【ストーリー内容】
まる子のクラスでは、来週の水曜日に父親参観会が行なわれることになりました。まる子がその事をお父さんに伝えて出席を頼んでも、「そういうのは苦手なんだ」とイヤな顔をします。それでも、「ただ見てるだけでいいんだから行ってあげなさい!」とお母さんに強く言われると、本当に見てるだけで良いならと渋々参加を受け入れました。一方で、たまちゃんのお父さんは学校の授業を受けるたまちゃんの写真をたくさん撮りたいため、参加に乗り気な様子でした。
次の日には、クラスメイトたちの間では参観会にお父さんが来るかどうかという話題で持ちきりでした。その日、戸川先生は参観会当日にお父さんについての作文の発表会をすると提案。当日までに作文が宿題に出されました。
まる子は、お父さんについて何を書こうか迷ってしまいます。おじいちゃんに「おじいちゃんについての作文なら書きたい事がいくらでも思いつくのに」などと話していると、「作文に書く事のない男で悪かったな」とタイミングよくお父さんが登場。「おじいちゃんと比べれば書ける事はないけど、せっかく参観会に来てくれるんだから悪いようには書かない」とまる子は言うのでした。
参観会当日、お父さんが不安そうに教室に入ってみると、たまちゃんのお父さんに「一緒に見ましょう」と声をかけられます。あまり知り合いがいないため心細かったお父さんは、ひとまず安心。たまちゃんのお父さんは今日に備えてしっかりカメラを用意していました。
授業となり、早速作文の発表会が始まりました。たまちゃんのお父さんは、最初の生徒の発表の段階から撮影を始めます。しかし、ブー太郎や長山くん、花輪くんなど、指名された人から次々と作文を読んでいく中、たまちゃんのお父さんは途中でフィルムを切れに。「今から買いに行けば、たまちゃんの番までに間に合うのでは」とまる子のお父さんに言われ、そそくさと教室を出るのでした。その時、山根が胃腸の痛みに襲われます。戸川先生がすぐに保健室に連れて行こうと保健係に呼びかけると、「つよし!」と背後から怒鳴り声が。山根のお父さんでした。「せっかく『つよし』という強い名前をつけたのに、どうして胃腸が弱いんだ」と言うお父さん。「めちゃくちゃ言う親父だね……」と引くまる子。「山根くんもつらいんだから、怒らないでください」と戸川先生に言われるも、山根のお父さんは「胃腸が痛むのは、だらしなくて根性がないだけだ、甘やかさないでください」とそのまま授業を受けさせようとします。そして、山根に立ち上がって作文を読むようにけしかけました。
山根は胃腸の痛みをこらえて立ち上がり、作文を読みます。
「僕のお父さんはとても厳しいです。僕が丈夫な強い男の子になるように厳しくしているのだそうです。でも、僕はそんなお父さんが時々嫌になります。本当の事を言えば、もっと優しいお父さんになってほしいです。厳しいお父さんなんて、もうコリゴリだ!」
クラス中がシーンとしました。戸川先生の判断で、山根は保健係に付き添われながら保健室へ行きました。
山根のお父さんは、「ただつよしを強い人間にしたかっただけなのに嫌がられていたなんて」という気持ちと、みんなの前で「コリゴリだ」と言われてしまった恥ずかしさに襲われます。さらに、山根が教室からいなくなったため、教室内でも行き場を失ってしまうのでした。
まる子の番になりました。まる子の作文には、「お父さんはお酒と釣りと野球と煙草が大好き」「夜になるとお酒を飲みながら野球を見て煙草を吸っている」「日曜は朝から釣りに出かけていく」などと普段のお父さんついて正直に書かれていました。まる子が読み上げていく内容を聞くうち「なんか自分はろくな親父じゃないな……」と落ち込むお父さん。しかし、まる子は「そんなお父さんが、とても私のお父さんらしい」「のん気で気楽な感じが、私と似ている」「煙草のハイライトの青色は、お父さんの色」という内容で作文を締め、教室中は温かい拍手に包まれます。「結構いい事を言ってくれる」と感動したお父さんは、たまちゃんのお父さんに一枚撮ってもらいたかった……と思った時、彼がフィルムを買いに行ったきりまだ帰ってきていない事に気付きます。野口さん、冬田さんが作文を発表し、いよいよたまちゃんの番。すると、たまちゃんが読み始めたと同時にシャッターの音が鳴り響きました。廊下には、カメラをかざすたまちゃんのお父さんの姿。猛ダッシュで戻ってきたようです。まる子のお父さんは「良かった良かった」と一安心。
たまちゃんの作文には、やはりカメラの趣味について書かれていました。「カメラが趣味なのは構わないけれど食事の時まで写真を撮るのはやめてほしい」と苦言で締めるたまちゃん。教室中は笑いに包まれ、たまちゃんのお父さんは少し恥ずかしくなります。それでも、まる子のお父さんから山根の騒動を聞かされると、その場面も撮影したかったと悔しがるのでした。
父親参観会も終わりに近づき、最後にお父さん方から感想を聞きたいと戸川先生。まず、ブー太郎のお父さんが指名されます。「どうか当たりませんように」とヒヤヒヤするお父さん。お父さんはこういう場面が苦手だと分かっているまる子もヒヤヒヤ。しかし、2人の心配をよそにあっさりと指名されてしまいます。
すっかりあがってしまったお父さんはパニックに陥りヘンな事を言ってしまい、不本意な笑いを買ってしまいました。
その夜、お父さんは「もうまっぴらだ!!もう絶対に行かねぇからな!」と酒を片手に顔を真っ赤にして荒れます。しかし、来週にはお姉ちゃんの父親参観に行くハメに。「私はまる子と違って恥をかかせたりしないんだからそんなに嫌がらなくても」「失礼しちゃうね!今回は私のせいじゃなくてお父さんが自分で勝手に恥をかいただけだ」というお姉ちゃんとまる子が言い合う中、お父さんはすっかり硬直するのでした。
一方で、山根はやはり今日の事でお父さんに怒られてしまいます。「お前のせいで恥をかいた!」と怒鳴るお父さんに、山根は「今に見てろ……」と内心反発していました。

