2024.6.21 波濤(1939年) |

波濤(1939年) 監督:原研吉

主な出演:細川俊夫 桑野通子 徳大寺伸 小暮実千代 日守新一 河村黎吉 吉川満子 岡村文子
 

林芙美子の新聞連載小説『波濤』を映画化。

滋賀から上京してきた見ず知らずの郷子(桑野)に対し、仮の宿から就職先までを世話する佐山(細川)なのだが、自身は数日後には召集の身。だからこそ心残りがないように郷子に誠意を尽くしたのだろうが、もうその時点で郷子は佐山にホの字。

そんな彼女の気も知らないで、「郷子さんに良い縁談があったらよろしく〜!」とまで友人たちに頼む始末。

 

友人の1人である小宮山(徳大寺)が郷子のことを好きになりかけるが、佐山を想う郷子の気持ちを知り、負傷して戦地から帰国した佐山をつかまえて問い質す。

それでも、「いや、友情のほうが大切。お前が郷子さんを幸せにしてやってほしい」と突っぱねる佐山。

見るに見かねた郷子の友人の律子(小暮)は小宮山にプロポーズするという手段を使い、佐山と郷子をくっつけようとする。

もともと鉄鋼技師だった佐山は軍を退役し、釜石の製鉄所へ。それを追いかけていく郷子。

ラストシーンで映し出される岩を砕くほどの波濤が郷子の決意をあらわしている。

 

以上のように、ハッピーエンドで終わる映画なのだが、それにしても佐山はなぜそこまで郷子を拒むのか全く解せない。

友情はわからなくもないが、気があったから最初からいろいろと世話を焼いてきたはず。戦地に行って生きて帰れなかったら郷子を不幸にするからか?しかし生還したのだから、郷子をはじめ友人たちの気持ちを素直に受け入れれば良い。

 

とは言え、この作品の登場人物は全て善人ばかりだから観ていて救われる。特に佐山に親身なる友人の1人の岡部(日守)も良い役どころ。日守進一さんは『一人息子』の息子役を好演した。

 

この映画でも桑野通子さんがとにかく美しい。