銀行にも貸手責任を問う。(13日、枝野長官)
電気料金に転嫁させない。(13日、枝野長官)
発送電分離も検討する。(16日、枝野長官)
国の積立金の転用も検討する。(18日、海江田大臣)
電力の地域独占も見直す。(18日、菅総理)
最近の総理および関係閣僚の発言だ。
いずれも、13日に東電の賠償スキームが、政府で決定された後の発言だ。
しかし、こうした一連の発言で表明される要望や希望は、決定された賠償スキームの下では、実現不可能か、実現が極めて困難だと思われる。
まず、上場を維持した(維持させる)企業について、銀行が債権放棄を行うことはないし、行うべきではない。
また、賠償に伴う負担のほぼ全てを電気料金に転嫁できることが、このスキームを成り立たせる唯一の担保にもかかわらず、その値上げを封印してしまえば、スキームの根幹が揺らぐ。
さらに、東電の上場維持が賠償支払いの前提になっているため、現状の固定化を助長し、発送電分離や地域独占の解消は困難。
最後に、国の支援は、交付国債と政府保証だけで、いわゆる「真水」の支援が全くないスキームであり、積立金についても活用する前提になっていない。
もし、総理や閣僚が、発言されたようなことを実現したいのならば、13日に決定したようなスキームにはならないはずである。
やりたいことと、決めたことがずれているように思える。
逆に、
銀行の貸し出し債権を全額保護し、
賠償負担は、事実上、電気料金への転嫁でファイナンスし、
国の予算や積立金には手をつけず、
発送電分離や地域独占の見直しは行わない
という方針を実現するためには、今回のスキームは極めて良くできている。
とにかく、裁量的な処理スキームであるがゆえに、様々な裁量が入り込む余地がある。政治がそういった裁量性に振り回され、都合のいいところだけをつまみ食いしていると、全体としての整合性が取れなくなる。
少なくとも、現在のスキームで何ができて何ができないのかを改めて整理すべきだ。
そして、総理や閣僚の発言も、決定したスキームに整合的なものとすべきである。
それが難しいのなら、スキームそのものを見直すべきである。