踏み切り。
犬みたいにはしゃぎながらいつも前を歩くキミ。
リードで繋げてないと見失ってしまうぐらいの行動力。
振り返っては、笑顔で急かす仕草をする。
「はいはい、今行くから。」
その変わらない日常を、いつまでも繋げておきたかった。
ある日の帰り道。
キミのことを考えて歩いていた。
何もかもうまくいかない自分を責めながら。
すーっと女性が自分の前を追い抜く。
一瞬、目を疑った。
間違いない。
いつも付けていたあの香水の匂い。
思わず立ち止まっていた足を動かす。
いるはずもないのに。
淡い期待を抱きながら足早に歩く。
笑顔で振り返る姿を想像しながら、
機敏に前を歩いている影を追う。
「カーンカーンカーン!!」
突然、鳴り響く警戒音。
ふたりの間を無常にも切り裂く。
ゆっくりと黄色い境界線が、嘲笑うかのように揺れている。
「カーンカーンカーン!!」
時の流れを奏でるかのように鳴り響く。
焦りと憤りを感じさせる無機質な機械音。
まるで前に進めない自分を責めたてるかのように。
「カーンカーンカーン!!」
左右に点滅する赤いランプ。
点いては消えて、点いては消えてを繰り返す。
どちらかが光るなら、片方は必ず消える。
「ガタンゴトン!ガタンゴトン!」
勢いよく通勤電車が通り過ぎていく。
前を追う影は、完全に視界から消えて見えなくなる。
数秒間、見えない時間が、数時間にも感じた。
電車が通り過ぎ、ゆっくりと境界線が持ち上がる。
鳴り響いていた警戒音も鳴り止み、現実へと引き戻す。
期待と焦りを胸に一歩前へ踏み出す。
しかし、
そこにはもう…誰もいない。
~Fin~
マスターりぴ
