『墜落JKと廃人教師』・最終回 | なにわの司法書士の徒然草

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毎日放送(TBSテレビ系列)木曜24時59分のドラマ『墜落JKと廃人教師』

 

 

深夜ドラマというのは、とかく知名度の低い俳優が起用されることが多く

 

そうなるとどうしても視聴意欲がその時点で若干低くなっていて

 

作品への興味、期待度が低い状態からスタートしてしまう

 

それを考えると、今作はかなりの秀作だと言っていいのではないだろうか

 

それぐらい、笑いと胸キュンをふんだんに織り交ぜた面白い作品

 

 

最初は、HiHiJetsの橋本涼も、ヒロインの高石あかりも良く知らないし

 

設定にちょっとひねりは加わっているが、単なる女子高生と教師の恋愛ドラマだろうと

 

高をくくって見始めていた

 

 

ところがこの2人の恋愛、互いに両想いなのにストレートにぶつからず

 

学校にばれたり、恋のライバルが登場したりというお決まりの障害も登場しないのに

 

くっつきそうでくっつかない、まるで磁石のS極とS極のよう

 

確かにこの2人、似た者同士な部分があって

 

第1話の冒頭で屋上から飛び降りようとしたように、ネガティブ思考の高石あかりが

 

危険な状況に陥るとすぐに助けに現れるのが教師の橋本涼

 

その橋本涼も、実は学生時代にいじめにあって同じように屋上から飛び降りようとして

 

そこを教師の小沢真珠に助けられたという経験をしていたことがわかる

 

同じ経験をしたからこそ高石あかりを放ってはおけなかったというのが二人の出会い

 

 

実はこの愛情の連鎖には続きもあって、ドラマの中盤で走る車の前に飛び出そうとする男子を

 

高石あかりが飛び込んで助ける場面がある

 

高石あかりは、橋本涼が自分にそうしてくれたように、「死ぬな」とも「生きろ」とも言わずに

 

たい焼き屋に連れて行って一緒にたい焼きを食べて話を聞いてやる

 

こういう人としての愛情、優しさが次々とつながっていくというヒューマンドラマの側面もある

 

 

メインの男女の恋愛の側面に話を戻すと、橋本涼と高石あかりのキャラクターが秀逸

 

最初は、友達もいないぼっちの高石あかりを救おうという教師としての優しさだっただろうが

 

そのために口にした「俺と恋愛しろよ」とか次々と出るキザな台詞が

 

いつの間にか自分の気持ちを錯覚させたのか、本気で好きになる橋本涼

 

しかし、教師という立場を考えてなのか、それとも照れ隠しなのか

 

ストレートな「好き」の言葉も胸キュン台詞も、直後に必ずふざけた冗談を口にしてしまう

 

最初はただのいい加減な口先男に映っていたのが、次第に優しさの裏返しに見えてきて

 

冗談で誤魔化そうとする橋本涼を抱きしめたくなる高石あかりの気持ちも納得してしまう

 

 

そんな橋本涼以上に今作のポイントになったのは高石あかりのキャラクター

 

ネガティブな性格で根暗だということで、ほとんど表情を変えないのだが

 

橋本涼にストレートに愛情を伝えられたときの照れた表情がギャップで非常に可愛らしい

 

頭がいいばっかりに、橋本涼の行動を全て自分のためのことだと勝手に解釈して

 

どんどん橋本涼の沼にはまっていく様子も乙女っぽくていい

 

タイトルの『墜落女子』も、第1話で飛び降りの場面があったのでその意味だと思っていたが

 

おそらくは、橋本涼に「落ちていく」という意味合いなのだろう

 

橋本涼の方が「好き」を伝える台詞が圧倒的に多かった今作の中で

 

物理の宿題を忘れて来た高石あかりが、物理教室で橋本涼の横でうれしそうに宿題をしていて

 

終わってから見ると、一度解いた問題を消した跡が残っていたシーンなんかは

 

そこまでして橋本涼に会う口実が欲しかった乙女心満載の胸キュンシーンだった

 

 

ただ、それ以上にいいのが、そうした恋に浮かれたような状態から

 

橋本涼のセクハラ発言があった瞬間に一気に表情が固まり冷めた視線に変わるところ

 

一瞬で5mぐらいの距離に離れたり、間を置くこと無く「交番に行きましょうか」とか

 

言ってしまう転換の速さ、テンポの良さは今作の一つの売りだろう

 

このテンポの良さが、今度は真剣に好きな想いを伝えるシーンでの会話の「間」を

 

より強調して印象付けたような気がする

 

 

そんな2人のツンデレ恋愛ストーリーの中で個人的に印象に残っているのが

 

高石あかりが風邪で学校を休んだ橋本涼を心配して見舞いに来る回

 

高石あかりが部屋を片付ける様子をスマホで撮影する橋本涼が

 

「新婚の記念に撮っておこうと思って」と冗談ぶくと、思わず高石あかりは「気が早すぎます」

 

気が早いということは、とツッコむ橋本涼と、焦って照れる高石あかり

 

また、橋本涼がのどが痛くて水も飲み込めないと、「JK、口移しで飲ませてくれよ」

 

もちろん即答で断る高石あかりに追撃で「水無しでもいいけど」

 

こういうセクハラ発言がてんこ盛りな作品だが、この台詞は一番のヒットのような気がする

 

 

ところがこれが冗談で済まなかったのがまたいいところで

 

橋本涼のために自分に何ができるのか考えていた高石あかりが

 

眠っている橋本涼に対して、勇気を振り絞って水を口移しで飲ませることになる

 

直後にマンションを飛び出して帰り道で頭を抱えて自分でも信じられない自分の行動に

 

慌てふためくことになるのだが、この姿がまたなんともピュアで可愛らしい

 

 

さらにこの「口移し」が終盤に来て効いてくる

 

不眠症の橋本涼を心配して、橋本涼が眠れるようになるまでは水分を摂らないと

 

断飲を初日の出に誓った高石あかり

 

それに対して橋本涼は、水分を摂らないと人は死ぬ、自殺をほのめかす生徒を

 

教師として放っておけないと、水を口に含んで高石あかりに口移しという名のキス

 

さらにソファに高石あかりを押し倒して濃厚なキスをするシーンも

 

序盤での口移し以降、互いに思いを抱きながらもキスシーンが無かったのは

 

このシーンのためだったのかと納得させられた

 

 

この場面はさらにもうひと工夫

 

橋本涼が目を覚ますカットになり、橋本涼は目をつぶった途端にぐっすりだったと

 

高石あかりは証言

 

橋本涼は、てっきり夢オチかと思い、スタッフ向けに「それがお前らのやり方か」と叫ぶが

 

直後に小声で「ってことにしておこうか」

 

高石あかりも照れた様子で手にした本で顔を隠しながら「はい」

 

視聴者にとっても、どこまでがリアルでどこまでが夢で、リアルだとあの後どこまでいったのと

 

ヤキモキしてしまうコミカルなシーン

 

おそらくこんなシーンが原作漫画にあるわけもなく、脚本なのか演出なのか

 

いずれにしてもスタッフのちょっとした遊びの粋なシーンだった