先生とのお別れ。 | 土屋太鳳オフィシャルブログ「たおのSparkling day」Powered by Ameba

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こんばんは。たおです。
今日は、制作発表のことやコメントのお返事を書いている途中なのですが
実は、とてもお世話になった日本舞踊の先生のお通夜に伺ってきました。
ブログに書いてよいのか迷ったのですが、
私が演技をする時に、日本舞踊を習ってきた時に教わったことは
本当に大きな土台になっていると思うので、書こうと思います。

この世から旅立たれた先生のお名前は、若柳吉三次先生とおっしゃいます。
正確に言うと、私が3歳から直接習ってきた先生の、そのまた先生で、
「お稽古場全体の大きな先生」という存在のかたでした。

私が小さい頃、そのお稽古場では、年に一回、渋谷の児童会館や、
川崎など東京の近くのホールなどで、
子ども向けにわかりやすくした日本舞踊の劇を上演していました。
日本舞踊での劇なので、台詞はないんですけど、
台詞がなくても小さい子にも分かるような楽しい劇だったので、
練習する私も、とても楽しかった記憶があります。
「浦島太郎」や「舌切りすずめ」や「かぐや姫」など、
誰でも知ってるお話が題材なんですが、
衣装や大道具、小道具は全部先生方の手作りで、
大きなタコなどの着ぐるみみたいな衣装も工夫して作られていたので、
その工夫を見るのも、とても楽しかったんです。

吉三次先生は、日本舞踊を親しみやすく広めるために、
その劇のようにいろいろなことを試して、実行してこられた先生でした。
おさらい会などがあると、だいたい会場の後ろのほうに座っていらして、
最初から最後まで、
お弟子さんたちが踊るのをじっと観ていらっしゃるんですけど、
私がとても印象的だったのは、どの踊りを見ながらでも、
必ず手を、その踊りの振りのとおりに動かしながら観ていらっしゃるんです。
ということは、踊りが全部、頭の中にも体の中にも心の中にも、
しみ通っていらっしゃるんだと思ったし、
常に芸術と一緒に生きていらっしゃるんだなあ…と思いました。
私は、吉三次先生が小さく手だけで踊りながら、
お弟子さんの踊りを見守っていらっしゃるお姿が、大好きでした。

特に「鈴木先生」での小川蘇美ちゃんの演技は、
もしかしたら日本舞踊を習っていなかったら、
出来なかったかもしれないと思ってます。
出来る出来ないの前に、役に受からなかったんじゃないかとも思います。
蘇美ちゃんは、時代を超えるような雰囲気のある女の子だと、
原作を読んだ時に思っていました。
でも、それをどうやって表現したらよいか、最初はとても迷ってしまって、
まず、蘇美ちゃんの姿勢とか目線って、
どんな感じだろうということから考えました。

その時に参考にしたり思い出したりしたのが、日本舞踊でした。
私は日本舞踊のおさらい会で、
『正札附根元草摺』(しょうふだつきこんげんくさずり)という演目の、
舞鶴という役を踊ったことがありました。
舞鶴さんは女の子なのですが、ちょっと普通の子と違うというか、
人間なのかそうでないのか分からないような、若いんだけど若くなさそうな、
かよわそうに見えるんだけど、すごく力が強かったり、
怒っているように見えるけど、気持ちは一生懸命で優しかったりするような
不思議な雰囲気を持っている子の役なんです。
私にとっては、とても難しい役の踊りでしたが、
その時に教わった姿勢や目線などが、その後も体のどこかに少しだけ残ってて、
蘇美ちゃんの姿勢や目線について考えた時、自然に参考にしていました。
「鈴木先生」では、時々演劇のような動きの場面があったんですが、
私は演劇をしたことがなかったけど、そんなにハラハラしなかったのは、
小さい頃、日本舞踊の劇に参加していたからじゃないかとも、思います。
蘇美ちゃんだけでなく、「龍馬伝」での乙女姉やんや、
今年のお正月に放送された「忠臣蔵 ~その義その愛~」.など、
着物を着る時に不安なく動けるのも、日本舞踊のおかげだと思っています。

実は、私はバレエと日本舞踊を習ってきたけど、
どちらかというと日本舞踊は、得意ではありませんでした。
苦手と言ったほうがいいと思います。
だけど、吉三次先生がこの世から旅立たれたと聞いた時、
日本舞踊が私の演技に、どれだけ力を与えてくれているかを改めて感じたので、
今日は、みなさんにもその気持ちを聞いて欲しくて書きました。
これからも日本舞踊で学んだことを忘れずに、精進していこうと思います。

東京は梅雨が明けたそうですが、まだまだお天気の不安定なところが多いので、
大雨の降った地域のかた、災害の影響と闘っている地域のかたは、
どうかお気を付けて下さい。
制作発表のこととコメントのお返事は、明日、送れると思うので、
よかったら、読みに来てください。
明日は「黒の女教師」の撮影です。
今日心に刻んだことを噛みしめて、踏んばってこようと思います!


たお