■なぜプーチンは一気に攻めないのか?ウクライナを「蛇の生殺し」状態に置く“恐ろしい”露の狙い | タマちゃんの暇つぶし

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MAG2 NEWS:なぜプーチンは一気に攻めないのか?ウクライナを「蛇の生殺し」状態に置く“恐ろしい”露の狙い2024.07.01より転載します。

貼り付け開始、

https://www.mag2.com/p/news/602533
 
Kyiv,,Ukraine,-,Mar.,03,,2022:,War,Of,Russia,Against
 

ウクライナや中東をはじめ、世界各地で多発する紛争。そのほぼすべてが無数の一般市民の犠牲を出しながら、終わりの見えない状況が続いているのが現実です。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、かような紛争が終結することがない理由を「各国のリーダーたちの思惑」に注目し解説。さらに紛争調停に関わってきたことで見えた「現実」を誌面に綴っています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:Opportunities Missed:広がる戦争の渦と悲劇の連鎖

プーチン、セレンスキー、習近平。リーダーたちの語られることのない真の思惑

2022年2月24日にロシアがウクライナ全土に侵攻した後、戦時リーダーの座に就き、その後、欧米諸国とその仲間たちを巻き込んでロシアとの対峙を選びました。

「主権国家としてのウクライナとウクライナ人を守るために戦う」というのは美しく、人の感動さえ呼ぶ姿勢ですが、その姿勢はどれだけの犠牲、特に生命という人的犠牲をウクライナの国民に強いたのかという観点からの分析をしてみると、少し違った絵が見えてきます。

実際に物理的にウクライナにミサイルを撃ち込み、地上戦でウクライナ人を殺害しているのはロシア軍ですが、少しアングルを変えて眺めると「主権国家としてのウクライナとウクライナ国民を守る」ことが真の目的であれば、ロシアのプーチン大統領が求めるのはゼレンスキー大統領の退陣と親ロシアのウクライナ政権作りだったわけですから、侵攻初期に辞任して、ロシアにそれ以上攻める口実を与えないようにしてしまうという手もあったはずです。

しかし、私たちが見ている通り、彼は戦時リーダーとして対ロ徹底抗戦を行い、欧米諸国とその仲間たちを巻き込んで終わらない戦争を、欧米諸国とその仲間たちからの支援頼みで継続し、そして5月に大統領としての正式な任期が終わった後も、戦時だからという理由でその座に留まり、対ロ抗戦を続けています。

アメリカからの大規模な軍事支援が届き始めて前線にどんどん投入していることと、アメリカ政府からロシア領内への反撃を承認されたこともあり、ロシアの進軍を食い止めているという効果は見えていますが、NATOの戦略担当幹部によると「ウクライナがロシアに対して戦い続けるには、アメリカからの軍事支援物資が予定通りに8月までに届いても、新たに高度に訓練された数十万人単位の動員が必要となるし、NATO各国からの継続的な軍事支援が必要となる」らしく、その計画の無茶さが分かるかと思います。

特に先の欧州議会選挙での極右勢力の大躍進を受け、フランスではマクロン大統領が打ち出した積極的なウクライナ支援を見直すべきという意見が高まっていますし、ロシアをあまり刺激したくないドイツのショルツ首相は、国民の声を受けてドイツが誇るタウルスミサイルの供与を認めないことを明言していることに鑑みると、欧州各国は“継続的な”支援を続けることは困難ではないかと理解できます。

「ウクライナ国内での内部崩壊誘導」を狙うプーチン

ではロシア側はどうでしょうか?

戦力と兵力という点ではウクライナを今でも圧倒し、北朝鮮との“同盟”やイランからの支援などをベースに軍事的な補給態勢は侵攻前のレベルを上回るとされている中、戦争が長引くことについては余裕があると思われます。

ただこのところ侵攻のペースは緩んでおり、アメリカからの支援の影響が予測されているものの、プーチン大統領とその側近たちが仕掛ける意図的な遅延作戦、言い換えると、戦争を長引かせる・停滞させるための作戦とも理解できます。

これまでお話ししている通り、時間をかけてウクライナ国内でゼレンスキー大統領を引き摺り下ろす圧力がかかることを期待するという狙いもありますが、5期目を迎え、この世の春を謳歌し、強固な基盤を築いていると思われるにもかかわらず、国内の反プーチン・反体制派によるテロ事件(ダゲスタンでのシナゴーグとロシア正教会へのテロ攻撃や、ISが犯行声明を出したモスクワ郊外の劇場での銃乱射事件など)の対応に苦慮していることで、まずは国内治安を落ち着かせることに着手するため、対ウクライナ戦争の侵攻スピードを抑えて、時間を稼いでいるのではないかという見方もできます。

