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●花咲く港(1943年) 監督:木下恵介

主な出演:小沢栄太郎 上原謙 水戸光子 笠智衆 東野英治郎 東山千栄子 坂本武 槇芙佐子 村瀬幸子 大坂志郎

 

 

木下恵介の初監督作品。

 

舞台は鹿児島県のとある離島。かつてこの島に造船所の建設を計画した人物がいた。ある日突然、一通の手紙と共に、その人物の息子兄妹を名乗るペテン師2人(小沢・上原)がやって来た。父の遺志を継ぎ是非とも造船業を立ち上げたいということなのだが、実は、村人から資金を集め、適当なところでトンヅラしようという魂胆だ。

 

 

集まったお金が想像以上に莫大な額となったことにビビる2人だが、島の人たちの善意に心打たれ、船の建造が本格化。折しも始まった日米開戦を機に、造船にかけた夢と情熱は否が応でも盛り上がる。

果たして、船は見事に完成するが、進水式の晴れの日に2人のペテン師は連絡船にてコッソリと逃亡。長崎での詐欺事件がバレ、船中で御用。お縄にした巡査も、「コイツラ良いことをしたのか、悪人なのか」と複雑な表情を見せる。

 

国策映画なのだがコメディとして上手くまとめられた作品。なぜか東北弁の上原謙さんの演技が愉快。

留吉(上原)とお春(水戸)が手漕ぎ船にのるシーンでは、水戸光子さんの笑顔が実に美しい。

●カルメン純情す(1952年) 監督:木下恵介

主な出演:高峰秀子 小林トシ子 若原雅夫 淡島千景 斎藤達夫 村瀬幸子 東山千栄子 三好栄子 北原三枝 日守新一 坂本武 堺駿二 望月優子 多々良純  
 

 

ご存じ、『カルメン故郷に帰る』(1951年)の続編。

が、しかし・・・

前作と同様、ストリッパーのカルメン(高峰)とその友人・朱美(小林)が主人公であるが、全体のトーンやイメージが違いすぎるため、知らずに見ると期待外れの向きも。

 

さて、そのストーリーだが、浅草のストリッパーとして日々活躍するカルメンのもとに、男に捨てられ赤ん坊を抱えた朱美がやってきた。「この子のためにも頑張らなければ」と奮起したカルメンは、変態?芸術家・須藤(若原)のモデルになると同時に、一目惚れしてしまう。
しかしこの須藤という男は女癖が悪く、レイ子(北原)との間に未婚の子をもうけているうえに、没落資産家の娘・千鳥(淡島)との結婚が決まっているから話は複雑に。

そんなこんなで須藤や千鳥と関わるなか、カルメンは千鳥の母であり代議士候補の熊子夫人から「おなごのための講演会」に呼ばれ、選挙演説を手伝うことに。

 


 

前作の「故郷に帰る」は、日本映画初のカラー作品であることと、高峰秀子さんがストリッパー役というインパクトもさることながら、抒情的な内容とテーマ曲の「蕎麦の花咲く」とのマッチングにより、たいへん芸術的で格調の高い作品に仕上がっていた。

 

対し、続編の「純情す」は、単なるドタバタ喜劇であり、評価が大きく分かれるところ。木下監督の同じシリーズ作品としては観ないほうがよろしいかも?(全くの別モノ)

とは言え、高峰秀子さんファンは一見の価値がある作品だと思う。

 

須藤役の若原雅夫さんは、『長崎の鐘』(1950年)の永井医師役で有名。

熊子夫人役の三好栄子さんは、黒澤明監督の『野良犬』(1949年)でハルミの母親役を演じた。

●秘話 ノルマントン號事件 仮面の舞踏(1943年) 監督:佐々木啓祐

主な出演:佐分利信 徳大寺伸 水戸光子 桑野通子 斎藤達夫 葛城文子 河野敏子 葉山正雄 三井秀男 大久保晴子 藤野秀夫 吉川満子 小沢栄太郎

 


 

日本人乗客25名が犠牲となった明治19年のノルマントン号事件をきっかけに、イギリスとの不平等条約による領事裁判権への不満が民衆の間で一気に爆発した。

 

事件の生き残りである中国人料理人・朱源章?の口を封じんと誘拐したイギリス人勢を追うのが、剣術士として巷に名を馳せる潤之助(徳大寺)。朱と共に連れ去れた舞踏会の華・松島かほるが銃撃戦に巻き込まれ命を落とすことに・・・。

汽車を馬で追うシーンは冒険活劇的な面白さもあり、やはり徳大寺伸さんはかっこいい!


