きのうの記事で、「居眠りの意のときは「舟をこぐ」と書く」旨記載しましたが、「あれ? 船ではないの?」と疑問をお持ちになられた方もいらっしゃるかもしれません。
実は、「船」と「舟」は用字用例辞典のルールでは使い分けが必要なのです。
具体的には、用字用例辞典には、小舟のときは「舟」一般的には「船」と表記するように書いてあります。
それで、もっと詳細に、では小舟というのはどういうものかといいますと、デジタル大辞泉で「船/舟」の項を見てみますと、「普通、推進力に動力を用いる大型のものは「船」、手でこぐ小型のものは「舟」と書く」という記載がありますので、そのとおりの使い分けをすればよいのではないかと思います。
また、用字用例辞典には、小さな舟であるか否かとはちょっと関係ないような言葉も幾つか例示されています。「舟」のほうは、冒頭に挙げた「居眠り」の意のときの「舟をこぐ」のほか「湯舟」、「船」のほうは、「親船」「助け船」「渡し船」「乗りかかった船」などです。
この中では、「湯舟」は、家庭にあるものは確かに小さいですが、「船」の字で書かれていることが多いですし、間違いがちだと思います。「助け船」「乗りかかった船」なんかは慣用句なので小舟か船かは不明ですが、一般的には「船」ということなので、「船」で表記します。
まあ、基本的に「船」のほうが圧倒的に出現頻度が多いです。ただ、そうであるからなおさら、いざ「舟」が出てきたときにはその存在を忘れ去っていて間違いが発生してしまう言葉であると思います。
これは用字用例辞典を一応調べてみて「こんなものも使い分ける必要があるのか」と衝撃を受けた言葉の一つです。このようなトラップがたくさんありますので、何でもないような言葉も一つ一つとりあえず調べてみることが重要です。