前の記事に引き続き、意味が違う別の言葉であるのに似た意味なので間違えてしまうシリーズです。
私は結構これまで間違ってしまっているような気がしますが、デジタル大辞泉によると、「食料」は「食用にする物。食べ物」「食事の費用。また、生活費」で、「食糧」のほうは「食用とする物。食物。糧食。特に、米・麦などの主食物を指す」となっております。
これだと若干区別しづらいというか、書き出しがほぼ同じなので、用字用例辞典の記載を引用しますと、「食料」は「食べ物全体」、「食糧」は「主食としての米麦」となっています。これだとシンプルで非常にわかりやすいですね。
ただ、このシンプルな用字用例辞典でもちょっとひっかかる部分があります。「食料」の項には「食料費」が、そして「食糧」の項には「食糧費」があるんですね。
これを理解するには、用字用例辞典の例示の後の括弧書きが大事です。
まず「食料費」には、直後に「(家計調査)」という記載があります。
これは、統計法に基づいて総務省統計局が毎月行っている家計調査のことで、詳しくは統計局ホームページをごらんいただいたらよいかと思いますが、要は世帯を対象とした家計の収入、支出等お金の調査です。その中の支出項目の一つとして、「食料費」というのがあります。穀類、魚介類、肉類、野菜・海藻、果物、菓子類、飲料、外食費等含む、世帯が食べるために支出した費用のことです。
次に「食糧費」には、直後に「(需用費)」という記載があります。
自治体の会計事務のことを御存じの方はおわかりでしょうが、需用費は支出科目の一つで、それをさらに細かく分けた中に食糧費があります。ちなみに、ほかには消耗品費や燃料費、印刷製本費などがあります。
「食糧費」自体は、辞書等では項がなかったので検索でヒットした高知県の事務処理要領から引用しますと、「懇談会経費、昼食、夕食、茶菓、弁当等及び非常炊出賄、警察留置人弁当等の購入に要する経費(飲食を目的としたもの)。懇談会開催費用、昼食、茶菓、懇談会費、持参用清酒等」となっております。
はい、ここで「おや?」と思われた方がいらっしゃると思います。上のほうで「食糧」は「主食としての米麦」と書いていますが、「食糧費」だと飲食全般が対象、つまり辞書のほうに記載の「食用とする物」の意味になるんですね。
とはいえ、会計事務上の名称はもう特殊なものとしていただいて、通常「食糧」ならば「主食としての米麦」でよいとは思います。
私の印象では、通常よく出てくるのは「食料」のほうです。ただ、当然そうでない場合も含まれるので、前後の流れから意味をよく考えながら漢字変換する必要がある言葉です。