領事裁判権の撤廃を訴える司法官の精一郎(佐分利)が、朱の証言のもとにノルマントン号船長の有罪を立証しようと尽力する。

さらにイギリス人との抗争で死刑判決を受けた潤之助だが、真の正義を訴える精一郎の弁明が一番の見どころだろう。

なお劇中では、ノルマントン号船長のドレイクに禁固刑3年が下されるが、史実ではわずか3ヵ月だったとか?

安政以来の領事裁判権は、本事件の8年後の明治27年に撤廃された。

 


桑野通子さんと水戸光子さんのダブルヒロインが嬉しい。

 

製作年から戦時下の国策映画であることが分かる。ラストは本来のストーリーから一変し、日本陸軍のマレー進行によるイギリス軍殲滅の映像が流れる。

 

『仮面の舞踏』とは的を射た実に良いタイトル。鹿鳴館で催される仮面舞踏会に興じ、欧米列強の非道かつ理不尽な蛮行を仮面で隠して見て見ぬふりをする政治家や貴族の連中を指しているのだろう。

 

精一郎の妹・敏江役の河野敏子さんは後の井川邦子さん。これがデビュー作かな?

そしてクレジットに小沢栄太郎さんの名前が連ねられているが、それらしい登場人物があるものの、誰が小沢さんなのか判定困難。

また、ドレイクはじめ英国領事の役を日本人俳優が演じているのが面白い。1942年製作の間諜未だ死せず』でもそうだった。

朱と緑 前篇 朱の巻・後篇 緑の巻(1937年) 監督:島津保次郎

主な出演:上原謙 高杉早苗 高峰三枝子 東日出子 奈良真養 岡村文子 佐分利信 河村黎吉

 


とにかくストーリーがややこしすぎるのと特に面白くも感動もなく、感想を書く気にもなれない。

VHSテープのパッケージ写真を貼っておいたので、それを見て内容を確認してほしい。

 

原作がそうなのだから・・・と言ってしまえばそれまでだが、まず、瀬川(佐分利)の千晶(高杉)宅への侵入事件のエピソードは不要。これ自体、全体のストーリーを左右するものではないし、佐分利伸さんをワンチャン・ストーカー男にキャスティングするのはどうかと思う。

 

それと、婦人雑誌社長の豊子(東)。芳夫(上原)が姉のように慕い、本人も芳夫に恋心があるが、いかんせん箸にも棒にも掛からぬババアなのだから、そこに色恋が絡むだけで気色悪い。豊子役の東日出子さんに罪はないが・・・。

 

さらに言うと、千晶役の高杉早苗さん。お嬢様女優なのだろうけど立ち姿、歩き姿、表情ともに美しくなく、演技もヘタクソであまり好きになれない。(単なる個人的な好みの問題だが)

 

一方、良かったと思うのは、雪枝役の高峰三枝子さん。瀬川にフラれ、やけくそになって競馬にはまり、人のお金を盗んでまでつぎ込むシーンが何ともシュール。しかし、この役柄は高峰三枝子さんには似合わない。

 

いずれにせよ、河村黎吉さんと岡村文子さん以外は、全体的にキャスティングミスが目立つ作品。

 

「前篇 朱の巻・後篇 緑の巻」と大仰な構えだが、もっと簡潔にまとめると面白くなる。

気まぐれわがまま令嬢の千晶を取り巻く面々の欲と欲のぶつかり合いをダイレクトに描き、結局は誰も何1つ得られないといった顛末で脚本を書いたほうがベターかも?

87年も前の映画にどうのこうの文句をつける私自身も、そうとうにおかしなヤツだが、片岡鉄兵氏の原作はかなり素晴らしかったのだろう。(一応、フォローのつもり)

●兄とその妹(1939年) 監督:島津保次郎

主な出演:佐分利信 桑野通子 三宅邦子 笠智衆 坂本武 河村黎吉 小林十九二

 

 

間宮啓介(佐分)は妻・あき子(三宅)と妹・文子(桑野)との3人暮らし。趣味の囲碁で重役のお相手をする間宮だが、同僚等からは「出世のために取り入っている」と陰口を叩かれる。間宮にはそんな野望は微塵もない。

 

そんななか、貿易会社で秘書を勤める文子が、間宮の会社の重役(坂本)の甥である道夫から見初められる。道夫は申し分のない好青年なのだが、かねてからの囲碁の一件もあり、文子はますます兄が働きづらくなるのではと縁談を断わる。

