「ひきこもり」について | サイコセラピスト(心理療法士) 棚田克彦 公式ブログ

こんにちは。

サイコセラピストの棚田克彦です。

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今回は、「ひきこもり」についてです。



厚生労働省は、

「6ヶ月以上、家にひきこもっていて、

学校、職場などに行かない状態」

と定義しています。



「学校で友達とケンカした」

「学校で先生に怒られた」

のように、

「学校で嫌な出来事があって、

ちょっと不登校になった」程度のこと

であればよくあることですが、



身体には何の異常もないのに、

1年以上も外へ出て行けない場合は、

やはり心に何か問題を抱えているからだと

考えられます。



ひきこもりの状態が1年を過ぎるような場合は、

精神科の受診をお勧めします。



複数のデータによると、

ひきこもりは男性が8割

と言われています。



日本では、

イジメから生じる不登校や

受験や就職の失敗

がキッカケになることが多いようです。



平均的には、

年齢は20-30代、

長男で、

期間は3-5年、

高校か成人してからのひきこもり。



なぜ、そうなるのかというと、

男性の方が過酷な競争社会で

生きていること、

「若いのに仕事もしないで・・・」

のように近所や世間の目が厳しいこと、

親の期待がより強いこと

などが原因として考えられます。



現在の日本では、

ひきこもりの数が100万人とも言われていますが、

これには大きく4つの原因が考えられます。



■競争社会の激化

子ども時代から激しい競争による序列化にさらされ、

それに対して逃げ腰になったり、「疲れた」と吐露する

若者が増えている。



■対人関係能力の低下

対人関係能力の低下とともに、

少子化や競争社会の進展で

個人がますます分断されている。



■画一化

日本では集団や学校、会社組織でも

画一化が求められ、周囲となじめない人を

はじいたり、いじめる風潮がある。

それを克服できずに、

引きこもることで、

ようやく自分を守っている。



■親の生き方の押し付け

根本的には、親が無理に生き方を

押し付けることに問題がある。

どんなものであれ、

子どもの行き方を尊重し、

子どもを無条件に愛するという姿勢がないと、

子どもの中に安心感が不足する。

その結果、

アイデンティティの確立の失敗、

自立心の獲得の失敗が起こる。

また、

幼稚園や小学校の低学年で、

子ども同士でよく遊び、

対人関係の基礎を身につけなければ、

どれほど勉強が優秀であったとしても、

社会に出て行く能力とはならない。



話が前後しますが、

「ひきこもり」といっても

その範囲は非常に広く、

精神状態については、

「ひきこもっていても健康な人」

「ひきこもって精神障害になる人」

「精神障害が原因でひきこもる人」

「パーソナリティ障害の人」

など、さまざまです。



多数の精神科医によると、

「ひきこもりの多数は、精神障害によるものである。

とくに、パーソナリティ障害である」

ということが言われています。



中でも特に、

回避性パーソナリティ障害

自己愛性パーソナリティ障害

が関係している場合が多いようです。



NPO法人全国ひきこもりKHJ親の会
http://www.khj-h.com/


の調査によると、


強迫性障害: 20%

対人恐怖症: 20%

パーソナリティ障害: 20%

うつ病: 5%

統合失調症: 3%


となっており、

やはり、

精神科の診断がつくケースが

多くなっています。



ひきこもりの原因となりうる精神障害は、

以下の通りです。



■社会不安障害

対人関係能力が極端に低いのが、

ひきこもりの人に共通する特徴です。

ひきこもりの原因の一番は、

「対人関係」、つぎに「イジメ」と

なります。



■醜形恐怖

ひきこもりの8割は男性ですが、

醜形恐怖の場合には、

女性にも同じくらいの割合で

見られます。



■拒食症

醜形恐怖と同じように、

「私は醜い」と思い込み

ダイエットをした結果、

ダイエットをやりすぎて

体力や気力の低下をまねき、

うつ状態になって外出できなく

なることがあります。



■統合失調症

ひきこもる人の中には

統合失調症の素質を

持っている人がおり、

ひきこもりが長くなると、

発症する場合があります。

特に、

シゾイド・パーソナリティ障害の人は、

強い孤立や社会的ストレスがあると、

統合失調症様の症状を示すことがあり、

実際に発症する場合もあります。



■強迫性障害

強迫性障害を伴うひきこもりの場合、

暴力性が強い傾向があります

(特に母親に対して暴力が

向けられやすい)。

まずは強迫性障害を治すことが

重要です。



■パーソナリティ障害(回避性、自己愛性)

