『義経千本桜 大物浦(だいもつのうら)』2013年2月博多座 | はじめての歌舞伎!byたむお

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いよいよ決戦の大一番です。
下関、壇ノ浦の戦いリベンジマッチは、
兵庫県尼崎、大物浦(だいもつのうら)で行われます。

まずは挑戦者から紹介しましょう。
赤コーナー(挑戦者)
 平知盛(36歳 所属:平氏)
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海の上はホームの「チーム平氏」
兵(つわもの)たちの、チームカラーはです。
しかし壇ノ浦ではまさかの敗退。
今回は秘策を用意して臨む知将の知盛。

絶対に負けられない戦いがここにもあるんです。


続いては、迎え撃つディフェンディングチャンピオンの紹介です。
白コーナー(チャンピオン)
 源義経(29歳 所属:源氏)

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陸がホームの「チーム源氏」
チームカラーはです。
アウェーでの海での戦いに奥州から呼び寄せられ、
八艘飛びの秘技を引っさげて登場したのは、
救世主、源義経です。
今回も返り討ちにする意気込みで臨みます。

この紅白歌合戦、勝利の女神の凱旋歌は、
いったいどちらに響き渡るのか?


それでは、試合直前の様子を聞いてみましょう、
リングサイドレポーターの佐藤さん、
佐藤忠信(さとうただのぶ)さ~ん。

おや、連絡が通じないようです。
それでは観客席の様子を見てみましょう。


以上、プロレス中継風にお届けいたしました。

(プロフィール年齢は壇ノ浦の戦い+2です。)

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しんどいので、ここからは普通にやりますよ~。

観客席、いや、渡海屋の奥座敷で窓の外には源平の船が見えます。
待機している安徳帝は正装、典待の局(すけのつぼね)のほかお仕えしている女官達も
みな十二単に着替えてます。


ちょっと雑談。。。(いきなりですが)

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こちらは京都御所見学のときの写真です。
右側の格子戸は横に引くのではなく、
上に持ち上げてあげるそうです。
なんと重さ200キロくらいで、
これを朝5時に開けるのが女官の仕事だそうです。
もちろん何人かでやるそうですが。
重労働しかも朝5時、しんどい。。。

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話を戻します。
そこへ戻ってきたのは相模&入江コンビ。
と言っても1人ずつですが。

「物語(ものがたり)」というのも歌舞伎用語です。
日常用語とはちがいます。

この場面では戦の様子を「ものがたる」のですが、
役者さんがセリフをしゃべって「ものがたる」のではなく、
三味線にあわせて義太夫の太夫さんが言葉を話します。
役者さんは唄と音楽にあわせてその様子を踊ることで、
「ものがたって」見せる。
戦いの場面の物語なので、「軍物語(いくさものがたり)」ということになります。

それによると、義経さんは渡海屋にいるときに、
実は死んだはずの知盛たちが扮装していると気づいていたとのこと。
義経さん「おれも源氏に追いかけられて…」なんてこぼしてたのは、
そういうことだったのか~。

義経さんと知盛さん、武士の世の中に翻弄されたもの同士のあいだに
何か通じるものがあったのですね。

「幽霊に化ける作戦」は見破られて失敗で、戦いは押され気味です。

相模&入江もボロボロ、追っ手の侍を斬りつけ、
最後は相手の侍を抱え込んで海に落ちていきます。

典待の局は覚悟を決め、安徳帝に入水を促します。

典待の局「安徳帝さま、いまのこの世は帝にとって生きづらい世の中です。
でも、この海の水の下には立派な都があります。そちらに行幸(おでかけ)しましょう。」

安徳帝は辞世の句(史実では二位の尼が読んだそうですが)
「今ぞ知る みもすそ川の 御ながれ 波の下にも 都ありとは」
を読みます。

幼いながらも立派な御覚悟です(泣)。

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「壇ノ浦 安徳帝御入水之処」の碑にもその句が。

細かいですが、みもすそ川と「川」ですが、
海に流れ込む近くの場所だったので、
「海」に入るということでいいのでしょう。

女官たちが順に海に身を投げていき、
安徳帝も典待の局に抱えられて海に向かいます。

海の神様は竜王様。
典待の局は
「八大竜王、帝がこれから行幸(みゆき)されるぞ。守護されよ。」
と祈り、そして叫びます。
典待の局の見せ場です。

この世からのお別れです。

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しかし、岩陰から現われた武士達に止められ拘束されてしまいます。
すべてお見通しの義経さんの家来でした。

一方、惨敗に計略を見破られたと察知した知盛さん、
もはや最後の望みは安徳帝に立派な最後を遂げてもらうことです。

命からがら海から逃げて戻ってきた知盛さん、
髪もほどけ、瞼の上からは血がだらだらと流れています。

周囲の追っ手を薙刀(なぎなた)で振り払うものの、
その後バランスを崩すともう自分でも立っていられず、
薙刀を杖代わりに体を支えています。
相手を睨みつける鬼気迫る表情に圧倒されます。