さらに、会社の人事を巡る生田(河村)とのトラブルを機に、間宮はきっぱりと辞表を提出する。まさしく、似た者の兄妹。

 

半ば自棄になった間宮だが、旧友の内海(笠)の会社に歓迎され、妻と妹を伴い大陸へと旅立つことに。飛び立った飛行機の車輪にくっつく草片を見た間宮が「大陸まで一緒に来てしっかり根づいてくれ!」と言う。この言葉に、新たな人生の希望が示されている。

 

ファッション雑誌から出てきたようなスタイルで通勤の満員電車に乗る文子。この作品では、せっかくの桑野通子さんのファッションが映像的に強調されていないのが惜しまれる。

●戸田家の兄妹(1941年) 監督:小津安二郎

主な出演:藤野秀夫 葛城文子 吉川満子 斉藤達夫 三宅邦子 佐分利信 高峰三枝子 坪内美子 近衛敏明 葉山正雄 飯田蝶子 桑野通子 河村黎吉 岡村文子 笠智衆 坂本武 森川まさみ

 

 

父(藤野)の死により、急きょ借財整理のため家財産を処分することとなった戸田家。残された母(葛城)と未婚の三女・節子(高峰)の2人は、長男夫婦斎藤・三宅)の家に身を寄せるが、何となく邪険にされ居心地が悪い。次いで長女の千鶴(吉川)のところに行くものの、そこでも同じ様な対応に。さらに次女夫婦(坪内・近衛)に相談し、鵠沼の別荘に住むことになるのだが・・・。

 

転々と居場所をたらい回しにされる展開は、後の小津作品『東京物語』にも受け継がれる?

 


次男の昌二郎(佐分利)はというと、母と節子のことを心配しながらも天津へと旅立った。

父の一周忌で帰国した際、2人の境遇を目の当たりにして「これだけ立派な子供たちが揃っていながら何たるザマか!食うや食わずの人間だって親子の仲はもっと温かいはず」と、兄妹たちの不人情を厳しく咎める。さらには、「もう、あんたたちには任せられん!」と母と節子を天津へと連れて行くことを決意する。

 

最後は、節子の勧めで善き女友達の時子(桑野)と昌二郎との縁談がまとまる。

 

Wikipediaでこんな画像が掲載されていたが、劇中で2人が直接絡むシーンはない。時子が鵠沼に訪ねて来た時と和服の柄が同じだから、最後にこのようなシーンが撮影されたようだが、本編でカットされたのかもしれない。

 

●花(1941年) 監督:吉村公三郎

主な出演:田中絹代 上原謙 桑野通子 岡村文子 原保美 吉川満子 飯田蝶子 川崎弘子 笠智衆 近衛敏明 小林十九二 坪内美子 森川まさみ

 


 

父が亡くなり華道・華山流?の家元を継いだ梢(田中)。山岳事故で共に弟(原)を亡くしたことで歯科医・慎一(上原)と親しくなり、やがて求婚を受ける。一方、自分の息子を失った母親同志(岡村・吉川)はいがみ合うことに。

そこに前々から梢をものにせんと狙っていた花屋(近衛)は、弟の母であり料亭女将(岡村)との間で密約を交わす。

梢に自身の野望を打ち明けるも、悉くフラれた花屋は、華山流を追い出されたかつての弟子と手を組み、ある事ない事を書きつらねた怪文書を現・お弟子さんたちに拡散する。

これに激怒した料亭女将は見事な手のひら返しで、慎一の母親(吉川)に頭を下げても梢との縁談を認めてもらいたいと決心する。

 


 

だいたいそんなストーリーなのだが、慎一の妹・愛子役が桑野通子さん。『愛染かつら』と同様、梢と慎一の善き理解者となって2人を支える(愛染かつらでは津村・上原の婚約者役だか身を引く)。

慎一の友人の笠智衆さんの役どころも良い。最後まで煮え切らない慎一に「辛いことばかりの人生だが、気持ちの持ちようによってはいくらでも楽しくできる」と説得する。

 


 

この作品はテーマが「花」だけに、至る所に生け花が効果的に使われ、また華人たちの和装の着こなしや所作が素晴らしい。恋愛映画に芸術的ファクターがプラスされた秀作。現代の映画製作者の感性や女優陣では、リメイクなど到底不可能だと思う。

 

しかしながら、1人洋装の桑野通子さんはより美しさが引き立つ、別格の「花」。

 


