望郷と決別を | 右岸だより

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 歳を取り、ヒマになりなり、昔やりたかったことを手掛けようと思っていますが、思うようにできません。そんな中で出来ることを探したり、出来るように工夫したりしてもがいている毎日を綴ってみたいと思っています。

望郷と決別を 佐藤正明 文芸春秋

 私と同世代でものつくりにこだわった人が主人公。しかし私とは真逆の世界で生きてこられた。固有名詞が頻発するので実話だと思う。

 まず映写機の修理工から身を起こす。修理技術を身に付けるとシベリア鉄道で旅に出る。デンマークでしばらく日本製品の修理をやって信用を得る。

 その後、いろいろないきさつがあり今度は香港にわたり、製造業を始める。ちょうど空洞化が始まる時期で、製造業の中国シフトが始まったころだ。ここでがんばり、多くの製品の中国生産を成功させる。さらには支援システムを作り、中国生産を容易にした。この話は聞いたような気がする。とにかくすごいガンバリだ。これが本当の国際化なのだと思う。

 私は国内にいて空洞化をなんとか食い止めようとしていた。彼らと戦っていたことになる。彼らのバイタリティにはほとんど無力だった。時代の流れに逆らうことの空しさを感じた。