恩田陸さんの小説
『スプリング』(筑摩書房)を先日、読み終えた。
東京と静岡の新幹線の行き来に
少しずつ読み、
最後は一気に読み終えた。
天賦の才能を授かった
バレエ界で活躍する
美しき男性と、彼に出会った人たちを
さまざまな角度から描いたこの作品。
恩田陸さんの小説『蜜蜂と遠雷』が好きだったので、
今回も楽しみに、
恩田さんの描く譜面を味わうように、
読み進めていった。
恩田さんの小説は楽譜だ。
綴られた場面のクレッシェンドやスタッカートも意識して読むと楽しい。
単に文字を追うのではなく、
言葉の形をした「音符」を追いかけながら、
クレッシェンドやデクレッシェンド、
フォルテッシモやピアニッシモ、
アダージョやアンダンテ、
カンタービレやコン・アニマ、スピリトーゾなどを
噛みしめるのがいいのだと私は思う。
主人公をどんどん輝かせる、
躍動感のあるスピードやテンポの心地よさ。
定型詩の調べや技法も
使いこなす天性の表現者だからこそ、
恩田さんが描く、
小説のかたちをした譜面は
豊かな旋律を奏でてくれるのだろう。
いつか、ゆっくりお話ししてみたい作家のかただ。