書換 薮入りの時空間(2) | 晴耕雨読 -田野 登-

晴耕雨読 -田野 登-

大阪のマチを歩いてて、空を見上げる。モクモク沸き立つ雲。
そんなとき、空の片隅にみつけた高い空。透けた雲、そっと走る風。
ふとよぎる何かの予感。内なる小宇宙から外なる広い世界に向けて。

前回、「やぶ入や浪花を出て長柄川」を嚆矢に
長短和漢の十八首の俳詩からなる
与謝蕪村「春風馬堤曲」を軸に
「薮入りの時空間」を
探ることにすると記しました。

テキストとしますのは、*「与謝蕪村「春風馬堤曲」」です。
 *「与謝蕪村「春風馬堤曲」」
 :http://www.geocities.jp/sybrma/335buson.syunpuubatei.html


便宜的に18首の冒頭に算用数字を振り、
各首を章立てにして第1章から第18章として
構成を見ることから始めます。

 

   春 風 馬 堤 曲  十八首
①やぶ入や浪花を出て長柄川
②春風や堤長うして家遠し
③堤ヨリ下テ摘芳草  荊與蕀塞路
 荊蕀何妬情    裂裙且傷股
④溪流石點々   踏石撮香芹
 多謝水上石   敎儂不沾裙
⑤一軒の茶見世の柳老にけり
⑥茶店の老婆子儂を見て慇懃に
 無恙を賀し且儂が春衣を美ム
⑦店中有二客   能解江南語
 酒錢擲三緡   迎我讓榻去
⑧古驛三兩家猫兒妻を呼妻來らず
⑨呼雛籬外鷄   籬外草滿地
 雛飛欲越籬   籬高墮三四
⑩春艸路三叉中に捷徑あり我を迎ふ
⑪たんぽゝ花咲り三々五々五々は黄に
 三々は白し記得す去年此路よりす
⑫憐みとる蒲公莖短して乳を浥
⑬むかしむかししきりにおもふ慈母の恩
 慈母の懷袍別に春あり
⑭春あり成長して浪花にあり
 梅は白し浪花橋邊財主の家
 春情まなび得たり浪花風流
⑮郷を辭し弟に負く身三春
 本をわすれ末を取接木の梅
⑯故郷春深し行々て又行々
 楊柳長堤道漸くくだれり
⑰嬌首はじめて見る故園の家黄昏
 戸に倚る白髮の人弟を抱き我を
 待春又春
⑱君不見古人太祇が句
 藪入の寢るやひとりの親の側

 

8章の構成を
薮入り娘の道行に従って、
場面に沿って6段としました。
 1長柄川→2堤下→3茶店→
 4在所の農家→5春草路→6故郷の家

 

第1段:長柄川:①②
第2段:堤下:③④
第3段:茶店:⑤⑥⑦
第4段:在所の農家:⑧⑨
第5段:春草路:⑩⑪⑫⑬⑭⑮⑯
第6段:故郷の家:⑰⑱

 

以上の構成は、
渡船場に下り立ち
村の玄関先の茶店に立ち寄り、
生家におもむくまで道程を
時系列に従って整理したものです。
その間、この作品は

回想を交えながら薮入りの世界を
叙述しています。

 

究会代表
『大阪春秋』編集委員
大阪あそ歩公認ガイド 田野 登