☆Tanjerin's BAR☆ -8ページ目

踏み切り。





犬みたいにはしゃぎながらいつも前を歩くキミ。

リードで繋げてないと見失ってしまうぐらいの行動力。

振り返っては、笑顔で急かす仕草をする。

「はいはい、今行くから。」




その変わらない日常を、いつまでも繋げておきたかった。





ある日の帰り道。

キミのことを考えて歩いていた。

何もかもうまくいかない自分を責めながら。



すーっと女性が自分の前を追い抜く。

一瞬、目を疑った。

間違いない。

いつも付けていたあの香水の匂い。

思わず立ち止まっていた足を動かす。



いるはずもないのに。

淡い期待を抱きながら足早に歩く。



笑顔で振り返る姿を想像しながら、

機敏に前を歩いている影を追う。




「カーンカーンカーン!!」




突然、鳴り響く警戒音。

ふたりの間を無常にも切り裂く。

ゆっくりと黄色い境界線が、嘲笑うかのように揺れている。




「カーンカーンカーン!!」




時の流れを奏でるかのように鳴り響く。

焦りと憤りを感じさせる無機質な機械音。

まるで前に進めない自分を責めたてるかのように。




「カーンカーンカーン!!」




左右に点滅する赤いランプ。

点いては消えて、点いては消えてを繰り返す。

どちらかが光るなら、片方は必ず消える。




「ガタンゴトン!ガタンゴトン!」




勢いよく通勤電車が通り過ぎていく。

前を追う影は、完全に視界から消えて見えなくなる。

数秒間、見えない時間が、数時間にも感じた。




電車が通り過ぎ、ゆっくりと境界線が持ち上がる。

鳴り響いていた警戒音も鳴り止み、現実へと引き戻す。

期待と焦りを胸に一歩前へ踏み出す。

しかし、

そこにはもう…誰もいない。







~Fin~






マスターりぴみかん