これまでのところ、プーチン大統領が行ってきたウクライナへの責任転嫁は不発に思われますが、かといって強権的にテロ勢力を抑え込める強いリーダーは今のところプーチン氏しか見当たらないこともあり、国内外での緊張が高まるにつれ、プーチン大統領の権力基盤はより強固なものになるという魂胆です。

ロシア国内のみならず、スタン系の国々でもNATOの中でも、ロシアは一気に攻勢をかけてウクライナを軍事的に倒してしまうことは可能だと思われるが、あえてそれを行わず、ウクライナを蛇の生殺し状態に置き、欧米諸国とその仲間たちに支援疲れを意識させて、ウクライナ国内での内部崩壊を誘導するのが真の作戦だと見られています。

国内の治安維持と強化には、あのワグネルを再編し、国家親衛隊に組み込んでおくことで、より士気の高い統制された軍隊として機能させることで対応し、国家親衛隊のエリートたちを対ウクライナ作戦に投入することで、軍事的な強度を高めようとしているようです。

ロシアにとっては、このままずるずると戦争を長引かせることもできるし、外圧を使って停戦協議に導くこともできますし、さらには最終手段として一気に軍事的なとどめを刺しにかかることもできますが、皆さんお気づきの通り、その出口にはどのシナリオを選んでも、ゼレンスキー大統領の居場所はありません。

一切の飛び火がないように細心の注意を払う中国

戦争の長期化で利益を得るのは、ロシアのプーチン大統領やイスラエルのネタニエフ首相だけではありません。

中国はロシアやイスラエルに対して“早期の戦争終結と人道支援”を強く求めてはいますが、戦争が同時進行的に起きて続く限り、欧米諸国とその仲間たちによる対中軍事作戦は起こりにくく、その間に国力を回復させ、強化し、軍事的な備えもできるという狙いを持っているようです。

ロシアに対する軍事支援は(最新兵器という意味では)これまで行っていませんし、ロシアと北朝鮮の接近に対しても、実際にはあまりよく思っていないにも関わらず、あえて距離を置き、一切の飛び火がないように細心の注意を払っているようです。

ロシアが北朝鮮に核兵器技術を与え、ICBMの精度が上がることには難色を示していますが、両国に警告しつつ、ロシアと北朝鮮を巻き込み、アジア太平洋地域における中国にとっての安定を確保しつつ、世界的にはイランやシリア、そしてアラブ諸国、アフリカ諸国などを加えて緩やかで広範な勢力圏を築きにかかっているようです。

戦争の継続が生み出す自国や地域が潤うシステム

紛争調停に関わってみてよく分かることは、以前の紛争多発時とは違い、今、同時進行的に起こっている紛争については、表面的には一刻も早い停戦を謳っているものの、当事者もそれぞれの後ろ盾の国々も、戦争が継続する・長引くことで自国・地域が潤うシステムが作れることから本気で戦争を止める気がないのではないかという“現実”です。

その直接的な悪影響と被害を受けるのがガザの子供たちであり、ウクライナ東南部の一般市民であり(ウクライナ西部の人たちは、時折、ロシアのミサイルが飛んでくるものの、実際には避難の必要はない)、行き過ぎていても機能していない経済制裁によってグローバル物流が止まり、インフレに苦しむ大多数の消費者です。

そして大きな戦争の影で忘れられた地域紛争の被害者たちが置かれる状況もかなり深刻ですが、全く顧みられてはいません。

例えばスーダンの内戦では、UNの発表によると、約2,500万人が飢餓に瀕しており、人口の20%に値する約900万人が国や町を追われ、隣国エチオピアに非難していますが、そのエチオピアでも、残り火のように燻り続けるティグレイ紛争の煽りを受けて、迫害を受けているようです。しかし、加担することで得られる見返りが少ないと踏んでいるのか、いわゆる“国際社会”はスーダンの悲劇に対応しようとしません。

私が紛争調停官として仕事を始めたころ、ボスのセルジオ・デメロ氏や、国連難民高等弁務官であった緒方貞子氏から「戦争は人類が生存している限り無くなることはない。私たちには我欲があるし、その実現のためには手段を選ばないという性が備わっている。紛争調停官としてあなたが出来ることは、戦争を無くすことではなく、戦争が起きないように予防するか、戦争が起きた時に、一般市民の犠牲を可能な限り最小限に抑えるようにすることだ」というアドバイスをもらいました。

それからそれを胸にいろいろな紛争の予防や調停に携わってきましたが、銃は持たずとも、紛争の最前線に立つことが多い身として、アドバイスの内容が身に・心に沁みますし、私たちが持つ欲と対峙することの難しさを痛感する毎日です。

以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。

(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2024年6月28号より一部抜粋。続きをお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。


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