【詳細ネタ】
・父親参観会は母親でも参加可能だが、できるだけ父親に参加してもらうようにという事。
・まる子はお父さんに参加を頼む前から、どうせ面倒くさがって行きたがらない事を分かっていた。
・おじいちゃんが代わりに行ってあげると言うも、まる子としてはお父さんに来てもらいたかった。
・まる子は、おじいちゃんについて「私とおじいちゃんは大の仲良しで一緒に遊んでいます」「おじいちゃんはいつも絶対に私の味方です」「私はおじいちゃんが世界で一番大好きです」と書きたい事がすぐに思いつく。
・おじいちゃんもまる子について「わしはまる子の事が世界で一番大切じゃ」「まる子のピンチにはたとえ火の中、水の中、おじいちゃんは助けに行きます」「まる子はおじいちゃんの宝です」と書きたい事がすぐに思いつく。
・お父さんは「ありのままを書けば立派な父親像になるはずだ」と強気。まる子は「そのまま書いたら笑い者だよ」と言い返す。
・大野くんのお父さんは廊下の窓から本人に手を振る。大野くんは照れくさそうな困った顔をする。
・作文発表会で冒頭だった青木くんのお父さんはタクシーの運転手で夜遅くまで仕事をしている。
・たまちゃんのお父さんが持ってきたカメラは、「こわれたカメラ」でヒデじいから譲ってもらった物。たまちゃんのお父さんはヒデじいに声をかけられ、その時の事を改めてお礼した。
・ブー太郎のお父さんはとても大食いだが、おかずがまずいと「ブーブー」と文句を言うらしい。
・ブー太郎の家族は、語尾に「ブー」をつけるのが口癖とのこと。
・長山くんのお父さんは、とても物知りとの事。長山くんのお父さんははまじやブー太郎のお父さんから「おたくの息子さんはとても立派で」と声をかけられる。
・花輪くんのお父さんは仕事で外国にいるため、長期休暇にしか会えない。花輪くんはヒデじいがお父さんの代わりをしてくれるため淋しくなく「2人のお父さんがいる」と発表。保護者もクラスメイトも感動する。
・たまちゃんのお父さんは、フィルムを買った店先でハワイ旅行が当たるくじ引きを引いていて時間をロスする。
・野口さんのお父さんはお笑い好き。毎朝、新聞のテレビ欄でお笑い番組をチェックしてから仕事へ行くとの事。お笑い番組が2つ重なった時は、父娘で手分けして見て、その後に内容を教え合うという。野口さんのお父さんは特定できなかったため、参観会に来ていたかどうかも不明。
・ブー太郎のお父さんは「これからはおかずがまずくてもブーブー文句を言わずに食べようと思いますブー」と言い、笑いを買う。
・まる子のお父さんは「これからもハイライトを吸って釣りをして、それからあの~……そういう事であの、あの、また毎晩酒でも飲もうかと思います」と言ってしまう。

