これは最初相当悩んだものです。
一つの文の中に複数出てくることもよくある、とんでもない頻出語な上に、用字用例辞典には、平仮名の「こと」に「形式名詞」という記述があるだけで、あとは例が載っているだけだからです。
「形式名詞」とは、デジタル大辞泉によりますと、「その語の表す実質的意義が薄く、常に連帯修飾語を受けて使用される名詞。「病気中のところ」の「ところ」、「手紙を書くことが苦手だ」の「こと」、「失礼の段おわびします」の「段」など。不完全名詞。形式体言」とありますけれども、これだけではわかりづらいと思いますから、その用字用例辞典の例を列挙してみます。
「事」
・事あるとき
・事を起こす
・事を分けて話す
・事公に関する
・事とする
・事の次第
・これは事だ
・事が事だけに
・事ほどさように
・事もあろうに
・事もなげに
「こと」
・言うことがある
・そのこと
・ということ
・することであろう
・私こと
何となくイメージをつかんでいただけたでしょうか。抽象的な何かを指す場合は平仮名で、というイメージでよいのではないかと思います。
ただし、「事」と書くべき場合でも、平仮名の言葉に続く場合は「こと」と平仮名書きになります。用字用例辞典に載っているものをそのまま挙げれば、「かけごと」「まねごと」「もめごと」ですね。これ以外にもあるのかもしれませんが。
通常の会話で使用するのは圧倒的に平仮名の「こと」のほうが多いですので、ついつい漢字で書くべきときも平仮名で書いてしまいそうになりますので、気をつけなければいけない言葉ですね。個人的には、「事もあろうに」なんかはつい平仮名で書いてしまいそうになります。
ちなみに、私は最初、上の例を見て「事とする」というのを見て非常に混乱しました。
これは、「その行為に没頭していること、それを当面の仕事としていることを表す」(デジタル大辞泉より)ときに使うもので、デジタル大辞泉に挙がっている使用例は、「晴耕雨読を事とする」です。
つまり、「準備はあす行うこととする」という使い方とは違うわけですが、上記の「事とする」と混同してしまって、どれが形式名詞なんだか、わけがわからなくなってしまいました。
こういうこともあって、最初のころはほんとうにクオリティーの低いものを納品していて、反省しきりです。
まあ、今も完璧なものを納品できているわけではないですが……。反省の毎日は続いております。