白トリュフの会報告 | 3年前のしこうの楽しみ

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帰国して間もない、微妙に時差ぼけとも思える状態でしたが、葉山ホテル音羽の森で行った白トリュフの会を楽しみました。
個人的に料理の印象をシェアするのは難しいので避けてきたのですが、挑戦してみようと思います。

今年は、すでに海外で何度か体験していたので、ことさら楽しみという感じはありませんでした。
しかし、海外渡航直前に打ち合わせをした時のこちらの意図を汲んで、日本でしかできない白トリュフずくしコースは体に香りが染み入るような繊細さがありました。

本場に比べるとインパクトは薄いものの、和の文化の持つ味わい深さが投影され、ややもするとこの価値が理解されないのではと懸念してしまうくらい優美であり、透明な存在感が、何もなかったかのように感じさせるのでした。

コースは、アミューズの「豆腐と白トリュフのマリアージュ カラスミをアクセントに」に始まりました。
一口大の豆腐を白トリュフで巻いたもので、中に微かな塩味を添えるためにカラスミが使用されていました。
豆腐が白トリュフの香りを後押ししつつ、最初はカッテージチーズのような印象から豆腐の後味に変化していく味わいが面白かったです。

次に前菜の「地野菜のサラダ仕立て 白トリュフのヴィネグレット アミューズの余韻と共に」という、一見シンプルなサラダでした。
白トリュフそのものは登場せず、しかしその香りと地野菜のマリアージュは抜群で、ヴィネグレットのバランスは相当研究されていたように感じました。
白トリュフとあろうものなら主張しすぎて野菜を脇役にしてしまいかねないのですが、ヴィネグレットはあくまでヴィネグレットの範疇からでないという物事をわきまえた存在感が、逆にその良さを最高に伝えるのでした。

この二品に合わせて、「ブッシアドール アルドコンテルノ シャルドネ」という白ワインがまた違った角度から彩を添えてくれました。
メイン一品目は、「北海道産 真鯛のポワレ 三浦大根のブレゼ アサリと白トリュフのナージュ仕立て」で、コース全体の中では、比較的一般的なスタイルとも言えますが、野菜の印象を壊さない絶妙な質的共通項が感じられ、魚を食べているという認識を覆すような優しさでした。

こちらに合わせて、「日本酒大吟醸 浪速正宗 究極の技」が引き立て役となってくれました。
打ち合わせの時、料理に合わせるのは大吟醸のような味わいの強さのものというイメージがあり、だったらいっそのこと日本酒にしてしまおう、ということになったのでした。
前後とのワインとの関連性、料理とのバランス感ともに、新たな発見となり固定観念を一段超えるような素晴らしさでした。

次のお口直しの「コンソメと和だしのジュレ 林檎のお酢」、二層のジュレに細かい白トリュフが散りばめられたものののち、メイン二品目の「相模湾 赤座海老のロティ 山菜とフランス産木の子を添えて 白トリュフとの共演」に続きました。
共演という言葉がぴったりすぎるくらい、赤座海老の存在感と角切り白トリュフの余韻が呼吸のあった波長を表現し、それを脇役のきのこが支えていました。
こちらに合わせて「ディモル ヴィオニエ ライア」が供され、この白ワインからも白トリュフの香りがしているのではないかと勘違いしそうなくらい、料理との一体感がありました。

そして、締めに定番の「白トリュフのお茶漬け」、定番とはいえ赤座海老の印象に負けないバランス感の出し加減は、嬉しいかぎりでした。
デザートには、「白トリュフの香るとうもろこしのブランマンジェと白トリュフ入りのリ・オ・レ バニラアイス添え」、それに合わせて「バローロ キナート シボーナ」が今までの印象を軽く引き締め、プティフールの「ホワイトチョコレートとフロマージュのトリュフ、洋ナシのクーリ 白トリュフの香り、白トリュフのマカロン」とコーヒーでフィニッシュ、殿堂入りの白トリュフコースは幕を閉じました。

ここまで高貴かつ爽やかな料理は初めての体験でした。

2012.12.15 14:03 谷孝祐