2024.6.26 雑居家族(1956年) |

雑居家族(1956年) 監督:久松静児

主な出演:轟夕起子 織田政雄 新珠三千代 伊藤雄之助 左幸子 田中絹代 杉幸彦 片桐安芳 二木てるみ 宍戸錠 飯田蝶子 利根はる恵 安井昌二 青山恭二 福田トヨ 

 


 

壷井栄の同名小説を映画化。主人公の女流作家が小豆島の出身という設定だから、壷井氏の自叙伝的な作品なのだろう。安江(轟)と文吉(織田)夫婦の間には子供がいないが、次々と他所の子を引き取り、3人の子を養う。

そもそも安江と文吉は苗字が違うし、3人の子供たちもそれぞれ苗字がバラバラだから、文字どおりの雑居家族。そこに、うだつの上がらない義理の兄の兵六(伊藤)が出入りするだけでなく、郷里の小豆島から飛び出してきた浜ちゃん(左)と下宿学生の斉木(宍戸)が加わり、家庭はてんやわんやに。

 

久松監督は俳優一人ひとりの撮り方が良い。伊藤雄之助さんはとにかく存在感があるだけでなく演技を観ていて癒される。音江(新珠)の幼女時代を演じた二木てるみさんは涙が出るほどに可愛らしい。特別出演の田中絹代さんがちょっとだけ出てくるが、あくまでも田中絹代さん然としている。

 

台所に水を取りに行った文吉が階段から転げ落ちてしまうシーンがある。このとき文吉は「お前でなくて良かった」と言う。この台詞にこそ作品で表現したかった全ての優しさが込められていると思う。