前と同じく、旧ルールでは平仮名表記だったものが、このたびの改訂で使い分けが必要になった言葉です。
ただし、今日のお題が前と異なるのは、漢字表記が限定されるということです。
「ある」は新訂用字用例辞典では二つ項目がありまして、日本語としては「有」「在」で書ける場合で分かれているんですが、そのそれぞれの例外表記として、「有り金」「有り明け」「有り難い」「有り合わせ」「在りか」「在り方」「在りし日」が示されています。
なお、ここで示されているのは類例なく限定された例外表記であるため、ほかの言葉、例えば「ありてい」や「ありさま」などは全て平仮名表記となります。
そして、この例外の中でちょっと気をつけないといけないのが、「有り難い」です。
結構な頻出語じゃないかと思いきや、「ある」の例外表記としてではなく単独の項目で見ると、「有り難い」の上に「ありがたい」があります。では漢字表記はいつするのかというと、用字用例辞典に示してありますが、「めったにないこと」という意味で、「有り難い才能」「世にも有り難い」などと使われるときのみなのです。
つまりは、平仮名表記の「ありがたい」の用例にある「ありがたい助言」「ありがたいことに」「ありがたみ」「ありがた迷惑」などを見てもお分かりでしょうが、通常は大抵「ありがたい」の平仮名表記であることのほうが多いでしょう。
というわけで、多分「有り難い」が出てきたときには私は忘れている自信があります……。
「ある」、危険な罠が複数含まれている恐ろしい言葉です。