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ついに1ドル160円台に突入した円安。この円安がどこで止まるかは誰にもわからず、インフレと自国通貨の価値下落に苦しむ国民からは怨嗟の声が聞こえてくる。だが、なぜ彼らは日本円という“ゴミ通貨”を握りしめながら文句を垂れているのだろうか?いまだに心のどこかでこの国の政治家たちの能力を信じているのだとしたら、それはあまりに罪深い勘違いだ。メルマガ『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』の著者で、資産運用に詳しい作家の鈴木傾城氏が解説する。
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
私が資産を円から米ドルに転換する明快な理由
円が160円を窺う展開となっている。あまり経済のことをわかっていない無責任な経済評論家なんかは「円安上等」とか言っているのだが、円安のせいで2024年の倒産件数は1万件突破も視野に入っているほど深刻になっている。円安は他にも日本社会の根幹を破壊する。これについてはマネーボイスでも触れている。
【関連】「円弱」で搾取される日本人。円安になればなるほど引き起こされる地獄絵図を私たちはまだ知らない=鈴木傾城 | マネーボイス
この円安がいつ解消されるのかは誰にもわからない。日銀の植田総裁は「場合によって利上げは十分ありえる」と述べているのだが、実際に利上げされたら日米の金利差が縮まるので円高に向かうこともあるだろう。
そして、ここにきてアメリカ経済の足元も弱くなってきているので、FRB(連邦準備銀行)が年内のどこかで利下げする可能性も高まってきた。利下げが行われると、やはり日米の金利差が縮まるので円高に向かうこともあるはずだ。
他にも複雑な要因が絡み合って為替レートは揺れ動くので、円安が続いても、もっと円安になるケースもある。そして、これから円高になったとしても、それは不思議なことでも何でもない。
しかし日本経済は、30年も経済を成長させることができない無能な政治家が今も、そしてこれからも、ずっと居座り続けるのはほぼ確定で、少子高齢化も解決できそうにないので、円は「円弱」となって、最終的には今よりもずっと円安になる可能性が高い。
通貨というのはその国の経済的信用を示すものでもあるので、国が経済的に弱体化したり、衰退したり、途上国化したりすると、通貨も安くなるのは子供でもわかる。
たとえば、アフリカのソマリアは世界最悪の失敗国家である。自分の資産をソマリアの通貨ソマリアシリングに全部変えたいと思う人はいないだろう。ソマリアの通貨を持っていても、いつ紙くずになるのかわからない。信用がない。だから誰も欲しがらない。その結果、ソマリアの通貨は「通貨安」である。
日本がソマリアになると言っているのではなく、国家の信用が「今よりも低下したら必然的に通貨の価値も低下する」という当たり前のことを説明している。日本が今よりも経済成長できないのであれば、必然的に他国に負けて通貨安(円安)になってしまってもおかしくない。
そうであれば、私たちがすべきことは「円を早く見捨てておく」であり、それが経済行為としては正解ということになる。何も無能な政治家と共倒れになる必要はない。
「お前は売国奴か?」と言われることもある
円を売ってドルや他の有望な国の通貨に変えておくというのは、無能な政治家のとばっちりを受けないための行動である。それは、早い話が資産逃避(キャピタルフライト)でもある。
私は資産をドルに転換したという行為で「お前は売国奴か?」と言われることもあるのだが、日本を愛していても無能な政治家を愛しているわけではない。無能政治家が無能すぎて日本を衰弱させるのであれば、こちらも対処しなければならないのは当然のことでもある。
そもそも、円をドルに変える経済行為くらいで売国奴とかいうのであれば、その人はアメリカが作ったインターネットも、アメリカが作ったスマートフォンも、アメリカが作ったコンピュータも使わないで生活しなければならない。
また、アメリカに自社製品を売っている日本企業も売国奴になるのだから、ボイコットしなければならない。それができないというのであれば、円をドルに変えて米国株を保有する私を売国奴という資格はない。
私たちは今、江戸時代に生きているわけではないのだから、資産をドルに転換して保有するくらいで躊躇するなど、それこそ愚かだ。
「無能な政治家が日本を立ち直らせるのはもはや無理だろう」と、あなたも思うのであれば、さっさと円をドルに変えてドル資産として持っておけばいい。
日本のトップが無能だから、わざわざ面倒なことをして、違う国の通貨を保有するという労力が発生しているわけで、気持ち的には日本政府に迷惑料をもらいたいくらいである。
私がほぼ全資産を円からドルに転換したのは2012年だった。あのときは70円台で今は150円台だ。これはドルの価値が2倍に上がったというよりも、円の価値が半分に下がったと理解している。
政治をやっている議員が無能だから「円安」というよりも「円弱」になってしまったともいえる。
景気がたいして良くないのに利上げするということ
通常、利上げする局面というのは、経済が過熱したときである。経済が度を超えて好調になると、企業の設備投資や個人の消費が活発化し、資金需要が増加する。これにより、インフレ圧力が高まり、物価上昇のリスクが生じ、賃金の上がりはスローペースなので必然的に人々の生活が苦しくなる。
つまり、利上げは経済を冷やすために行う。
利上げすることにより借入コストが上昇し、企業や個人の資金調達が抑制される。結果として、過剰な需要が抑えられる。
だが今、日本は経済が好調なのだろうか?
岸田首相はしきりに「賃金が上がった」と言って、景気が良くなっているような雰囲気を出そうとしているが、物価が上がりまくっているので賃金が上がるのは当然でもある。この上がった賃金は名目賃金という。
しかし、物価の上昇と賃金の上昇を比べると物価のほうが高いので実質的には賃金が下がっている。つまり実質賃金のほうはマイナスだ。あきれたことに、この実質賃金は2年以上連続マイナスである。
実質賃金が下がっているのであれば、消費が増えるはずもなく、円安によるコストの増大を価格転嫁することができなくて2024年の倒産件数は1万件を突破するかもしれない事態となっている。これを見て経済が好調だと思う人は誰もいないだろう。
すると、日銀が利上げするということは「景気がたいして良くないのに利上げする」という話になるので、日本がもっと悲惨な経済状況になってもおかしくない。
それもわかっていて日銀も利上げをずっとためらっている。このまま放置していても円安で企業や人々がコスト増で苦しみ、利上げしたら景気を壊す可能性があるのだから、どっちにしろ日銀の進むべき道は茨《いばら》の道である。
前任の黒田東彦総裁が辞めると言ったとき、何人かの人が次の日銀総裁になるのを辞退して逃げたということだが、日本経済が壊れたときに日銀の総裁でいたら、責任を取らされるのはわかっているので誰もやりたがらなかった。
よく植田総裁が引き受けたと私は個人的に思っている。
無能な政治家どもに期待したところで報われないので
利上げしたら一時的には円高になるのだろうが、その利上げで日本経済が復活するわけでも何でもないので、いずれは日本の国力低下が通貨に反映されるときがくる。つまり、もっと円安になるときがくる。
もちろん、日本に素晴らしい政治家が生まれて素晴らしい政策を行って日本が奇跡的に復活するという宝くじ一等賞に当たったみたいなことも起こり得る可能性もあるのかもしれない。
しかし、宝くじに当たるのを願って人生設計するわけにはいかない。私たちがやるべきことは、もっと合理的かつ効率的に自らを助けることである。だから、私はもう10年以上前からずっと――(メルマガ2024年6月23日号より抜粋)
※本記事は有料メルマガ『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』2024年6月23日号の抜粋です。この続きは、初月無料のメルマガお試し購読の上お楽しみ下さい。6月バックナンバーも含めすべて読めます
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