久々にザ・使い分けという感じですね。
辞書を見てみますと、「立てる」と「建てる」という項目が別にあり、それぞれの意味は、「立てる」が、「ある場所にものを縦にして位置させる」「座ったり横になったりしているものを起こす」「ある現象や作用を目立たせたり生じさせたりする」「人を差し向ける。出発させる」「戸や障子をしめる」「抹茶に湯を注いでまぜ合わせる」など、意味が多過ぎるので省略しますが、このほか多数あります。そして、逆に「建てる」のほうはシンプルで、「建物などをつくる」「新しい国や都市をつくる」のみです。(意味は全てデジタル大辞泉より)
用字用例辞典でもおおむねこの書き分けでよいかと思われますが、例外があって、辞書の「立てる」の意味のうちの「戸や障子をしめる」「抹茶に湯を注いでまぜ合わせる」は平仮名表記になります。ざっと見た感じ、現在用いられている「立てる」の用法のうち、ほかの漢字で表記できるものが平仮名表記であるようでした。(そちらの漢字で書くとすると「茶を点てる」「戸を閉てる」です)
また、このほか迷いやすいものとして、「建てる」の「建物などをつくる」の意味のときがあると思います。
住んでいる家やその周りをちょっと見てみただけでも、例えば家そのものや、中の柱、壁、道沿いにある塀や電柱なんかは全て「タてる」を用いますよね。このうち、辞書の意味からいくと、明らかに建物である家は当然「建てる」で、柱や電柱は「立てる」であります。そして壁や塀はどうかというと、国会議事録で検索したところ、両方とも「建てる」のほうでヒットしました。このほか、鉄塔も「建てる」のほうがヒットしました。
どうやら、何らか組み上げたりする作業が必要なものは「建てる」であり、逆に、「立てる」のほうは何かをシンプルに据えつけるだけというやや狭い範囲のものと考えたらよいようです。私はしばらく勘違いして用いていました。
こんな身近で毎日見聞きするような言葉でも、私はいまだにちょっと迷ったり間違えたりすることがあります。日本語って本当に難しいですね。