■まるごと博物館た～い! NPO法人大牟田・荒尾炭鉱のまちファンクラブ ブログ
福岡県大牟田市・熊本県荒尾市にひろがる旧三池炭鉱を中心とする「炭鉱のまちの風景と心象」を次世代に継承する『NPO法人 大牟田・荒尾炭鉱のまちファンクラブ』です。日本の近代産業の変遷とその遺産、NPO活動のことなど ココからさまざなことを発信していきます！
2012-05-04 09:40:43
大牟田市四山配水池
テーマ：■まち今昔中野です。
大牟田市企業局の協力で、四山の配水池を見学してきました。ここは大正10年に給水開始をした大牟田市初の上水道の配水池で、今年三月まで使用されていました。ありあけ浄水場の稼働にともない、現在では水道用には使用されていなということで、見学が可能になったものです。
大牟田市の水道は明治末期から大正初めにかけての鉱工業発展と人口の増加、それにともなう飲料に適する用水の不足を背景に、構想計画が行われました。
明治22年で11,295だった人口が、大正9年には77,822人と、およそ30年間で7倍になり、大正6年には市制を施行しています。一方で用水事情は悪化し、湧水量は減少するとともに、汚水雑排水が浅井戸に浸透するなどしました。大正七年の調査で、市内2916の井戸のうち煮沸が必要なものも含めて飲料に適するのは487件、10,529戸のうち自己所有の井戸を使用するのはわずか166戸にすぎなかったそうです。（『大牟田市上水道誌』p.6-9）
水道建設のための調査が開始されたのが、明治40年のこと。大牟田市内には十分な水源がないということで、現在の荒尾市清里の地下水が水源に定められました。そこから導水して、さらに大牟田市内に配水するため四山の山頂に設けられたのが、今回見学した四山第一配水池です。
昭和になってつくられた第二配水池は、四山神社の裏手にあって分かりやすいのですが、そこから北の頂を望むと、小さく見ることができます。
配水池の本体は地表から深さ約４ｍ掘り込まれ、蓋の上部は土盛で覆われています。池の中央には南北に貫く人道が設けられており、ここから内部を見学することができました。上の写真は人道の入り口です。当時の記録によると扁額には計画時の市長の巌谷忠順の揮毫で「潜龍窟」と彫られているそうです。
反対側の人道入口には同様に「水徳永享」と彫られているそうです。
入口を入ると、人道の天井はヴォールトで、左右にもアーチが見えます。
大正13年に書かれた『大牟田市上水道誌』には図面が折り込まれており、それによると、配水池の内寸は横113ft(34.4m)、縦95.2ft(29.1m)となっています。人道によって左右２つに分けられた配水池は、五枚の流動壁で区分され上部はコンクリートによるヴォールト屋根が敷設されています。
左側水中の壁の下部にアーチが見えます。ここで隣の区画とつながっています。
奥に見える丸い窪みのようなものは、当初は採光のための鎧窓がはまっていたそうです。
池の上部と人道の上部には合計42カ所の空気抜きが設けられています。
地表には、こんな感じで通気口が立ち上がっています。装飾も施されて、かなり精巧なつくりです。
配水池の裏手には、小さな建物が残されていました。図面によると計量器室とのことです。
室内の天井をみると、鉄筋コンクリートのようです。
しかしモルタルの剝れた柱には煉瓦が見えますので、柱や壁は煉瓦、屋根は鉄筋コンクリートの混構造だったのでしょうか。
大牟田発展の記念碑的な施設であり、また技術史的に見ても大正時代のコンクリート構造物は少なく、割合に先駆的な事例のようです。
配水池の構造は無筋コンクリートだそうですが、ＲＣで一般的な柱梁ではなく、石造同様のアーチやヴォールトですので、引っ張り力はあまり考えなくてよく、当然鉄筋の錆による破壊も起こりませんので、耐久性はかなり高いようです。
今後は、どのような扱いになるのかまだ決定していないようですが、個人的には末永く保存してもらいたいと思います。
略年表（『大牟田市上水道誌』より。工事の着工と竣工は「大牟田市水道記念碑」より）
明治40年05月13日 大牟田町助役岩井芳三郎、水道調査委員：野口忠太郎、坂井真澄、福井福太郎、岩田謙三郎、小岱山で水源調査を行う
明治43年08月---- 熊本県玉名郡清里村大字水野字下橋口に於て三井三池炭礦石炭試錐を開始
大正元年09月---- 試錐を了し自然湧水甚だしく此際該地方地下水豊富なることを知る
大正06年08月18日 水道敷設目論見書市会議決す
大正07年07月08日 水道敷設の儀内務大臣に稟請す
大正08年02月19日 大正八年度水道工事費歳入出予算市会議決
大正08年03月14日 内務大臣より水道敷設の認可
大正08年04月---- 水道敷設着工
大正09年05月29日 配水地掘削工事開始
大正09年08月10日 清里村水源地鑿井工事着手
大正09年11月16日 清里村より送水管の敷設に着手
大正10年06月---- 各戸引込工事を開始
大正10年07月31日 水源地まで送電を開始。ポンプの運転開始
大正10年08月01日 午後４時４５分、初めて配水池に流入
大正10年08月05日 大牟田市五月橋付近で放水試験を行う
大正11年10月27日 笹林公園で通水式を挙行
大正14年03月---- 水道敷設竣工
