ICF-6800は何台も修理していますが、ほとんどの場合、カウンター暴走による短波受信不具合とFMの感度不足の手直しで修理完了となるのですが、今回はそれ以外の問題があったので、主にそのことに関しての記述になっております。
下の写真は受け取った時の6800です。ヤフオクで入手した機器とのこと。どこかの町工場で使用されていたようで油まみれになっていたので外筐やつまみをクリーニングしたとのことです。
依頼者のご指摘、ご要望は
・短波 PLLアンロックで暴走してます MW・FMは受信可能
ですがMWは何か接触不良で不安定です
・照明切れ
・MODE切り替えの接触不良
・メーター自体はきちんと振れています
・照明、FMワイド化、PLLアンロック、感度調整、接触不良
改善してほしい
というものです。
状態を確認したところ、確かにご指摘の症状が確認できました。FMは受信できていますが感度が悪いです。カウンターが暴走してSWが受信不能になるのはトランジスタのゲイン低下(hFE低下)が原因なので、FMも同様にゲインが低下するので感度が悪くなるのです。
天板の電池蓋を開けたところです。内部全体にうっすらと切削油のようなものが広がっており、シリアル番号の紙シールはベトベトになっています。ロッドアンテナは先端部分が欠損していますがうまく処理されていてアンテナの伸縮が可能です。
ヤフオクで入手とのことだったので、検索したところ、該当品が見つかり、出品者が他にどのようなものを出品しているのかを見ると、旋盤バイトやチップ、デジタルマイクロメーターなどがあり、工場が廃業した出品との説明が付記されていました。
なるほどです。
本機の底部はこんな感じです。ゴム足がとれてしまっています。おそらく長期間、金属切削工場の棚の上に設置されていたため、本機を持ち上げた際にゴム足が棚の板にくっついてしまったのでしょう。
忘れないうちにゴム足を取り付けておくことにしましょう。下の写真はジャンクの6800から取り外したゴム足です。
こんな感じで取り付きました。
さて、これからが修理本番。
フロパネを外して内部を見たところです。
この写真ではわかりづらいですが、スピーカーの磁石を見てみると、、、、、、
磁石周辺に金属の切削屑がくっついています。どこから入り込んだのでしょう。スピーカのフロント面(ポールピース部分)にもくっついていると、大きな音を出した時に音がビビる恐れがあるので、スピーカを外してみました。
幸いなことにフロント面には切削屑は見当たりませんでした。よかった、よかった。
スピーカの磁石周辺にくっついていた金属片をできるだけ取り除きました。
で、取り除いた金属片や切削屑がこれ。スイッチ部分や電子部品のピン間に入り込めばショートしますがな。
筐体からシャーシを取り出しました。これをさらに分解して、不具合を修理します。
筐体からシャーシを取り出した後の筐体内部をクリーニングしたところ、やはり底面に切削屑が結構散らばっていました。
これらが出てきた切削屑です。
下の写真は取り出したシャーシからVFOブロックを外したところです。
修理を進めて行き、ほぼ完了というところにきて、新たな不具合が発生しました。ごくたまに感度が低下するのです。中波と短波受信時の時だけ発生します。
どうもプリセレクタに問題(接触不良)がありそうです。
ということで、プリセレクタを外してみました。
おおっ、ここにも切削屑があるやんけ、どんだけ悪環境下で仕事しとったんや。
反対側からみたところ。このシールド板の下で接触不良が起きている。
シールド板を外したところ。
見た瞬間、不具合個所特定! さすがやな、ワシ。
実はこの部分の半田付け不良はこれで2件目です。100台ほど修理して不良が2台ということは不良率2%、部品不良ではなく、製造上の問題です。
この部分を手直しし、ダイアル照明のムギ球をLEDに変更し、FMの受信範囲も76MHzから95MHzまで受信できるよう変更して修理完了です。
様子を見て問題ないようであれば明日発送いたします。