江戸時代の漢文の勉強法として「復文」というのがあったそうです。
これは、「もとの文を訳す」「その訳された文を見て、自分が訳したもとの文を『復元』する」というものだったそうです。
この勉強法を英語にもあてはめることができるのではないかと、駿台予備校の先生が英語学習の本に書いて「いい方法ですね~」と評価されたことがあるんだとか。
その本は大人向けに書かれたもののようなのですが、中学生・高校生のみなさんでも使えるのではないでしょうか
たしかに、この方法はいろんなメリットがあるように思います。
実際に英文を復元してみようとなったら、単語の知識だけではなく、文法の知識が絶対必要になります。
しかもシンプルなやりかたなので、いつでもどこでもできますし、紙と鉛筆さえあればできるわけなので誰か相手が必要になるというわけでもありません。
さらに、知っているつもり、わかっているつもりなのに、実際になると出てこない単語だとか正しく書けない部分だとかがあるということになれば、自分の弱点を可視化することもできます
もうちょっと具体的なイメージがわきやすいようにするために、例を使いながら「復文」のやりかたを説明しますね
まず、紙と鉛筆を用意し、自分が覚えたい英文など、「復文」の題材となる英文も用意します。
そんなに長くない英文がおすすめです(あまりにも長いときちんと復元できる確率がどんどん下がることになるので、やる気がどんどん落ちてしまいます)。
中学生・高校生のみなさんであれば、教科書や参考書に載っている例文を題材にするのがいいんじゃないでしょうか?
それがいやということであれば、リーディングなどの本文から2つか3つ選んでそれを題材にするというのでもいいでしょう。
もし、リーディングの本文から選ぶということであれば、簡単すぎず難しすぎずのほどよいレベルのものを自分で考えて選ぶようにしましょうね
たとえば、題材の英文がこれだったとします。
Few men have come to share housework equally with women.
(もちろんこれより短い英文を題材としてもOKですよ!)
復文のためにまずは訳します。
どうしてもわからないという場合は、辞書を使いながらでいいですから、自分の力で訳していきましょう
この文の主語はfew menですが、fewは「ほとんど~ない」という否定の意味をあらわしますから、「ほとんどの男の人は~しない」とか「~という男の人はほとんどいない」とかという訳になるはずですね?
そして、動詞はhave come to shareになりますが、have comeの部分は現在完了形ですから、ここでは「~した、~してしまった」という意味になるでしょう。
そして〈come to+動詞の原形〉で「~するようになる」で、shareは「シェアする」という言いかたも日本語ではしますが辞書をひくと「共有する」「分かち合う」とありますから、「分かち合う」が一番ピッタリとくるでしょう。
よって、日本語訳として
「ほとんどの男の人は、女の人と平等に家事を分かち合うようになっていない」
「女の人と平等に家事を分かち合うようになったという男の人はほとんどいない」
などのようになるでしょう。
その日本語訳を紙に書いていきます。
ここからがメインとなりますが、次の日など少し時間をおいて、自分が紙に書いておいた日本語訳を見ながら、その日本語訳を英語になおしていきます。
もちろん、もとの英文を見るなんてことをしちゃダメですよ
たとえば、次のような英文になったとしましょう。
Many men don't share housework equally with women.
英語に『復元』が終わったら、答え合わせとしてもとの英文と比べてみて、違っているところを赤ペンなどで修正していきます。
このとき、違っていたところについて、「なぜもとの英文ではこのように書いているのだろう」ということを考え、調べたり理解したりるように必ずしましょう
これが一番大切な過程じゃないかと思うぐらいです。
さっきの例でいえば、たとえば主語の部分がちがいます。
もともとの意味では「ほとんどの男の人はしないんだ」ということを伝えたかったはずです。
Few menとすれば、その意味あいを一発で伝えることができます
しかも、Many men don't …という書きかただと「多くの男の人は~しない」という意味になりますが、それだと「多くの男の人は~しない(けれども、~するという男の人ももちろん多くいる)」という解釈もできてしまいます(つまり、「~する」という人が多くいる可能性を打ち消す表現にならない)
few ~という表現を使えば、そんなよけいな解釈が入る余地もありません。
さらに、fewには「ほとんど~ない」と否定の意味がすでにこめられていますから、don'tを使わなくてもよくなりますね。
そして、もともとの意味では「分かち合うようになった」とありましたから、「だんだんとそのようになっていった」という変化のニュアンスも出していかないといけないので、だからcome toという語句が必要だというわけなんですね。
さらに「~ようになった」とあります。
これは単なる過去形というわけではなく、「今や女の人と家事を分かち合うようになっていった」と現在のことともかかわりがあるニュアンスを含んでいるはずなので、現在完了形が適切ということになります。
だから、動詞部分にhave come toというのが必要となるわけです
こうやって復文をすることで、「なんでここでは単数(または複数)としているんだろう」、「なんでここではこの時制にしているんだろう」、「なんでこの単語が使われるんだろう」、などなど、いろんなことがわかるようになっていきます。
また、実際に自分で書いたわけなので、単語のつづりが正確に書けているかを見ることもできますし、英文の構造を丁寧に把握することも求められます。
リーディングの素材からとってきたという場合だったら、文章の書き手の意図を意識するようにもなるでしょう(「こういうことを言いたかったから、だからこの時制にした、この単語を使ったんだな」など)。
もちろん、これを自力でやるのは難しいという人も多いかもしれませんから、学校や塾の先生の手助けが必要かもしれません。
(復文した文ともともとの文を比べてみて、「なんでこのように書かないといけないのだろう」というのをいくら調べて考えてもわからない、っていうのはじゅうぶん考えられますので)
でも、やればやるだけ、自分の力になりそうな気がしませんか?
気が向いたときでもいいので、ぜひ一度ためしてみてください!