皆様御存じのとおり、「保健」の意味は「健康を守り保つこと」であり、「保険」は「火災・死亡など偶然に発生する事故によって生じる経済的不安に備えて、多数の者が掛け金を出し合い、それを資金として事故に遭遇した者に一定金額を給付する制度」(全てデジタル大辞泉より)でありますから、なぜ書き分けが必要なのかと思われる方が多いかと思います。
確かに、ぱっと思いつくのは、「保健」のほうは「保健体育」、「保険」のほうは「生命保険」でしょうから、それだとほとんど迷うことはないでしょう。
問題は、公的医療保険の話になったときです。とりわけ私がやっている仕事では、国民健康保険がよく出てきます。
さて、国民健康保険を含む公的医療保険は、ただ医療費を支出しているだけではなく、医療費をできるだけ抑えることができるような事業、例えば病気の早期発見のための健診や、健康でいるための運動の推奨、病気の知識を広める活動など行っているんですが、そういう個別の事業をまとめて「保健事業」といいます。この記事の冒頭の意味のとおり、「健康を守り保つ」ための事業ですね。
ところが、国民健康保険全体では、「国民健康保険事業」という言い方をします。「国民健康保険」で行っている事業ですね。厚生労働省なんかでは統計として「国民健康保険事業年報・月報」を出していたりします。
つまり、前の記事であった「どちらかが正しくてネットで検索したら正しいのがわかる」とは違い、これは「保険事業」「保健事業」両方が正しく、しかもそれらが同じ話の中で出てくる可能性があるのです。
なおかつ発音は全く同じですから、もうこれは文脈で判断するしかありません。
というわけで、私は、公的医療保険の話が出てきたときは、聞き直す前に「保健」「保険」をまとめて色を変えて、一つ一つ必ず確認するようにしています。前にも何かでこういう方法を御紹介したような気がしますが、例えばピンクなど目立つ色にして、確認したら黒に戻すようにすれば、見落とすことはなくなります。一手間ですが、間違いのない議事録を納品するためには、うっかりミスの多い私には必要不可欠な作業です。