メキシコを最後にスペイン語圏とはお別れでした。
なぜだか、今までには感じることのなかった名残惜しさがありました。
それはもう少し居たいといった一般的にはよくある感じですが、個人的にはほとんど思うことのないものです。
思い返せば今回の旅では、一ヶ月弱ほどスペイン語圏にいたことになります。
今までスペイン語に触れたことはなく、旅行前に多少は勉強していこうと買っていた教材にも手をつけずに、つまり全く予備知識がないに等しいくらいで旅に出ました。
最初は、少しでも勉強しておけば良かったと思ったこともありましたが、逆に今は勉強せずに来て良かったと思います。
それは、言語習得のプロセスとして新たな発見があったためです。
これは、すでに日本語を使って学習してしまっている言葉では、意味にとらわれてしまって気づけなかったと思います。
もちろん、まずは皆がスペイン語で当たり前に話しかけてきたり、ほとんど英語が通じなかったりという状況が手伝ったことは言うまでもありません。
結果的に、たくさんのスペイン語の音に触れることができました。
もちろんたった一ヶ月弱、それだけでちゃんと理解したり話すことはできませんが、それが本来のプロセスのように思いました。
それ自体は当たり前のことかもしれませんが、顕在的には意味を理解していないにも関わらず、イエス・ノー(正確にはスペイン語でシ・ノ)で答える問いに対しては反射的に答えられるようになったのが発見でした。
それもむやみやたらにイエスと言う感じではなく、ちゃんとしたやり取りをしている感覚です。
なのでノーと言う時も頭では分かっていないのにキッパリ言える感じです。
スペイン語を話せるように思われて、長いやり取りをさらに続けられると厳しいので、基本的には途中から英語に切り替えてもらいますが、サンティアゴからメキシコシティーへの飛行機では英語を一度も使わずに通すことができました。
もちろん欲しいものを注文できるくらいの単語も少しは覚えていました。
それでもわかっているふりよりはましのようで、意図と異なることは起きませんでした。
もちろん機内のやり取りが非常に簡単な範囲でしかないということは確かですが、面白い体験でした。
そこで、もしかしたら赤ちゃんはこういったプロセスを経て言葉を覚えていくのかもしれないと思いました。
状況に応じてどんなことを聞かれているか無意識に推測して答え、正しかったと思われるものを無意識に覚えていくのかもしれません。
おそらくこの次に、単語を自然におうむ返しするという段階がくるのだと思います。
最終日ですが、わずかにその気配がありました。
全くもって正確ではありませんが、言われたことを何となく勝手にリピートしはじめていました。
2012.12.10 14:47 谷孝祐