 

【コメント】

●たぬき「父親参観会という事で、色んな生徒のお父さんについて知る事ができる回なわけだが」

 

○さぬき「話の趣旨には関係ないけどさ、まず僕としては、参観会の開催日が平日な上、その知らせが前の週とやや直前だったにも関わらず、あれだけの父親が集まれたっていうのが気になった……」

 

●たぬき「まぁ、あくまでもフィクションだからな」

 

○さぬき「あと、この回を見てるとまる子のお父さんって結構まともな人柄だっていうのも分かるね。家族間では結構色々ある人だけど」

 

●たぬき「まる子の作文はすごくまとめ方が上手なんだけど、そういった良い内容に出来るのも日頃からそれなりに父娘で信頼関係があったからだと思う。前半でちょっと恥ずかしい内容を読まれてても、憤ったりするでもなく事実として受け入れている感じだしな」

 

○さぬき「結局は最後の感想の所で撃沈だったけどね。まぁ、あれはお父さんが可哀想かも。そもそも『ただ見てるだけ』という条件で参加したのに、これじゃ話が違うもんね」

 

●たぬき「お父さんにとっちゃ赤っ恥かもしれないけど、それ以上にやり場がないのが山根の親父だよな。完全に自業自得だが」

 

○さぬき「山根くんをそのまま保健室に連れて行ってれば、あんな作文も読まれないで済んだのにね」

 

●たぬき「僕は別に山根の親父のやり方そのものを否定するわけじゃないけどさ、あの親父の中途半端さが気になって仕方ない。みんなの前であれだけ騒いでおきながら、山根に否定的な作文を読まれたら言い返すどころか縮こまっちまうからな。典型的な『小心者のくせに偉そうなタイプ』だよな」

 

○さぬき「厳しくしている以上は、反発される事も覚悟のうちなのにね。それを理解するどころか山根くんからは感謝されているのだと勘違いしてたみたいだからね。『小心者のくせに偉そうなタイプ』に加えて、『自分が何でも正しいと思いたいタイプ』だね」

 

●たぬき「そうそうそうそう!『正しいと思っている』んじゃなくて『正しいと思いたい』んだよな。本当に正しいと思っていれば、山根本人から反発心を持たれようと、みんなの前であの作文を読まれようと、恥ずかしくもないし堂々と出来るはずなんだ」

 

○さぬき「おそらく、山根のお父さんは怒鳴った時点で先生や生徒、保護者から良くない印象を持たれているというのは感じ取ってたと思う。でも、それを山根くんの作文発表で挽回しようとしてたんだろうね。要するに、山根くんが『厳しいお父さんが頼もしいです』『僕のためにありがとう』みたいな事を言ってくれる事を期待したのさ」

 

●たぬき「あぁ、だからこそ作文を読めってけしかけたんだろうな。自分の行いを子供の言葉で守ってもらおうとするなんて、情けないにもほどがある」

 

○さぬき「保健室へ行かせるのを拒絶したのも、まだ作文を読んでいない段階だったからなんだろうね」

 

●たぬき「あの父子は、コミュニケーション不足である事には変わりないな。親父も山根の気持ちを聞く前から思い込みだけで決め付けて、そういう部分をないがしろにしてきたんだろう。最後のシーンでも、ただ自分が恥をかかされた事に対して怒っているからな。作文発表で親父が思っていた事と山根本人が思っていた事に大きなズレがあったことが判明しているというのに、そこはノータッチで」

 

○さぬき「子供より自分のメンツを優先する親だと思われても仕方がない態度だよね。これじゃ、信頼関係なんて築けそうもないよね」