『アンチヒーロー』・最終回 | なにわの司法書士の徒然草

なにわの司法書士の徒然草

つれづれなるままに日暮らし
PCに向かいて
心にうつりゆくよしなしごとを
そこはかとなく書きつづれば
あやしうこそものぐるをしけれ

TBSテレビ日曜21時のドラマ『アンチヒーロー』

 

 

現在、バレーボールのネ-ションズリーグが開催中でTBSは日本戦全戦を中継

 

特に日本で開催される試合は地上波で生中継

 

ということで、最終回の日も女子の試合が中継されたわけだが、その試合が早く終わったことで

 

21時までの30分以上にわたって、今作のSPダイジェストやキャストのインタビュー

 

キャストや制作スタッフによる緊急座談会なるものを放送した

 

かなり見ごたえがあったし、最終回に向けての見どころやヒントを語る部分もあったが

 

もしバレーが早く終わっていなかったら、この映像はどうしていたのかが気になって仕方ない

 

 

こうした内容をもともと番組として枠を設定して放送するというのは

 

昨年の『VIVANT』が記憶に新しいようによく行われること

 

しかし、スポーツ中継が早く終わった場合のために用意した映像としては内容が濃すぎるし

 

このバレー中継は、阪神戦のように関西だけで放送されているようなものでもない

 

考えられるのは、DVD特典として撮影、編集していたものを

 

バレー中継が早く終わった場合には放送しようと用意しておいたということ

 

ただそうであれば、この映像を最終回放送前に見られなかった可能性があったわけで

 

ストレートで勝利してくれた女子バレーチームに感謝しなければならない

 

 

その番組の中でスタッフが語る最終回のみどころとして

 

トイレに行く時間を考えた方がいいという趣旨の発言があり

 

最終回の宣伝のCMからも、長谷川博己と野村萬斎の法廷での対決シーンが

 

長回しでCMを挟まずに放送されるのだろうということが予想されたし

 

かなり迫力のあるシーンになるのだろうと期待も高まった

 

 

ただ、実際の放送では、確かにラスト30分ぐらいをCM無しで放送し続けはしたが

 

ずっと法廷シーンが続くわけではなく、間に回想シーンもあればラストの後日談も有り

 

法廷シーンにしても、1回の公判期日をノーカットで描くというものでもなく

 

最初は長谷川博己を被告人とする裁判だったが、終盤には野村萬斎を被告人とする裁判

 

逮捕から起訴、期日を迎えるまでを考えると、かなりに時間経過があったはず

 

その前にスタッフの煽りコメントを見て期待が高まってしまっていたせいで

 

ちょっとテンションの下がる部分や、これならばCMを挟んでも何の問題も無かったのにと

 

余計な気持ちが入ってしまった

 

そういう意味では、急遽見ることなったあの30分は無かった方が楽しめたかもしれない

 

 

とはいえ、作品の方は見ごたえ十分だし、登場人物の関係性の設定やストーリー構成も

 

感心させられるものが多かった

 

証拠を偽造してでも無実の人を無罪にするダークヒーローというのはよくあるが

 

序盤の、証拠を偽造して犯罪者を無実にしたかと思えば、無実にする方向だった裁判で

 

あっさりと被告人を見放して代理人を辞任したり、当初予想していたダークヒーローとは

 

全く異なる長谷川博己の姿に違和感を覚えていた

 

 

しかし、それが実は無実の罪を検察に着せられた1人の死刑囚、緒形直人さんを救うために

 

必要な人間を収監させないために無罪を勝ち取ったり、過去の事件を持ち出すために

 

代理人を請け負ったり、全ての行動が緒形直人さんの再審請求、無罪を勝ち取るためだと

 

行うことはダークでも、その目的、心の中はホワイトだとわかると

 

どんどん好意的な感情が沸き起こり始める


 

そこからは、緒形直人さんの事件を担当した検察官が長谷川博己で

 

その後悔のために行動を起こしたこと

 

検察の証拠隠滅に不正を暴こうとしたのが同期の吹石一恵さんで、病で亡くなる直前まで

 

緒形直人さんの無実を証明しようとしていた遺志を継いでいるのだということ

 

緒形直人さんの娘の近藤華を気に掛けていたのも吹石一恵さんがしていたことと

 

序盤で冷徹な悪魔のように見えていた長谷川博己がどんどん正義の味方に見えていく

 

 

さらには、緒形直人さんの裁判で裁判長を務めた神野美鈴やバックにいた政治家の相島一之

 

堀田真由の父親だとわかっていながら事件捜査を指揮した警察官の藤木直人を

 

追い落としたのも、個人的な恨みや権力への反発などでは全くなく

 

ただただ緒形直人さんの冤罪を証明するための手段に過ぎないとわかってくると

 

一気に応援する気持ちがこみ上げてくる

 

最初にタイトルや演出、ストーリー設定でとんでもない悪魔に見せておいて

 

どんどんそれを白く塗り替えていく展開は実に巧妙

 

最後に、野村萬斎を陥れるために証拠を偽造していたとわかったって

 

何の悪い感情もこみ上げることは無かった

 

 

最後の直接対決への流れもよく練られていて感心

 

決定的な無罪の証拠を野村萬斎に先回りされ奪われた長谷川博己がとった作戦

 

自らが逮捕されればその法廷に野村萬斎を引っ張り出すことができるはず

 

そこで被告人と検察官として直接野村萬斎の不正を暴いてやろうと

 

そのために大島優子に事務所を裏切って野村萬斎に協力する演技をさせたことは

 

よくあるパターンとして、スパイとなっているのではないかと思う部分もあったが

 

まさか野村萬斎の忠実な部下を演じていた木村佳乃が長谷川博己に協力していたとは想像外

 

しかも、裁判直前に裏切ったわけではなく、もともと木村佳乃も長谷川博己同様に

 

吹石一恵さんの同期で、5年前から長谷川博己と協力して、検察の内部から

 

野村萬斎の不正の証拠を集めようとしていたと明かされただただ驚きだった

 

 

1人の命を救うために、自分が犯した過ちの贖罪のために

 

どんな手段を使っても、それが不正な手段だとしても、真っ直ぐに突き進む姿

 

それを『ダークヒーロー』と呼ぶのであれば確かに『ダークヒーロー』なのだろうが

 

画面から受ける印象は『ダークヒーロー』などではなく、真っ白なスーパーヒーロー

 

最後に野村萬斎と対峙する場面でも、刀を斬り合うような冷徹に斬りつけるのではなく

 

野村萬斎にも人間の感情を取り戻させようとでもするように、人情に訴えかけ

 

説得する語り掛けは、こんな敵に対してまでどこまで優しいんだと思ってしまった