醤油との出会い | 3年前のしこうの楽しみ

3年前のしこうの楽しみ

ブログの説明を入力します。

先日、泊まった旅館で醤油懐石というものをいただきました。
近隣に醤油を作っている蔵がいくつもある旅館です。
どのようなものかというとそこまで変わった懐石ではありません。

一見、土地のものを生かした普通の懐石です。
名前からすると醤油を徹底的に使っているイメージですが、そうではありません。
お造りの醤油が4種類出てきたり、もろみをつかったりと、こまごまと醤油の特徴を出している様子でした。

もちろん適度にこだわりがあって美味しかったです。
しかし、実際には決して主役ではないし口にする量も多くはない醤油が、全体の印象を支配していて、醤油懐石という名前に違和感はありませんでした。
食べている時は確実に脇役だったのに、あとから思い返すと何よりも印象に残っているのです。

それはなぜかというと、本物の醤油を初めて口にしたからかもしれません。
個人的には、醤油というものは特に好きでもなく、どちらかというとなければなくても良いという感覚でした。
しかし、この懐石では醤油が全体のハーモニーの調整役となっていて、なくてはならない存在だったのです。

そして、濃い味のものでも後味に嫌味がなく、爽やかさすら感じられるようでした。
特に、その地でしか味わうことのできない発酵を止めていない醤油は、あるがままの旨味を感じられ、醤油を好きになってそのまま飲めてしまうかもしれないと思うほどでした。

何が違うのかというと、この地域では昔ながらの手間のかかる製法を貫いているとのことでした。
現在、日本で生産される99%の醤油がステンレス樽を利用して半年でできるのに対し、ここでは伝統的な杉桶で1年から3年かけて作られるとのことでした。

この桶を作れる人も減っているらしく、同じ醤油と言っても伝統産業であることを実感しました。
身近でよく知っているものでも、知っているつもりであることに気づかされたのでした。

そして、むしろ身近なものほど知っているつもりになりやすいような気がしたのでした。

谷孝祐
2014.3.26 23:31