「知盛にかかる武士」中村橋吾さんにサインをいただきました。


自分の体に刺さっている矢に気づき、
その矢を抜くと矢じりに滴る自分の血、
じっとそれを睨みつけるとペロリとその血を舐め、
敵をぐっと睨みます。
本当の幽霊みたい。

おどろおどろしい、でもなぜか綺麗。

こんな型はじめて見た。かっこいい~、と思っていたら、
これは、三世實川延若(じつかわえんじゃく)さんの型だそうです。
それを片岡仁左衛門さんが復活させた舞台を観て、
「これでやってみたい」という中村勘九郎さんが仁左衛門さんに習ったということ。

三世實川延若さんといえば、以前も紹介した、

「三世實川延若より直伝されし 十八世中村勘三郎より習い覚えし 怪談乳房榎」
ですね。
どんな役者さんだったんだろう?

体力は使い果たし、立っているのがやっとの知盛さんですが、
気力だけで目の前の義経さんに、
「いざ勝負!」
と声を上げます。

しかし、一人対大勢、手負いの知盛さんに対して、
元気な義経さんは四天王と呼ばれる強者の武者達、
武蔵坊弁慶など勝ち目はありそうにないです。

四天王が取り囲み、武蔵坊弁慶(坂東彌十郎さん)は、
知盛さんに数珠を差し出します。

「この知盛に出家しろということか!」

とうてい受け入れられません。

自分のことはもはやどうでもいい、
平氏の武士としてのプライドと、安徳帝への思いだけで
生きている知盛さんです。
「切腹しろ」と情けをかけられるのですら許せないでしょう。

義経さんとしては、本来は争う必要のない戦をつづけ、
勝ったとしても自分は依然として追われる身。
しかも、既に死んだことになっているはずの知盛さんですから、
ここで知盛さんを殺すことに意味は無い。
「生き延びてください。」
という気持ちでしょう。

知盛さん、義経さんに一太刀でも浴びせようと、
渾身の力を…

そこで声をかけるのは、安徳帝。
「自分が今まで生きて来れたのは知盛のおかげだ。
そして今から命を永らえるのは義経のおかげだ。彼を恨むでない。」

いい台詞やな~。

心のよりどころとなっていた帝のお言葉。
この一言でバランスシートは一気にかわります。

もはやこの世に未練は無い、と典待の局は懐剣を取り出し、
自分の腹に突き出します。
七之助さんの
典待の局は苦しんだり、恨んだりもなく、あっさりと。
演目全体を考えるとこのほうが良かったと思います。

怒りの気持ちをぶつける相手もいなくなった知盛さん、
もはやこれまで、覚悟を決めます。

「生まれ変わり、死に変わり、この恨みはらさでおくべきか~」

「最後は潔く」、なんてカッコいいことは言いません。
未練の塊となって成仏せず、再び怨霊となって源氏に襲いかかろうという気構えです。

岩山に登ると倒れている碇を持ち上げ始めます。

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前の幕では軽々と碇をもって花道を歩いてきたんですが、
今はヘトヘトですから、倒れている碇の隙間に体をこじ入れて、
なんとか立ち上がります。

死を覚悟した知盛さんですが、
海に飛び込んだ後に誰かに助けられたり、
死体をさらされ笑い者にされるのは耐えられないのでしょうか、
鎖を体に巻き付けて、海に沈んで死んでいこうとします。

碇をとめている綱を体に巻き付けてしっかりと結びます。
そして、碇を海へドボンと投げ入れます。

シュルシュルと綱が海へと引き込まれていきます。
知盛さんの最後が近づきます。

義経さんは抱えている安徳帝はまだ幼いので、
知盛の悲惨な最期を目にしないように配慮しつつも、
自分は刀を交えた武将の死に様を目に焼き付けようと見つめます。

意を決した知盛さん、義経、安徳帝のほうを見つめつつ、
後ろ向きに岩上から自分の身を海へと放り投げます。

こうして海の深く深くへと、平知盛は沈んでいくのでした。

勘九郎さん、最後の落ち方は意を決して飛び込むような日もあれば、
綱の流れに身を任せて引きずられるように落ちていく日もあったようです。
(twitter 情報です)
たむおが観劇した日は、ジャンプしてました。

安徳帝の命を救い、義経さんと四天王、家来たちは去っていきます。

『勧進帳』と同じように時間をおいて最後に弁慶さんが出発することになります。

幕が引かれた後、弁慶さんは知盛さんの死を追悼するように法螺貝を吹き、
万感の思いで花道を引っ込んでいきます。

六代目中村勘九郎襲名披露『義経千本桜 碇知盛』でした。


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「赤間神宮」安徳帝、平知盛の墓所もあります。

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おっと、円グラフ忘れてた。
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