大学時代の友人、A君から聞いた話。
彼は今でこそT芝で働く、カタギなおじさんですが、若い頃はやんちゃで、暴走族まがいな事をしていたそうな…。
そんな彼が高校時代、走り屋の友人らと、大垂水峠までバイクをぶっ飛ばしに出かけたそうです。
当時の大垂水峠は、深夜になると走り屋が多く、人身死亡事故多発地帯でありました。
「走行タイム計ろうぜ!」という話になって、順番にタイムを計る事になったそうです。
A君が、友人のタイムを計る順番になったので、一人で真っ暗闇の中、ガードレールの脇で、ストップウォッチを手に計測してた時です。
彼の後ろから、ザクッ…、ザクッ…と、砂利を踏みしめる足音が聴こえて来たそうです。
こんな夜中の山の中、人なんか歩いてるワケありません。
その足音は段々と、A君に近づいて来たそうです。
彼は、「これは絶対事故で死んだ幽霊だ」と確信したそうです。
そしてついにA君の真後ろまで足音が来た時、遠くから友人のバイクが近づく音が聴こえて来ました。
その瞬間、後ろに感じた人の気配が、スッと消えたそうです。
A君は無事でしたが、あれは何だったのか未だに分からないそうです。
そしてこの話には続きがあります。
A君は、それからしばらくあと、再び大垂水峠にバイクで深夜走っていたそうです。
今度は1人でした。
バイクで走っていると、後ろから1台の原付が付いてきたそうです。
A君は中型バイクで、付いてくるのは原付でスクーターです。
彼が峠を走っていると、一定の距離を保って原付はず~と付いて来るそうなのです。
気持ち悪いので、A君はバイクを停めて、原付に抜かさせようとしました。
すると後ろの原付も停まるのです。
そしてA君が再び走り出すと、後ろの原付も走り出します。
一定の距離を保ちながら…。
気持ち悪いので、A君はまた停まりました。
案の定、後ろの原付も停まります。
そんな事をA君は何回か繰り返したそうです。
不思議なのは、A君のバイクも、後ろの原付も停まるタイミングが、いつも同時なのです。
普通、付いて来てるのなら、時間差で停車します。
だけどまるで示し合わせたように、同時に停まり、ライトを消せば、相手も同時に消えるのです。
そもそも走り屋のA君に、原付が付いて来れるのも妙な話です。
「うぉおおおお怖ぇ~~~~~~ッ!!」
A君は、これも事故で無くなった亡霊だと思い、バイクをぶっ飛ばします。
しかし、どんなにスピードを出しても、50ccの原付を振り切る事が出来ません。
原付の排気音はいつまでも後ろから聴こえて来たそうです。
やがて峠を抜けると、後ろからついて来た原付の音は消えたそうです。
もしかしたら、原付の亡霊は、A君を事故に遭わせようとしていたのかも知れませんね。