笠智衆といえば、どのようなイメージを持たれるだろうか。
寡黙なお父さん、娘思いのやさしいお父さん、子供思いの優しい先生等々・・・
「酔っ払い天国」では意外にも酔うと人が変わるアル中親父を演じたが、とりあえず「父親」ではあった。
この作品の笠智衆は違う。
まず若く、独身であり、会社勤めをしている一見真面目なサラリーマンではある。
いつもの訛りも健在で、それが朴訥とした印象を与え、好感度もばっちりである。
同じ会社の三宅邦子も笠智衆が気になっている。
「僕は君との結婚を考えている」
まったくあか抜けない、真面目一筋のような笠智衆(意外にカッコよい)に言われては、三宅邦子でなくとも
気持ちが動いてしまうだろう。さらに、同じ会社のこれも真面目そうな佐野周二のことを「あいつには気を付けた方がいい、病気の奥さんほったらかして浮気をしている」などと言って、忠告もしてくる。
しかし!
気を付けた方がいいのは笠智衆のほうだった!!
愛人と組んで、邪魔な三宅邦子を追っ払おうとしていたのである。
三宅邦子とちょっともめた時に急に愛人が部屋にやって来る。愛人が何もかもぶちまけると「この女は頭がおかしい、こんな奴信じるのか!僕を信じてくれ」みたいなことを三宅邦子に言うのだが、別の日にこれもまた急に佐野周二が笠智衆の部屋に来ると、愛人と二人で炬燵で鍋をつついているのである。
嘘つきで女にだらしがないだけでなく、恐ろしい計画を立てて実行しようとしている悪魔のような男、笠智衆。
意外であった。
意外と言えば、佐野周二の結末も思いもつかない急なものだった。
1時間と短い作品で、テンポも良い。
プレイボーイ笠智衆を見てみたい方は是非。