一番多いのは回避性パーソナリティ障害、

次に自己愛性パーソナリティ障害です。

回避性パーソナリティ障害のひきこもりは、

小学生や中学生に多く、

高校生以上になると、

自己愛性パーソナリティ障害の方が多くなります。

回避性パーソナリティ障害は、

根底に「保護されたい」という気持ちがあり、

親への甘えが強くなります。

ところが、

高校生や大学生、社会人になると、

そうした甘えが自己愛に対する執着

という形に変化します。

つまり、

幼いときから両親(とくに母親)にかわいがられ、

期待され、過保護に育てられて、

自己愛が大きくなっているケースです。

そして、

受験や就職の失敗で自尊心が傷ついて、

「自分は大したことがない」

「ひきこもりは病気ではない」

と思っていると、

ひきこもりになってしまうケースです。

この場合、

母親に対して激しい怒りをぶつけてきます。

また、

幼いときから教育熱心で、

「うちの子はこんなに勉強できる」ということが自慢で、

全てが子ども中心、

「勉強以外のことは家事の手伝いもさせない」

という親も見られます。

こうした親は、

子どもがひきこもってからも食事を部屋の前において、

食べ終わったら子どもに代わって食器を下げます。

こうした場合は、

親の価値観を変えることも必要になるでしょう。



■パニック障害(含広場恐怖)

いつパニック発作が起こるかわからない恐怖から、

外出できなくなります。

この傾向は、

広場恐怖を伴う場合に特にに顕著となります。



■全般性不安障害

とくに精神障害はなく、

受験等に失敗して不登校になっている、

ひきこもっているケースもあります。

そういう場合は、

両親の仲が不和だったり、

暴力などで家庭内が混乱しているために、

根底に強い不安があるケースが多くあります。

その場合、

全般性不安障害と診断されます。



ひきこもりと(リミッティング・)ビリーフの関係についても

簡単に述べておきましょう。



ひきこもりに関係する主なリミッティング・ビリーフは

以下の通りです。



●《存在してはいけない》

 →うつ病、抑うつ状態、摂食障害、すべてのパーソナリティ障害


●《ありのままの自分であってはいけない》

 →対人恐怖


●《見えてはいけない》

 →対人恐怖


●《愛着を感じてはいけない》

 →摂食障害、対人恐怖、すべてのパーソナリティ障害


●《人に近づいてはいけない》

 →シゾイドパーソナリティ障害、強迫性障害


●《人を信用してはいけない》

 →自己愛性パーソナリティ障害


●《集団に属してはいけない》

 →強迫性障害、シゾイド・回避性パーソナリティ障害


●《子どもであってはいけない》

 →うつ病、パニック障害(広場恐怖、過呼吸発作、予期不安)、
  対人恐怖、強迫性障害、全般性不安障害


●《親から離れてはいけない》

 →摂食障害、分離不安障害


●《自由に行動してはいけない》

 →ひきこもり、強迫性障害


●《健康であってはいけない》

 →嫌なことがあると病気になってひきこもる


●《正気であってはいけない》

 →統合失調症様の症状、自己愛性パーソナリティ障害


●《(怒りを)感じてはいけない》

 →摂食障害、無気力



ひきこもりの人が

これらすべてのリミッティングビリーフを持っていると

言う訳ではありません。



ここでは、

ひきこもりの原因となりうる精神障害や性格傾向の

原因となるすべてのリミッティングビリーフを

列挙しました。



個別のリミッティングビリーフについて

詳しくお知りになりたい方は、

こちらをご覧下さい。

http://www.tanada-katsuhiko.com/index.php?TherapyPeculiarity




サイコセラピスト 棚田克彦