遠ざかる景色 | 右岸だより

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 歳を取り、ヒマになりなり、昔やりたかったことを手掛けようと思っていますが、思うようにできません。そんな中で出来ることを探したり、出来るように工夫したりしてもがいている毎日を綴ってみたいと思っています。

遠ざかる景色 野見山暁治 筑摩書房

 洋画家の雑文集。前半はパリのこと。後半は戦没画家の話。違ったものが合体していて、戸惑う。

 後半の話は重い。彼は学徒動員世代で、生き残った。戦後、亡くなった同期の遺作を見る旅をする。同期と言っても生前交友があった者は少ない。もちろん遺族とは何のつながりもない。遺作も共感できるものはほとんどない。それでも旅を続ける。絵描き志望を家族に理解されているケースはむしろまれだ。そんな旅をひたすら続ける。生き残った人間の宿命なのかもしれない。

 その後の事情は書かれていないがこれが「無言館」設立につながった。改めて訪ねなければと思う。