何をつくったのかと言うと、BMW旧タイプのスペアイグニッションキーなのだ。

 

 

元は鉄板プレスのつまみにロッドが結合した至ってシンプルなもの。

 

万が一の紛失でこれが役立つ場合もあるが、あまりにも素っ気ないビジュアルなので通常はわざわざ好んで使わないだろう。

それを、レギュラーでの使用にも堪えるようデザインに凝ってみたというわけだ。

5mmの真鍮板をつまみの形状に裁断して両側から貼り付けただけだが、真鍮板をちょうど良い形状にカットするのも大変だし、左右どんぴしゃりの位置で貼り付けるのも難しい。

しかし、こんなのはヒマな人がやることだと思う。

別にヒマなわけではないが、浮世の憂さ晴らしといったところか?


使ったスペアキーはステンレス製のもの。多少削ったり研磨したりするから、錆の発生に考慮してのこと。

紐を通す穴を開けても良かったが、今回は真鍮の素材感を楽しみたいのでプレーンな形状とした。

 

デザインイメージは、TiffanyのBeans Lighterかな?

時間の経過とともに表面が薄っすら腐食し、真鍮特有の色合いが出てくる。

 


余談だが、旧タイプのキーを失くした人が困り果て、近くにあった牛丼の吉野家で割り箸をもらい、これをその場で削って即席のスペアキーをつくったという話を聞いたことがある。

●按摩と女(1938年) 監督:清水宏

主な出演:徳大寺伸 高峰三枝子 佐分利信 日守新一 爆弾小僧 坂本武

 


按摩の徳市(徳大寺)と福一(日守)は、盲目ながら周囲の様子が手に取るように分かる勘の持ち主。むしろ周囲の識別・認知能力は健常者以上の繊細さを持つ。温泉宿・鯨屋にて東京から来た女・美千穂(高峰)に呼ばれた徳市だが、美千穂にワケアリの臭いを感じつつも惚れてしまう。そんなとき、鯨屋で客の金銭が盗まれる事件が起こった。徳市は美千穂が犯人に違いないと思い込む。

 

 

この作品は、徳大寺伸さんと日守新一さんのめくらの演技が素晴らしい。いまと昔では障がい者に対する感覚がかなり違うと思うが、「めくら=障がい」というデリケートな要素を1つの個性としてポジティブに描いている点が実に良い。とりわけラストの場面、馬車で去る美千穂の様子を耳と肌で必死に感じとろうとする徳市の姿に圧巻される。

 

佐分利信さんが演じる大村も重要な役ではあるが、美千穂と徳市との展開だけでは不自然だし間が持たないから、つなぎ的な存在と言えなくもない。いずれにせよ、徳大寺伸さんの迫真の演技の前でやや霞んでしまった感がある。

花籠の歌』での役もそうだったが、徳大寺伸さんは特殊な役柄に長けている。役づくりに関してはずい分研究する人だと思う。戦前はモダンなイケメン俳優の代表格だが、戦後は時代劇が多かったようだ。

 

●お絹と番頭(1940年) 監督:野村浩将

主な出演:田中絹代 上原謙 藤野秀夫 斉藤達夫 河村黎吉 三宅邦子 小林十九二 坪内美子 阿部正三郎 三井秀男 葉山正雄

 


 

足袋商店の番頭・幸どん(上原)はイケメン&秀才なのだが、店の一人娘であるお絹(田中)とはそりが合わず、何かと衝突する。しかし実は、「喧嘩するほど仲がいい」というやつだ。

そんなある日、地代の問題がきっかけで地主娘(坪内)と幸どんとの間に縁談がもち上がる。幾多の縁談を断わり続けた地主の娘も「幸どんならOKよ」と。

この幸どんの縁談には、ボート屋の娘(三宅)でさえ自分との縁談が知らぬ間に進んでいるものと勘違いをする。

それほど幸どんはモテモテなのだ。

だが、事情を察したボート屋の娘の取り計らいでお絹は説得され、幸どんへの素直な気持ちが芽生えていく。

 

ボート屋の娘役の三宅邦子さんと地主の娘役の坪内美子さん

 

野村浩将監督は、『人妻椿』や『愛染かつら』の監督だが、「与太者シリーズ」の2作をはじめ今回のようなコメディものも上手い。同年の『絹代の初戀』も秀作だった。

 

この映画には小型のレジャーボートを売る店が出てくる。別にボートが珍しいわけではないが、戦前はこんな商売が普通にあったことを知った。