2018年に修理したICF-6800Aが戻ってきました。
依頼者によると、
久しぶりに電源をいれて動作させたところ、SWのWIDEでセレクターレバーが10と20にした時に、チューニングの位置に関係なく当地のNHK第2、747Khzが混信した様な状態になる
というご指摘です。
最初はバンド切り替えスイッチかモード切り替えスイッチあたりの接触不良か半田クラックが発生しているのではないかと思ったのですが、、、、、
症状を再確認するために、信号発生器からの747KHz、AM変調波をループアンテナから送出し、ICF-6800Aに近づけて混信の様子をチェックしました。
そこで以下のことがわかりました。
1.セレクターレバーが0の位置でも同様に混信する
2.中波でも同様に混信している
3.AM RFゲインをMINにしても混信の度合いは変わらない
4.600KHzから800KHzあたりの信号が混信しやすい
5.混信はWIDEの時のみで、NARROWやUSB, LSBでは発生しない
747KHzの放送電波が非常に強い(強電界)地域にお住まいの方の受信機に、アンテナからではなく、それ以降(IF段)の回路に直接飛び込んできている現象ですね。
どこに飛び込んでいるのだろうとサービスマニュアルの回路図を見てもよくわかりません。
MODEスイッチをWIDEにした時のみ混信が発生し、それ以外のモードでは発生しないという原因がよくわからんのです。
シャーシを取り出して、どこに750KHzの電波が飛び込んでいるのかを調べることにしました。
RF回路やVFOブロックは今回の症状の原因ではないので(それ以降の回路に飛び込んでいるので)メイン基板だけを動作させても原因はつかめそうです。
ループアンテナのループ径を小さくして、基板上を上下左右に動かし、どの部分で混信が強くなるかを見ていったところ、AMの455KHzのIF段に付いているコイルが怪しいことがわかりました。
で、このコイルは回路図上のどこに付いているやつやなんやと上記の回路図を見てみたのですが、該当するコイルは見当たりません。
とりあえずコイルを外して見ました。下の写真が取り外したコイル(と一緒に繋がっていたダイオード)です。
マウントされていた基板上のシルク印刷のレファレンスからダイオードがD35だとわかりました。D35のダイオードとシリーズにこのコイルが入っていたことになります。
回路図にコイルを追加するとこんな回路になりました。ちなみにコイルは470µHでした。
このコイルは壺型コイルではなく、フェライト棒にコイルを巻いただけなので、言ってみれば小さなバーアンテナですわ。これが700KHzあたりの強力な電波を拾っていた(共振していた)ということですな。
回路図にも基板のシルクにもこのLが書かれていないということは、何らなの理由で後から追加されたということになります。追加された理由が知りたいですね。無くてもよいように思うのですが。ICF-6800はダイオードもLも付いておらず、単純にWIDEのフィルターからの出力とNARROWのフィルターからの出力を切り替えているだけなのですが、、、6800Aの設計者さん、理由を教えていただけませんか。
今回使われていたLの代わりに壺型コイルを使おうとしたのですが、スペース的に入らない。仕方がないのでシールド効果は少し落ちるが銅箔を周囲に巻くことにしました。
こんな感じ。
これをマウントしたところ、かなり混信する量が減少しましたが、さらに上からこの部分を銅箔で覆うことにより、通常の強電界地域でも何とか実用になるのではというレベルになりました。
本日発送いたしましたので、これで混信が防げているかどうかチェックをお願いします。電源投入直後のボリュームのガリも軽減しました。