まずは「県」でまとまりましょうよ。 | 生殖医療専門医・内視鏡手術技術認定医 田中雄大のブログ

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神奈川県藤沢市の不妊治療・産婦人科「メディカルパーク湘南」の院長、田中雄大のブログです。
体外受精や内視鏡手術のことから雑感まで、日々の記録を綴っております。

こんなニュースを見ました。

 

 

神奈川県が、「特別自治市構想」について、住民目線から見た問題点をまとめたパンフレットを作成したことが物議を呼んでいるらしいです。

 

「特別自治市構想」とは、政令指定都市が市域の県税を全て市税にして市の財源として、現在は県が担っている業務を全て市に移行する構想です。要するに、政令指定都市が県から離脱して、完全独立する構想です。Wikipediaによると、2015年に相模原市内のホテルで開催された指定都市市長会議で提言されて、そこから議論が本格化したらしいです。

 

神奈川県の場合、横浜市、川崎市、相模原市と3つも政令指定都市があるので、この3市が神奈川県から独立することになります。県のパンフレットには、こうした構想に水をさすようなイメージを与え兼ねないらしく、特別自治市構想を支持する人々から、不快感を示されているようです。

 

でも、このパンフレット、私には“県”の言い分も分かる気がするのです。

 

メディカルパークグループは、これまで、産後ケア事業に力を入れて来ました。我々が産後ケアに参画した最も大きなきっかけは、平成29年度に改訂された母子保健法です。この中で、国は産後ケア事業について、「誰もが」、「気軽に」、産後ケアを受けられるよう、各自治体に制度整備を義務付けています。

 

この法改正を受けて、藤沢市の場合、分娩者全員が、産後ケア施設利用のクーポン券を7回分受け取ることが出来ます。また、今年4月からは、大和市でも同様の行政サービスが始まっています。おそらく、今後、この動きは周辺のほかの自治体でも広がっていくでしょう。その背景には、母子保健法の改訂だけではなく、県が産後ケア事業を非常に重要視していることがあります。神奈川県では、令和6年3月に、「かながわ産前産後研究会」を立ち上げました。これは、私から見ても結構異例のことで、自治体が医学的な学術的な研究会を立ち上げるという事例は、あまり聞いたことがありません。つまり、これは、今後、神奈川県が主導となって、県内の産後ケア事業を推進します!という明確に宣言に他なりません。

 

ところが、この流れに逆行しているのが、横浜市なのです。横浜市では、「産後ケアは、虐待や産後うつ病など、産後の育児放棄に繋がるリスクがある人のみを対象にするべきだ」というスタンスを崩していません。そのため、産後ケアを受けられる方は、事前に市のこども家庭支援課などで、面接を受け、必要と判断された方のみなのです。更に問題なのは、横浜市外の産後ケア施設の利用を認可していないことです。だから、メディカルパークで出産された方の中で、横浜市居住の方々からは、「不公平だ」、「理不尽だ」という声が殺到するのです。私たちも、横浜市に何度も掛け合ってみましたが、あしらわれるばかりで、取り合って貰えません。

 

同じ神奈川県なのに、境川の西岸と東岸で、なぜこうも違うのでしょう?いや、なぜ違わなくてはならないのでしょう?

 

最近、仕事で県庁に行く用事が増えていますが、みなとみらいを抜けると、右側にガラス張りの巨大なビルが視界に飛び込んできます。すごい最先端のビルです。美しいです。最初見たときは、「これはアップル社とかGoogleの日本支社ビルか?」と思ったのですが、よく見たら、横浜市庁舎でした。そこから数分で、神奈川県庁に着きます。行った事がある方なら分かりますが、県庁は、兎に角古い建物です。旧庁舎と新庁舎があって、新庁舎はもっと立派なようですが、少なくとも私がいつも行く副知事とか知事の執務室がある旧庁舎の方は、本当に年季が入っております。市庁舎と比べて、余りにギャップがあるのに驚いてしまうのです。しっかし、建てる時、誰も何も進言しなかったのかな?「市長、目と鼻の先にある県庁があんなに質素な佇まいなのに、市庁がこんなに豪華絢爛では、ちょっと不味いんじゃないでしょうか?」って、

 

私には、この建物のド派手さと、産後ケア事業に対する足並みの乱れと、そして今回ニュースになっている特別市の独立構想が、すべて根っこでは繋がっているように見えるのです。

 

神奈川県全体の人口が900万人で、横浜市の人口は280万人。つまり、県民のうち、約3人に1人が横浜市民という計算になります。人口が多ければ、その分、税収も潤うことでしょう。そりゃ、財政的には、県全体よりも横浜市単独の方がずっと裕福になるのは当たり前だと思います。でも、国があって、県があって、それではじめて市があるわけだから、やっぱり下剋上みたいな事、勝手にどんどん進めるのはどうなんだろう?自分達だけが良ければそれで良いっていう空気がプンプン臭うのです。

 

こんな事が罷り通ると、人が沢山いる地域といない地域の格差が広がるばかりで、国全体としては益々衰退していくのではないか?と心配になります。

 

甲子園だって、高校サッカーだって、県の代表。それが、市と県の両方の代表が出来てしまったら、興ざめですよ。

 

まずは、「県」でしっかりまとまりましょうよ!