鉱物の顕微鏡写真23 ―ブラウン鉱―
顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真23
―ブラウン鉱―
産地:Kajilidong mine, Jhabua Manganese belt, Jhabua district, Madhya
Pradiesh, India.(非売品)
Braunite ブラウン鉱
[組成] Mn2+Mn3+6[O8|SiO4]
[結晶・形態] 正方晶系.自形結晶は八面体に近い正方複錐・
錐台・淡柱状など.
これらの聚状・羽毛状・塊状集合などになる.
結晶は脆い.
[色] 灰黒色・褐黒色・鋼灰色・黒色など.錆びると青色味
を帯びることがある.
[光沢] 金属光沢~亜金属光沢.不透明.
[モース硬度] 6~6.5
[比重] 4.72~4.83
[劈開] {112}一方向に完全.
[条痕] 黒色.
[名称] ドイツの地質学者,大臣の
Wilhelm von Braun(1790-1872)
に因む.
次はブラウン鉱にしようと思って,いろいろ海外産の鉱物を大阪ショーなどで探していました.「案外無い」と云われ,言葉通り会場では見つけられませんでした.
手持ちの古い標本の中に2つ海外のブラウン鉱があったため,結晶が小さいですがこれで代用しました.
筆者がブラウン鉱を初めて採集したのは学生のころで,「まだ行ってへんの?」って言われて行った吉兆鉱山の護法谷鉱床でした.赤色チャート中に
小さなレンズ状で入っているもので,単体のものなら気づかなかっただろう.
さて,上の標本は元のラベルに「ウィンチ閃石Winchite」と記載されたもので,のちに修正を加えました.
当地ではウィンチ閃石は産していないそうで,青色や青紫色・赤紫色になった角閃石はマンガンの多い苦土アルヴェゾン閃石(Magnesioarfvedsonite)と
のことだった.
顕微鏡写真.周りの白いところは石英.石英部は母岩との境界当たりに,黒色の塊状ブラウン鉱がレンズ状をなして挟まっている.石英の荒い部分に粒状のブラウン鉱がみられますが,かなり小さいものです.
もう一つの海外産は,
産地:Rakten, Rappland, Sweden.(K社で購入―非売品ー)
スウェーデン産のブラウン鉱です.
スカルンのような母岩に入っているもので,見た目黒色塊状でパッとしませんが,黒色部がブラウン鉱です.
結晶をルーペで探しましたが,粒状のブラウン鉱が少し見られる程度でした.
黒色粒状部がブラウン鉱です.
肉眼で鑑賞に耐えるものはやはり国産ものしか
出回っていないようで,国産ものを数点掲載します.
長崎県長崎市戸根鉱山のブラウン鉱です.学生のころの採集品です.(非売品) 中央の大きな結晶は端から端まで約5.5mm.初めて行ったときは博多から高速バスで長崎まで行き,路線バスを乗り継いで行っていました.
長崎変成帯の結晶片岩中の層状マンガン鉱床でブラウン鉱のほかホランド鉱やアルデンヌ石・サーサス石・紅簾石などの鉱物を産しました.白色―淡褐色部は石英です.
産地:鹿児島県大島郡大和村大和鉱山のブラウン鉱.(知人より土産として頂戴したものです)(非売品)
最近になってヴァナジウム鉱物が多産して話題になっていた大和鉱山のブラウン鉱です.
「刻んだら何かでてくるかも?」
と言われましたが,標本箱に丁度の大きさなのでブラウン鉱の標本にしました.本邦で始めに見つかったのが大和鉱山で船を乗り継いで行ったときには,なぜか見つけられなかった.
ばら輝石とのちに桃井石榴石となる,緑色の石榴石を沢筋で少し見たのみだった.あとはほとんど観光で,半日遊んでとんぼ返りだった.
黒色部がブラウン鉱で,白色の鉱物の脈で切っています.脈には赤色の粒や黄色の染みのようなものがみられますが,細かい鉱物なので鑑定していません.
徳島県徳島市眉山のブラウン鉱です.(AO氏の石の花で購入,京都科学標本で入手したとのこと―非売品―)
図鑑などで掲載のある有名な産地の標本ですが,流通量が少ないのか,過去数回しか見たことがありませんでした.
三波川変成帯の紅簾石石英片岩中に脈をなすブラウン鉱で石英と共存する様がはっきりと観察できるイイ標本です.
徳島は通り過ぎることが多く,この石を産する眉山も高速道から眺める山になっています.
産地:京都府京都市右京区京北上弓削町足谷鉱山のブラウン鉱です.(購入したのか,採集したものかは覚えてません ―非売品―)
赤色の塊状チャート中に挟まるブラウン鉱で,赤と黒のコントラストが美しい標本です.現場は行ったことがありますが,写真程度でした.石英と共存することが多いのですが,こちらは,石英との間に褐色のカリオピライトを挟んでいます.
産地:京都府南丹市園部町船岡 大和谷鉱山のブラウン鉱です.鉱山名は大阪管区鉱区一覧に掲載されていた名前を使っています.コレクター間では船岡鉱山の名前が定着しています.丹波Ⅱ型地層群の黒鉱鉱床ですが,最近になってブラウン鉱の産出が確認されました.
赤褐色―茶褐色の見た目あまりきれいでない塊状チャート中に小さなレンズ状をなすもので,橙色のばら輝石系鉱物を伴っているらしいのですが,上の標本には付いていませんでした.
赤褐色―茶褐色の部分が母岩のチャート.艶の無い黒色部が酸化被膜.