と点が繋がっていく。

それも教科書で見たような写真が繋がるのではなくて、自分が実際に見た作品が繋がっていくんですよ。

なんか、興奮しちゃうじゃないですか!

美術館巡りを始めて、かれこれ三年。

その醍醐味を味わえるようになってきました。


交差したのは、時と場所だけではなく、二人とも沈銓(Shen3 Quan2 =沈南蘋)の作品を模写して中国がの技法を学んだというところも一緒。


※沈南蘋は清朝の宮廷画家で、徳川幕府の招聘を受けて1731年から1733年の2年間弱長崎に滞在し、写生的な花鳥画の技法を伝えました。(雍正帝が在位していた時代だわ~☆)

沈南蘋帰国後は、弟子の熊代熊斐(くましろ ゆうひ)により南蘋派が形成され、沈南蘋の彩色花鳥画の技法は円山応挙、伊藤若冲など江戸中期の画家に多大な影響を及ぼしました。


今回の特別展では、その沈南蘋の作品を見られたのが一番の収穫だった気がします。


沈南蘋「草花群禽図」(=叭々鳥図 1750年・乾隆15年)がそれなんですが、最初の所有者は江戸中期の有名なコレクター木村蒹葭堂。

沈南蘋の作品は、画面いっぱいに様々な姿態の八哥鳥が描かれていて、それがとても可愛いし、上手い!

見惚れてしまいました。

すぐ隣に蕪村が模写した「枯木叭々鳥図」が展示されていたけど、「蕪村、ヘタじゃん!」と思わず思ってしまった(笑)。


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叭々鳥は八哥鳥ともいって、ムクドリ科のハッカチョウ属、突き出した冠羽が特徴。


沈南蘋の八哥鳥図、もう一回見たいな。(展示は4月6日(月)迄)

あと、若冲の「月に叭々鳥図」は今回展示はなかったけど、岡田美術館所蔵だから、次回、岡田美術館に行った時、見られたらいいな。


「若冲と蕪村展」に行ったのに、沈南蘋と八哥鳥のことばかり書いていますが、勿論、若冲も蕪村も良かったです。

若冲の鶏にはやっぱり、唸りますね。


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先日買った「pen」の表紙も若冲の鶏。


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表紙の印刷も素晴らしくて、羽の部分には凹凸もあります。


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若冲の「象と鯨図屏風」は大胆な構図に度肝も抜かれる。

鯨が背中だけしか出してないところも、意表をつく表現だわ~。

若冲さんには、かないませんなぁ。

(写真は雑誌「pen」の見開きページを撮影したもの。)


若冲は青物問屋の旦那だっただけあって、野菜への愛も半端ない。

「蔬菜図押絵貼屏風」「果蔬涅槃図」では野菜を実に伸びやかに描いている。

涅槃図のモチーフをすべて野菜と果物で描いた「果蔬涅槃図」なんて、発想が天才!

横にころがった二股大根を臨終間際の釈迦に見立てているんですよ~。

もう、完璧にやられちゃいますって(笑)。

この「果蔬涅槃図」の展示は4月13日(月)迄です。

京博所蔵だから、また京博に行った時、見られたらいいな。


因みになんですけど、「蔬菜」の読み方が分からなかったので、ピンイン変換モードにして、「shu cai」と入力して、「蔬菜」に変換しました。

中国語をちょこっと勉強していたので、「蔬菜」が野菜のことだと分かって良かったわ。


つい若冲の大胆で派手な作品に目がいってしまって、蕪村の印象が薄くなってしまったけど、シンガポールの会社所有で展覧会に初めて出品されたという「蜀桟道図」や、ポスターにもなっている重要文化財の「鳶・鴉図」はやっぱり良かったなぁ~。

「鳶・鴉図」は晩年に用いた「謝虎」の落款が入っていて、鳶図の墨画に茶系の顔料を用いたトーンと鴉図の背景に濃いめのグレーを用いたモノトーンとの対比が面白い。

この画ももう一度見たいです。


※「蜀桟道図」と「鳶・鴉図」の展示は、4月13日(月)まで。

で、国宝「夜色楼台図」(個人蔵)の展示は、4月29日(水)~5月10日(日)

因みにサントリー美術館の休館日は毎週火曜日です。


こりゃ、毎週、見に行かんといけんね(笑)。