毎日通っていた道なのに

 

初めて見るように景色を感じながら

 

目を輝かせたくまこちゃん

 

ゆっくりと歩いていると...

 

 

そこへ通りすがりのおばさんが

 

「あれ? あなた足から血がでてるわよ 大丈夫?

 

私お薬もっているから 手当てしてあげる」

 

 

 

「ありがとう おばさん!」

 

 

おばさんに手当てをしてもらったくまこちゃんは

 

お礼をしようとカバンの中をのぞきこんでいると

 

おばさんは

 

「いいのよそんなの~」

 

と言って去って行きました

 

 

 

そしてくまこちゃんはしばらく

 

自分の汚れた服とやぶれたカバンを見つめていました

 

 

 

「私こんなにひどい格好..」

 

「そうだ! 新しいものを買おう!」

 

「でも お店どこにあるのかなぁ..」

 

 

 

そんなことを考えながらぽつぽつと歩いていると

 

向かいから一人のおじさんがやってきました

 

 

「あれ? 君カバンが破れてるねぇ 大丈夫?

 

あそこのパン屋さんの隣に カバン屋さんがあるから行くといいよ」

 

 

 

くまこちゃんは「ありがとう! おじさん」

 

と言い カバン屋さんに向かいました

 

 

 

そこでカバンを選んでいると

 

 

カバン屋さんのお姉さんが

 

「あら? あなた服がすごく汚れてるわねぇ

 

この道の先に服屋さんがあるわ

 

あなたに似合いそうな

 

かわいい服がたくさん売ってるわよ」

 

 

 

くまこちゃんは「ありがとう!」

 

と ここでもまたお礼を言い その服屋さんに向かいます

 

 

 

服屋さんには本当にたくさんのかわいい服がありました

 

 

 

 

そしてそこからくまこちゃんは

 

かわいい服を着て

 

新しいカバンを持ち

 

お友達との待ち合わせ場所に着きました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも風は

 

『ぶふぉ~ん』 『ぶふぉ~ん』

 

『ぶふぉ~ん』 『ぶふぉ~ん』

 

くまこちゃんはもう疲れきってしまいました

 

そしてだんだんと悲しくなり 涙がでてきます

 

その時 くまこちゃんの力がふっと緩みました

 

 

 

すると 少しだけ風が弱まります

 

くまこちゃんは腕で涙をぬぐいながら 横に顔を向けました

 

 

 

「あれ? どうして??」

 

 

道に咲く花はキラキラとしていて

 

周りを見渡すと 川の水も 鳥も人もゆったりと動いているのです

 

 

 

くまこちゃんは 自分の前だけにしか

 

この強い風が吹いていないことに気がつきました

 

 

 

そこでゆっくりと立ち止まり もう一度周りを見渡し

 

それから自分の姿を見ます

 

 

 

すると

 

 

風がぴたりと止みました

 

 

くまこちゃんは自分の体に触れながら

 

上からじっくりと見回します

 

 

 

「あれ? 私の服こんなに黒く汚れてる」

 

「あっ ここにケチャップついてるし 何食べたっけ?」

 

「靴も泥だらけ..」

 

「あれ カバンもこんなに破れてる」

 

「え!! 足から血がでてるよぉ.. どこで傷つけたのかなぁ..」

 

今度は顔に手をやると

 

「ん? 涙で濡れてる」

 

「さっきイライラして怒ってたんだ私..」

 

「それから悲しくなって涙がでたんだ..」

 

「ん? どうして私こんなに急いでいたの?」

 

 

 

 

そしてしばらくしてくまこちゃんは 

 

そこからゆっくりと歩きだしました

 

顔をあちこちと向けながら目をやると

 

道の横に咲く花は

 

どれもキラキラとしてとても美しく

 

優しい風がやわらかい香りを運んできます

 

 

「わぁ~  いい匂いがする   あっ かわいいお花」

 

「空が青いわ~ 今日はとてもいい天気ね」

 

「なんだか気持ちいい~」

 

 

くまこちゃんの心がふぁっと明るくなりました

 

 

 

 

くまこちゃんはやっと一つ一つ 自分の姿に目が行き

 

周りの景色も

 

自分の気持ちにも気がつきはじめました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くまこちゃんが走っている道の横では

 

色鮮やかに咲くお花たちが 今日も楽しくおしゃべりをしていました

 

 

「私たちいい色してるよね~ 赤 ピンク オレンジ ムラサキ~」

 

「ははは~ きれいに咲けたわよね~」

 

「お日様がもっと私たちをキラキラに輝かせてくれるわねっ」

 

「ふふっ 気持ちいいわ~」

 

 

そこへ走ってくるくまこちゃんの姿が見えました

 

お花たちはみな一斉にくまこちゃんに向かって

 

花びらや葉っぱを大きく揺らします

 

「ねぇ 私こんなに可愛く咲いたよ~ うはは~」 

 

「ねぇ 私もこんなにいい香りがでるんだよ~ ふふふ~」

 

「ねぇねぇ~ 私たちをみて~ こっちみて~」

 

 

くまこちゃんは全く気づきません

 

「急がなきゃ」 「急がなきゃ」

 

汗も気にせず真っすぐに行きます

 

 

その時です

 

くまこちゃんの走る道の横をサァ~と大きな風が一吹き

 

すると お花たちのおしゃべりや やさしい香りが

 

くまこちゃんの近くまで届きました

 