参考文献
大牟田市(1966)『大牟田市史 中巻』 p.697-739
「水道局四山配水池」『大牟田の宝物100選』(2002) p.70-71
大牟田市役所水道課(1924)『大牟田市上水道誌』
大牟田市企業局の協力で、四山の配水池を見学してきました。ここは大正10年に給水開始をした大牟田市初の上水道の配水池で、今年三月まで使用されていました。ありあけ浄水場の稼働にともない、現在では水道用には使用されていなということで、見学が可能になったものです。
大牟田市の水道は明治末期から大正初めにかけての鉱工業発展と人口の増加、それにともなう飲料に適する用水の不足を背景に、構想計画が行われました。
明治22年で11,295だった人口が、大正9年には77,822人と、およそ30年間で7倍になり、大正6年には市制を施行しています。一方で用水事情は悪化し、湧水量は減少するとともに、汚水雑排水が浅井戸に浸透するなどしました。大正七年の調査で、市内2916の井戸のうち煮沸が必要なものも含めて飲料に適するのは487件、10,529戸のうち自己所有の井戸を使用するのはわずか166戸にすぎなかったそうです。（『大牟田市上水道誌』p.6-9）
水道建設のための調査が開始されたのが、明治40年のこと。大牟田市内には十分な水源がないということで、現在の荒尾市清里の地下水が水源に定められました。そこから導水して、さらに大牟田市内に配水するため四山の山頂に設けられたのが、今回見学した四山第一配水池です。
昭和になってつくられた第二配水池は、四山神社の裏手にあって分かりやすいのですが、そこから北の頂を望むと、小さく見ることができます。
配水池の本体は地表から深さ約４ｍ掘り込まれ、蓋の上部は土盛で覆われています。池の中央には南北に貫く人道が設けられており、ここから内部を見学することができました。上の写真は人道の入り口です。当時の記録によると扁額には計画時の市長の巌谷忠順の揮毫で「潜龍窟」と彫られているそうです。
反対側の人道入口には同様に「水徳永享」と彫られているそうです。
入口を入ると、人道の天井はヴォールトで、左右にもアーチが見えます。
大正13年に書かれた『大牟田市上水道誌』には図面が折り込まれており、それによると、配水池の内寸は横113ft(34.4m)、縦95.2ft(29.1m)となっています。人道によって左右２つに分けられた配水池は、五枚の流動壁で区分され上部はコンクリートによるヴォールト屋根が敷設されています。
左側水中の壁の下部にアーチが見えます。ここで隣の区画とつながっています。
奥に見える丸い窪みのようなものは、当初は採光のための鎧窓がはまっていたそうです。
池の上部と人道の上部には合計42カ所の空気抜きが設けられています。
地表には、こんな感じで通気口が立ち上がっています。装飾も施されて、かなり精巧なつくりです。
配水池の裏手には、小さな建物が残されていました。図面によると計量器室とのことです。
室内の天井をみると、鉄筋コンクリートのようです。
しかしモルタルの剝れた柱には煉瓦が見えますので、柱や壁は煉瓦、屋根は鉄筋コンクリートの混構造だったのでしょうか。
大牟田発展の記念碑的な施設であり、また技術史的に見ても大正時代のコンクリート構造物は少なく、割合に先駆的な事例のようです。
配水池の構造は無筋コンクリートだそうですが、ＲＣで一般的な柱梁ではなく、石造同様のアーチやヴォールトですので、引っ張り力はあまり考えなくてよく、当然鉄筋の錆による破壊も起こりませんので、耐久性はかなり高いようです。
今後は、どのような扱いになるのかまだ決定していないようですが、個人的には末永く保存してもらいたいと思います。
略年表（『大牟田市上水道誌』より。工事の着工と竣工は「大牟田市水道記念碑」より）
明治40年05月13日 大牟田町助役岩井芳三郎、水道調査委員：野口忠太郎、坂井真澄、福井福太郎、岩田謙三郎、小岱山で水源調査を行う
明治43年08月---- 熊本県玉名郡清里村大字水野字下橋口に於て三井三池炭礦石炭試錐を開始
大正元年09月---- 試錐を了し自然湧水甚だしく此際該地方地下水豊富なることを知る
大正06年08月18日 水道敷設目論見書市会議決す
大正07年07月08日 水道敷設の儀内務大臣に稟請す
大正08年02月19日 大正八年度水道工事費歳入出予算市会議決
大正08年03月14日 内務大臣より水道敷設の認可
大正08年04月---- 水道敷設着工
大正09年05月29日 配水地掘削工事開始
大正09年08月10日 清里村水源地鑿井工事着手
大正09年11月16日 清里村より送水管の敷設に着手
大正10年06月---- 各戸引込工事を開始
大正10年07月31日 水源地まで送電を開始。ポンプの運転開始
大正10年08月01日 午後４時４５分、初めて配水池に流入
大正10年08月05日 大牟田市五月橋付近で放水試験を行う
大正11年10月27日 笹林公園で通水式を挙行
大正14年03月---- 水道敷設竣工
参考文献
大牟田市(1966)『大牟田市史 中巻』 p.697-739
「水道局四山配水池」『大牟田の宝物100選』(2002) p.70-71
大牟田市役所水道課(1924)『大牟田市上水道誌』
