【ストーリー内容】
明日は母の日。まる子は「母の日」の存在を知りませんでしたが、たまちゃんから「お母さんに感謝の気持ちをこめて何かしてあげる日」である事を聞かされます。そんな必要あるか疑問に思うまる子でしたが、何かしてあげる事で自分の株が上がるのだとしたら悪くない話だと思うのでした。
兄と連名でブラウスをあげるというたまちゃんの話を参考に、貯金箱を確認するまる子だが、お金は250円しかありません。
一方でお姉ちゃんはエプロンと財布をプレゼントするつもりですぐに渡せる状態に。1,500円もかけたと聞き、まる子は「エビで鯛を釣るつもりではないか」と言ってお姉ちゃんを本気で怒らせてしまうのでした。
姉を茶化しつつも250円の予算しかない事に焦りを感じていたまる子は、お母さんのもとへ行き、率直に欲しい物を聞き出します。「母の日」の影響だと真っ先に気付いたお母さんは「別にないよ」と照れ臭そうに言いますが、まる子はお母さんがハンドバッグを欲しがっていた事を思い出し、「ハンドバッグを買ってあげるからお金をちょうだい」と言い、呆れさせてしまうのでした。
今度はお父さんのもとへ。お父さんが母の日にお母さんに特になにもしないと聞いたまる子は「ダイヤのひとつでもあげなよ」などと言うも、「母の日であって妻の日じゃない」と一蹴されてしまうのでした。
まる子はとりあえずプレゼントを買いに出かける事に。「どこへ行くの?」と聞くお母さんに「お母さんだけには秘密」と8割がた暴露したような返事をすると、商店街に向かいます。
雑貨屋に行きついたまる子は、お洒落な柄の小さいパンツを見つけるも「お母さんには入らない」と却下。ちょうど店員さんに話しかけられ、予算を伝えるとハンカチを勧められます。色々な柄がある中、まる子はすぐに気に入った柄を見つけます。それは280円で予算オーバーでしたが、店員さんの好意でオマケしてもらえる事に。さらには母の日のメッセージカードも書いてワクワクするまる子でした。
寝る前になってもお母さんが喜ぶ姿を想像してワクワクするまる子。
まる子はお姉ちゃんから今夜は2人でごちそうを作ろうと誘われます。献立は、サンドイッチとグラタンとデザート。途中でお母さんが様子を見に来ますが、2人で分担しながら料理を進めていくのでした。
ごちそうは完成し、テーブルクロスや花も設置。呼ばれたお母さんは、その出来栄えに大喜び。お姉ちゃんはお父さんにもビールをつぎ、家族4人で和気あいあいとなりました。
いよいよプレゼントを渡す時となりました。お姉ちゃんの後に、まる子もハンカチを渡します。お母さんが包装紙を開けてハンカチを広げた瞬間、「同じのを持ってるよね」とお姉ちゃん。まる子の表情が凍り付きます。お母さんに諭されたお姉ちゃんは失言に気付くも、もう既に時遅し。
まる子は泣き出し、ハンカチを奪い取ると「こんなものちっとも嬉しくないじゃん!」とグシャグシャにしてその場に投げつけて部屋にこもってしまいます。
お母さんは、ハンカチと一緒に残されていたカードに気付きます。そのカードにはイラスト入りのメッセージ。まる子がそのメッセージを健気に描いてくれた事を思い、お母さんは涙を流すのでした。
一方で、まる子は部屋の電気も付けずに暗い中で1人泣いていました。そこにお母さんがやって来て、まる子に「あげる」とさっきのハンカチを渡します。それは、お母さんがもともと持っていた古い方でした。
「だってお母さんには、まる子がくれたハンカチがあるから」とお母さん。その言葉に、まる子は思わずお母さんに飛びつくのでした。
お母さんのくれたハンカチは薄いお化粧の匂いがしました。そんなお母さんの匂いに安心したまる子は、いつの間にかお母さんのひざ元で眠ってしまいます。
様子を見にきたお父さんは、眠ったまる子を移動させようとそっと抱きかかえます。その瞬間、まる子は放屁。屁が思い切り顔にかかったお父さんは「くっせえ」とつぶやくのでした。