「ねぇ みてみて こっちみて~」

 

 

でもくまこちゃんは やっぱり気づきません

 

 

 

くまこちゃんは走ります

 

「急がなきゃ」 「急がなきゃ」

 

すると 今度は突然大きな雲が顔を出し

 

くまこちゃんの向かう前方から

 

『ぶふぉ~ん びゅい~ん!!』

 

大きな音をたてて 強い風が吹いてきました

 

『ぶふぉ~ん』 『ぶふぉ~ん』

 

それはまるで固い壁で前を塞ぐような

 

とても強くて大きな風

 

くまこちゃんは 前かがみに頭を突き出し

 

前に前にと足を運ぼうとしますが

 

固い風の壁には逆らえず

 

とうとうそこから 一歩も前に進むことができなくなってしまいました

 

「なにこの風! 早く止んでよー」

 

「急がなきゃ」 「急がなきゃ」

 

 

風は弱まることなく

 

『ぶふぉ~ん』 『ぶふぉ~ん』 

 

『ぶふぉ~ん』 『ぶふぉ~ん』

 

 

くまこちゃんはだんだんと イライラしてきます

 

 

『ぶふぉ~ん』 『ぶふぉ~ん』

 

『ぶふぉ~ん』 『ぶふぉ~ん』

 

 

くまこちゃんはもう怒り出します

 

力いっぱい体を前に傾け 頭を上げ叫びます

 

「もう!! どうして!! なんでー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小さな森の集落に住むくまこちゃん

 

今日も朝から「バタバタっ!バタんっ!痛いっ!」

 

まだ時間はたっぷりあるというのに

 

くまこちゃんはなぜかいつも急いでいます

 

ご飯を食べるのも早く 歯磨きも早く 着替えも早く

 

急ぐ必要もないのに 家の中でもいつもバタバタと動いているのです

 

そんなふうなのでよくケガもします

 

今日も家を出て 玄関のドアをバタんっ!と閉めると

 

「急がなきゃっ」と くまこちゃんは走りだします

 

 

 

ちょうど隣に住むくますけおじさんが 庭のお花に水やりをしているところでした

 

「あれ?おーい くまこちゃーん 靴下がおかしいよー よく見てー」

 

「そんなに焦らないでー」

 

左右 色の違う靴下をはいたくまこちゃんが走っています

 

 

「おじさーん 行ってきまーす!」

 

 

おじさんの声はいつもくまこちゃんには届きません

 

くまこちゃんはどうしてそんなに急ぐのか

 

昨日もあわてて飛び出し 玄関の前で転び

 

その前の日には 大事なお財布を落として走っていきました

 

いつも焦っていて 前しか見ずに突っ走っていってしまうくまこちゃん

 

失敗もよくします

 

おじさんの言葉も耳に入らないので

 

何度も何度も同じ失敗をしてしまうのです

 

そんなくまこちゃんを くますけおじさんは何年もずっと心配そうに見守るのでした

 

 

 

 

 

くますけおじさんはいつもゆったりとしています

 

自然の景色を眺め 庭のお花を大事に育て

 

お花や鳥たちとも会話を楽しみながらとても幸せに暮らしていました

 

でもくますけおじさんは長い間ずっと重い病気を抱えていたのです

 

 

 

その病気は治ることなく 次の年の夏

 

くますけおじさんは死んでしまいました

 

 

 

くまこちゃんはとても悲しみました

 

 

それでも一ヶ月も経つとまたいつもの調子です

 

 

それからさらに一ヶ月が過ぎた お天気のいいある日のことです

 

くまこちゃんはお友達との待ち合わせ場所に 今日も急いで走っっています

 

「急がなきゃ」 「急がなきゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し前まで

 

私は夫の転勤先の東北地方に住んでいました

 

その頃

 

時々飛行機で実家に帰る機会がありました

 

 

 

離陸後数分

 

空の上から見た街はほとんど山でぎっしりでした

 

黒く深い緑色の山々は

 

まるでジオラマのようでした

 

その黒緑色の中に

 

細い高速道路やトンネルが見え

 

山のふもとの方を見ると

 

小さな集落がぽつり ぽつり と

 

 

その光景は

 

私たちがこの山の中に住まわせてもらっている

 

そんなように見えました

 

 

 

現在は関東の方に住んでいるのですが

 

まるで逆です

 

 

私たちがここに主のように住んでいて

 

周りに自然がぽつり ぽつり と

 

 

 

 

 

 

自然の木や山 川そして植物たちは

 

私たちが気づいていなくても

 

いつもそこに行けば

 

癒し 寄り添ってくれています

 

 

 

 

雄大な山々は

 

『いつもここにいるよ』

 

と話しかけ

 

道に咲く花たちは

 

風が吹くと左右に揺れ

 

『お~い(*´▽`*)』

 

と笑って手をふってくれているような

 

 

自然も私たちと同じように生きています

 

 

 

 

家に迎えた花たちも

 

私たち人間と同じように

 

気持ちを通わせることができます

 

 

夏の暑い日にのどがカラカラで

 

冷たいお水をごくんっと飲むととっても気持ちがいいように

 

お花たちもカラカラの土に水をたっぷりと注いであげると

 

気持ちよさそうに感じます

 

その感じたままが

 

お花たちからの声なのです

 

 

 

 

 

 

自然は私たちの仲間です

 

 

人間が主でもありません