【詳細ネタ】
・「まる子の株は『あずき相場』よりも変動が激しいので大暴落が心配である」とナレーターに揶揄される。
・当時は、たまちゃんには兄がいるという設定となっていた。
・隣の席の男子・トシちゃんは「物をあげる事だけがプレゼントではない」と語る。「真心」をあげるつもりだとまる子にからかわれ、それは図星だったもよう。
・まる子は戸川先生に私語を注意され、トシちゃんに責任転嫁する。
・まる子はお姉ちゃんにプレゼントの中身を見せてほしいと頼むも却下される。セロテープをそっと剥がしてから戻せば分からないと主張するも、実際には包装紙を開封した形跡は何故か誤魔化しがきかないものである。
・まる子は自分がプレゼントを用意した後に、今度はお姉ちゃんから同様の煽りを受ける事となる。
・まる子は1日30円のお小遣いはプレゼント代どころじゃないと考える。せめて1日50円だったら…と夢を膨らませる。
・お父さんは自分の母にあたるおばあちゃんには「茶こし」をプレゼントした事があるが大して喜ばれなかったと話す。
・商店街に来てみたまる子は「やせる本」や5万円の「コート」「ダイヤの指輪」「ショートケーキ」などが気になるがいずれも却下している。
・ショートケーキが却下となった理由は、お母さんが「気持ちだけで嬉しいからまる子が食べなさい」とお互いに譲り合った末にお父さんに食べられてしまう結末が見えたため。
・まる子は化粧コーナーで絵具セットのような商品を見つける。そこの不美人な店員さんから「きれいになるための道具で、私もよく使う」と言われ、まる子はそのセットに効果がないと確信する。
・まる子はお母さんがプレゼントで喜ぶ姿を楽しみにする反面で「お小遣いが倍になるかも」という下心もあった。
・母の日当日は、おじいちゃんとおばあちゃんは朝から2人でどこかに出かけていった。
・まる子は玉子のサンドイッチを担当。味も上出来だったため、お母さんから「サンドイッチ屋さんになれる」と持ち上げられる。

【コメント】
●たぬき
「この話も『ちびまる子ちゃん』の中ではトップを争うレベルの感動作と言われているんだ。でも、こう……文章だけだと淡々としててなかなか伝えらないんだよな。ぜひアニメや漫画で観る事を勧めたい」

●さぬき「泣ける話ではあるけど、オチのおならが……最後までギャグのぶっこみに余念がないのはさすが作者だと思うね」

●たぬき「ところで、この話ではお父さんが思わずドキッとするようなセリフがあるんだぜ。『母の日は妻の日じゃないんだ』という」

●さぬき「確かに……!よく耳にする『母の日なのに旦那が私に何もしてくれない!』という愚痴は実はお門違いだったって事だよね。……まぁ、でもね。そういう感じで日頃から労いがないだので反感を買ってるタイプの人は、それなら自分の母には何かしているのかと言ったら結局はそうじゃなかったりするんだけどねw」

●たぬき「まる子のお父さんに関してはおばあちゃんに『茶こし』を贈ったエピソードはあるけどな。それで喜んでもらえなかったから、その後にはプレゼントそのものをしなくなった可能性も考えられるが」

●さぬき「あげる方からすれば、喜んでもらえない物をあげるってのも勿体ないし押し付けているみたいで違うなと感じてしまうよね。実際にまる子も、たまたまお母さんが既に持っているハンカチと同じ物を用意してしまって『喜んでもらえない物』と確信して泣いちゃったもんね」

●たぬき「貰う方は、『自分のためにわざわざ用意してくれた』っていう気持ちこそが嬉しいものなんだけどな。本来、相手が100%求めている物を選ぶって難しいさ。エスパーでもない限りは」

●さぬき「同じ柄のハンカチが2つあってもっていうのは誰からでも明らかで、事実を知ってしまったまる子の無念は想像を絶するよね。それまでは、あんなにワクワクしていたのにね……。これはお母さんの対応が本当に神。ハンカチを広げた瞬間だって思う事はあってもそれを表に出さないという配慮もあったし」

●たぬき「まる子のお母さんは根は優しくて、空気を読むタイプだしな」

●さぬき「お姉ちゃんが意外に無神経だったねwでもまぁ、まる子は結果的にお母さんとお揃いのハンカチを持つようになったという『絆』という意味でも得る物の方が多かったと思う」
 

●たぬき「そもそも、お母さんが既に持っていたハンカチの柄を知らずに選んだっていうのも、面白い話ではあるんだよな。親子で性格は全然違うけど、そういう部分の価値観は合っていたというさ」